香典代わりのエール


大学の時の同級生、Aちゃんの旦那様が亡くなった
……と、最近知った。えっ


今年の正月、年賀状をいつも通りやりとりしたのだけど、
その一月の末に、亡くなられたらしい。
全然気付かなかった。
旦那様も同じ大学の同級生。(年齢は2つほど上)。
若い死である。しょぼん


「訃報欄」で彼の名前を見つけた友達が、あちこち連絡して
情報を確認してくれた。
同姓同名の訃報であることを祈ったが、
やはりAちゃんの旦那様の訃報だった。



安曇野で挙げられた2人の結婚式以来、Aちゃんには会っていない。
安曇野から東京に出てくることも難しければ、
こちらが安曇野まで出かける機会もなかった。



安曇野の山々に守られた美しい風景がそのまま広がっているような笑顔のAちゃん。
一緒に午後の授業をさぼって深大寺植物園を散策し、
お腹いっぱいだったのに、「やはり蕎麦を食べねば!」と、
ひとりだけさらに蕎麦を食べ、
「ううむ~っ、駄目だっ。納得できないっ!グー」と、
もう1杯食べ直そうとした、蕎麦にうるさいAちゃん。





大学から徒歩5分。
路地の奥の一軒家の離れに下宿していたAちゃんに、
ノートを届けに行ったあの日は
あいにく雪の日で。

区画整理された路地は真白に染まってどこも同じ路地に見え、
何度か訪れたことがあるその路地を、
方向音痴の私はどうしても見つけられず、
1時間、雪の中をさまよった。

やっと辿り着いて「Aちゃ~んっ!」と感無量で涙目になっていた私を、
「ごめんね、ごめんね~」と介抱してくれて、(Aちゃんが悪いのじゃないのに)
近所の飲み屋に連れて行ってくれて、
ドライマティーニを1杯おごってくれたAちゃん。
(Aちゃんは普段そんな店に入らないのに。)





我々飲兵衛不良学生が酔っ払って帰れなくなると
よく
下宿に泊めてくれた。

考えたら、Aちゃんはあんまり飲まないのに、
飲兵衛の我々は随分Aちゃんにお世話になったなぁ。






なんと言葉をかけてよいものやら……。
心を込めて言葉を選ぶものの、
結局、ありきたりの言葉となったカードを添えて、
有志で毛糸の上着を贈った。
Aちゃんのようにほっこりあったかい毛糸の
Aちゃんのようにほんわり優しいポンチョコート。

香典よりも、気を使わせず、
これからの季節、北風に負けないように……。




子供が3人もいるから、凹んでいられないわっ
と、眉を寄せながら笑っていそうな気がするけれど。


Aちゃん、
いまさらに駆けつけるのも妙だし、
事細かに連絡しあったりもしないけれど、
S.O.S.が発せられたら、いつだって飛んでいくよ。
安曇野でも、どこでも。
いつだって力になるよ。




「未亡人」……“いまだ亡くならない人”ではなくて、
これからは、旦那様の分まで生きていく人なのだからね。