part172追記 ノートルダム寺院でつれづれに思う








追記①:「塔 tour」と「タワー tour





「塔」というと、レンガや石でできた円柱形の細長いものをイメージするが、「タワー」というと、鉄筋でできた、近代的で即物的四角錐をイメージするのはなぜかしら? こんなイメージの違いをもたらすのは、「タワー」という外来語をそのまま取り入れた表現を持つ日本語のなせる業?






追記②: 飲み物なしにサンドイッチをほおばるフランス人を見て思う……


食事の決まりごと





確かにフランス人はよく飲み物なしでパンを食べている。バゲットパンを齧りながら、そこら辺を闊歩している若者が多い。パン好きの私にとっても、ちょっと驚きではある。喉が渇かないのだろうか? 彼らは家ではカフェオレを丼でガバガバ飲んでいるんじゃないのか? 





そういえば、フランス料理のフルコースなどでは、スープはスープだけ、さぁ、飲め! と出されるね。メインディッシュも何も出ていない頃から、パンだけは早々に供されるね。パンはパンだけ食べても一切抵抗はないらしい。正式(?)な和食料理のときは、フランスのコースのように順番に皿が出てくるけれど、最後にご飯とお椀と香の物が3点セットで出てくる。やはり、ご飯と汁物を一緒に食べろというスタイルだ。





日本の食の作法(?)にみられる、「①味噌汁(汁のみ)→②ご飯→③おかず→④味噌汁(汁と具)→⑤ご飯→⑥おかず……(以下④~⑥が繰り返される)」と循環小数のごとく繰り返される食のローテーションは、パン食文化圏にはないのだろうか。(こんな決まりを仕付けられたのは、もしかしたら、私だけ? 





いや。小学校の給食だって、「①おかず→②パン→③牛乳」という循環小数運動があったはずだ。いち・に・さん・いち・に・さん……とリズムを取るがごとく、それぞれに口をつけて、それそれが丁度一緒に終わるように量を計算しながら食べさせられたではないか。少なくとも私の小学校ではそう教えていた! 煩わしいことこの上なかったものだ。) 


 


西欧文化の日常的食生活を知らないので、なんとも比較のしようもないのだが、少なくとも、私が仕付けられたようなローテーションの決まりごとはなかろうと思われる。だって、どの順番でどう食べようが、どーでもいいじゃん? 日本はどうしてこんなローテーションにこだわるのだろう?





もしかしたら、日本の“食のローテーション”仕付けは、食事中に常に水分を補給しつつ食べるという食べ方を奨励していると言えるのではないだろうか?





最初の一口は、味噌汁の汁だけ啜る。具はまだ食べてはいけない。……これも、まず口を湿らせてからご飯に突入するという日本独特の決まりではないのだろうか?





そう言えば、日本人は酒を飲むとき、「まずはビールで喉を湿らせて」などという、“「とりあえずビール」派”が多い。(私は“「とっとと酒」派”だが。) 喉を湿らせ、食事を潤滑に進めるものとして、日本人の食事に汁物(飲み物)は不可欠なものなのではないか?





日本では、どんな食堂に入っても水が出てくる。常に食事の際は水が添えられているので、水分なしにものを食べることに一種不安を感じるのかもしれない。





日本人でも、軍人だった人で、軍の食事の決まりが未だに抜けず、食事の時は水分を取らないという話を聞いたことがある。水分を取りながら食事をすると咀嚼が減り、消化が悪くなるとかいう理由だったか。しかし、それは非常時を想定した食べ方だ。





水にしろ、味噌汁にしろ、酒にしろ、お茶にしろ、我々は常に飲み物がないと食事がスムーズに運ばないように感じる。飲み水が豊富だった日本人ならではの“食事は水分と一緒に摂らなくちゃ!恐怖症”なのだろうか。――





追記③:知らなかったぁ!


 


 「あらまほしきは先達」とかなんとか、兼好法師も言っていたっけ。予め知識として知っていたら……と思うことは多々あるが、このノートルダム寺院にしてもそうだった。





本堂ではお布施のローソクばかりに見入っていたが、そこでは、なんと、「ジャンヌ・ダルクの審判」や「ナポレオン・ボナパルトの戴冠式」が行われたというじゃないか! 知らなかったぁ! そうと知っていれば、思いもひとしおだっただろうに……。





それにうきうきどきどきうっとりと見入った異形のものたち。あの彫刻は「キマイラ」というものらしい。いわゆる「キメラchimera」からきた言葉かな? 





フランス語辞書を引いてみた。「chimère(しめーる)」―「妄想。夢想。《ギリシャ神話》キマイラ。怪物。化物。《生物》キメラ。」





妄想の産物の化け物が頬杖ついて夢想するポーズをとっているから、あの彫刻たちがなんとも奇妙で愛くるしかったのだろうか。


          つづく                                  


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