痛経:いわゆる生理痛。この研究では機能性の月経困難症を扱ってる。原因は頸管狭小やプロスタグランジンなどの化学物質による過収縮である。
プロタグランジン:ホルモン様物質。色々な種類があるが、ここではプロスタグランジンE2(PGE2)とプロスタグランジンF2α(PGF2α)を検査している。
(PGE2)は子宮頸管熟化作用、子宮収縮作用。
(PGF2α)は子宮平滑筋や消化管の縦走筋、輪状筋などの収縮作用。
<分類>
①シップ組:33例,年齢最小21歳、最大40歳,病歴最短6ヶ月、最長18年,症状点数最低6,5点、最大16,5点
②投薬組:31例,年齢最小19歳、最大38歳,病歴最短2ヶ月、最長20年,症状点数最低6,5点、最大16,5点
<治療方法>
①シップ組:
作り方:活血化瘀、行気化湿の中薬を主原料にする。(制南星、三棱、ガジュツ、氷片=3:3:3:1の割合で配合)
以上の中薬を粉末状にしてグリセリンを加えクリーム状にする。
使用方法:任脈の中極、関元、気海穴へ貼り付ける。大きさ1.5×1.5、厚さ約2mm。
月経の1週間前~月経が始まって3日後まで張り続ける。毎日1回、毎回6~8時間。
3回の月経期間行う。治療停止後、3ヶ月後に治療効果を判定する。
②投薬組:
田七痛経カプセルを使用。
患者の月経が始まるの1週間前から服用。
毎日3回、毎回4粒。
3回の月経期間行う。治療停止後、3ヶ月後に治療効果を判定する。
<判定項目>
①月経期間及びその前後の下腹部の疼痛を点数化。中国人民衛生部発行の新薬臨床研究指導原則に沿う。
②痛経を重度、中度、軽度に分類し判定。中国人民衛生部発行の新薬臨床研究指導原則に沿う。
③治療効果を治癒、顕著な効果、有効、無効に分類し判定。中国人民衛生部発行の新薬臨床研究指導原則に沿う。
④血中のプロスタグランジンの含有量を測定。
<結果>
①点数化
組別 対象数 治療前 治療後 治療前後の差異
シップ組 31 13,12±2,13 5,13±3,59 8,00±3,74
投薬組 30 12,68±2,56 8,08±4,01 4,60±2,89
③治療効果の判定
組別 対象数 治癒 顕著な効果 有効、 無効 総有効率
シップ組 31 6 15 8 2 93,5%
投薬組 30 2 10 10 8 73,3%
④治療前後のプロスタグランジンの比較
プロスタグランジンE2
組別 対象数 PGE2(pg/mL)
治療前 治療後 治療前後差
シップ組 31 609,68±211,9 1198±568,00 588,66±568,40
投薬組 30 575,99±196,11 729,66±247,54 153,67±265,85
プロスタグランジン2α
組別 対象数 PGF2α(pg/mL)
治療前 治療後 治療前後差
シップ組 31 161,84±58,01 104,40±30,12 -57,44±45,67
投薬組 30 156,23±53,72 112,89±39,38 -43,34±48,46
PGF2α/PGE2(痛経の疼痛の点数とPGF2α/PGE2値は相関関係にある)
組別 対象数 PGF2α/PGE2
治療前 治療後 治療前後差
シップ組 31 0,28±0,11 0,16±0,05 -0.18±0.11
投薬組 30 0.27±0.09 0.16±0.05 -0.11±0.08
<分析>
中極と関元は任脈と肝、脾、腎経の交会穴であり主治穴である。任脈と肝、脾、腎臓はともに月経の産生と病因に深く関わっている。
気海は任脈に属し、全身の理気、調気、補気の要穴である。下焦の気機のすべてを調節できるツボで、痛経の治療には欠かせないツボである。
田七痛経カプセルの成分は蒲黄、五霊脂、田七、延胡索、センキュウ、ウイキョウ、木香、氷片。
行気活血、調経止痛の作用があり、臨床現場では多く用いられている。
筆者は中薬シップ剤は機能性月経困難症のプロスタグランジンの合成を調節し、PGF2αの合成を抑制し、子宮の収縮作用を抑制でき、またPGE2の合成を促進し子宮平滑筋の弛緩できると考える。結果的に機能性月経困難症を軽快できる。