… | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年3月13日(日)VS Home U!「1-2」 1


 地震が発生してからここまで、全くブログを書く事ができませんでした。同じ「日本人」としてショックはあまりにも大きい…。我が愛する母国「日本」が、どうしてこんな状況に陥ってしまうのか…。今日はそれでも何とかブログを書こうと決意しましたが、タイトルさえ思い付かない。どんなタイトルを書いても、どんな文章を書いても不謹慎なような気がして…。

 我々がやってるのは、「たかがサッカー」。いくら一生懸命やってるとは言っても、サッカーの試合結果で命を奪われる事はないし(海外ではまれにありますが)、我々は何不自由ない恵まれた環境の中で、ただ「スポーツ」をやってるに過ぎません。そんな天国のような境遇に居る自分が、極限状態の苦しみの中に居る被害者の方たちに、「されどサッカー!サッカーを通じて元気を!笑顔を!勇気を!」なんて、とてもじゃないけど言えません。もちろん様々な考え方があるでしょうが、今現時点で僕には言えない。確かにサッカーが好きで、サッカーに深く感情移入でき、なおかつ、今、サッカーを楽しめるだけの余裕がある方々に対しては、サッカーを通じて「元気」や「笑顔」や「勇気」を与える事ができるかもしれませんが、最悪な被害に遭われた方々の事を想うと…いかなる言葉も、容易に発する事はできない…。

 しかし…。こんな状況にあっても、試合は行われます。

 先日のリーグ戦、第4節。地震発生から僅か2日後という状況で、試合は行われました。

 
最悪な被害に遭われた方々に対して、自分にできる事など、何も無い…。どれだけの事をやっても、亡くなられた方々の尊い命は返ってこない。せいぜい僕は、今、 こうして何不自由ない恵まれた環境の中でサッカーできる事に、これまで以上の幸せとありがたみを噛み締めながら、全身全霊を込めて戦うしかない。自分の無力さを痛感しながら…。

 なかなか気持ちの整理ができない中、それでもアルビSの全員が特別な想いを胸に、試合に臨みました。結果は「1ー2」敗北。敗因は自分たちの実力不足でしたが、この日の審判のジャッジには大きなショックを受けました。

 
日本でこれだけの大惨事が起こって、アルビSの全員が深い悲しみに暮れる中、それでも「日本人」として特別な想いを胸に必死に戦ってるのに、審判はことごとく露骨に相手びいきのジャッジを下してきたのです。ベンチからの抗議を横目で見ながら、なお完全なるアルビSボールを相手ボールにしてきた…。

 シンガポールでも連日、地震について報道されてます。この試合の前には、黙祷も行われました。今、日本がどういう状況にあるか、我々がどういう気持ちで試合に臨んでいるか…。審判も当然、分かっている…。分かっていて、なぜ
こんな事が平気でできるんだ?どうして、公平なジャッジをしてくれないのか?

 試合の勝ち負けとか、サッカーがどうとかいう次元ではなく、同じ人間としてこういう行為が平気でできてしまう事が信じられなかったし、怒りを通り越して悲しくなりました。人間の心は無いのか…?

 実は3人の審判の内の1人だけは、試合前に地震被害を気遣う挨拶をしてくれ、試合中も彼だけは公平なジャッジをしてくれたのですが、他の2人のジャッジは…「サッカー人」としてではなく、同じ「人間」、そして「日本人」として本当にショックだったし、悲しかった…。この日の事を、僕は一生、忘れる事ができません。他の試合だったら、ここまで怒らない。しかし、この試合は、状況があまりにも違い過ぎる。日本人である我々に対して、地震発生から僅か2日後という状況下でのこの仕打ちは、あまりにも酷過ぎる。シンガポール人だから、やはり他人事なのでしょうか…?この2人のレフリーの態度からは、そういう風にさえ感じられた。だとしたら、それも本当に悲しい…。

 誤解なさらないで欲しいのですが、僕は「ジャッジ」に対して怒っているのではありません。

 シンガポールの審判問題について議論がしたいのではないし、地震の事を考えると、今はそんな話をするような気にはとてもなれません。言いたいのは、サッカーよりも、もっともっと大事な事…。日本でこれだけの悲惨な出来事が起こって、大きなショックを受けている我々(日本人)に対して、2重のショックを与える行為を行った審判。そのような行為がこの状況下で行えた審判の「人間性」が、1人の「人間」として、「日本人」として本当に悲しかった…。

 今夜も試合が行われる…。




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