まつやまひろしの“抜けないトンネル”第31回 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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定期的に最新の“思っていること”や弊社で刊行した書籍に掲載したコラムのアーカイブを掲載していきます。

電撃「マ)王2008年06月号コラムより


▼これまでの「抜けないトンネル」コラムアーカイブ
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-10075270773.html


■第31回“月光はいつもね、
絶対に、本当のことは言わないの。”



中田理生(ナカタリオ)というプロデューサーが
バンダイナムコゲームスにいます。(※2008年当時)
「.hack」シリーズの3代目の担当者です。
元々、「.hack」プロジェクトそのものは
当時の(初代)担当・内山大輔と企画し、
スタートしたプロジェクトなのですが、
まあ、プロジェクトが長いと担当も変わるわけですよ。


「.hack」シリーズは足掛け8年。

担当者が3代目というのが多いか少ないかはともかくとして。
今回は、その中田理生のお話。
当然、無許可で書いてるのできっと本人は今頃、
本誌を手に取りびっくりしていることだろうとは思いますが、
まあいいでしょう。


彼との付き合いは、
2006年のPS2ゲーム「.hack//G.U. Vol.1 再誕」
リリースされて直後なので、およそ2年くらいです。

その前からバンダイナムコゲームス(当時バンダイ)の別部署にいたので
知ってはいたのですが、挨拶をする程度。


担当プロデューサーになってからは濃密な時間を過ごしているので、
現在はすっかりお互いがどういう人間なのかを熟知しあっている状況です。
そんな2年間の中で、私自身が彼に対して抱いている印象は…

“真逆”。


私との相性の話ですね。
私があー言えば、こう返ってきます。
意見が終始、ぶつかり続けるわけです。
そしてお互い話が長くなる。


ぶつかる以上、(理解してもらうために)たくさん
説明しなければならないワケですから当然ですね。
博多と東京で、お互いの携帯電話で話をしながらも…
いつもどちらかの電池が切れて、話が終わる(続く)という始末。


性格が違う。
趣味が違う。
視点が違う。
まあ、育ってきた環境も立場も違う。
全てが違う。
だからぶつかる。


まあ、こう書くと“合わないの?”と思われるかもしれませんが。
それこそ“逆”です。

“それがいい”のです。


もともと彼はプロデューサーであり、売るコトがお仕事。
私はディレクターで、作るコトがお仕事。
立場が違うわけです。

だから、この“ぶつかり”が
非常に重要な意味を持つのです。


隅々までお互い納得いくように意見をぶつけあうので、
事前に大半のトラブルが防げます。
“思い違い”が発生しない・しにくいワケです。


モノ作りの世界においてのトラブルの要因は大半が“人的要因”であり
“思い違い”から生まれるのです。

だからこの世界ではコミュニケーションが
最重要視されるのです。


一番、良くないのは同じ価値観を共有してしまうこと。
同じだと安心してしまうのです。
そして“うっかり”が生まれてしまう。
不幸な事故というやつです。
少なくとも彼と私の間では、“その”心配はない。
だから“いい”のです。


今も、これからも、彼と私はぶつかり続けるのでしょう。
お互いに…きっと
“ここまで言わないとまだわかりませんか?”
と叫びながら(笑)。
うん、最高に相性が“いい”ですね。

いや、“悪い”ですね。

【ひろしの今月の逸品】

少年サンデーで『月光条例』(藤田和日郎)がはじまった。
(※2008年当時)
待ちに待った藤田和日郎の新連載だ。

『からくりサーカス』完結後もモーニングなどで
短期集中連載をされてましたが…
まあ、やっぱ違う。
いや、ちゃんと面白かったんですよ。
『邪眼は月輪に飛ぶ』も『黒博物館スプリンガルド』も。
それでもね~やっぱ、なんか、違うんですよ。

氏は“少年サンデー”なのですよ。
短期集中でもない、青年誌でもない。
少年誌で毎週掲載。これが藤田和日郎の一番の楽しみ方。
私は心から“そう”思います。

合ってるんですよね、“少年少女の為の漫画”という温度が。
バランスが良いのです。
たしかに『からくり』は『うしとら』に比べても
ちょっと長かったし、対象年齢も“うえ目”だったかもしれない。
けどね、その“少年少女に背伸びさせる”ところも良かった。

バランスのいいヒューマニズムが大好きだ。
バランスのいい勧善懲悪っぷりが大好きだ。
“伝えたい!表現したい!”って思っているコトが大好きだ。
何より、氏自身が自分の作品を誰よりも愛しているコトが
誌面から伝わってくる。

たしか、『からくり』の最終話まであと数話という時に
巻末コメントで氏はずっと“『からくり』の最終話までの
自身のドキドキや思い”を書き続けていました。
そもそもサンデーの巻末コメントはテーマ性で
“最近、感動したコトは?”みたいなネタが
編集部から振られるのに。

『からくり』の最後まで自分の作品にかける“思い”を
綴りつづけるなんて…だから大好きだ。
ああ、また、毎週サンデーで氏の連載が読める。
こんなに嬉しいことはない。

おかげでまた、サンデーの“重さ”がちょっと増えました。
そして当然…『月光条例』は面白い。

電撃「マ)王2008年06月号コラムより


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