松山洋による“「Solatorobo それからCODAへ」全記録vol.3”【3】 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

福岡に本社を置くゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 代表取締役 松山洋の公式ブログです。
定期的に最新の“思っていること”や弊社で刊行した書籍に掲載したコラムのアーカイブを掲載していきます。



▼これまでの「ソラトロボ全記録」コラムアーカイブ
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-1-10072010413.html


ようやく完成した企画書を持って、いざ、内山大輔のもとへ。


“今は当然、『.hack//』や『NARUTO-ナルト- ナルティメットヒーロー』に
全力投球してるけどその後のことも考えておかなければならない。
なので次にウチが作りたいと思っている企画を持ってきたので話を聞いて欲しい。”

そう伝えて、プレゼンを開始するやいなや。
内山大輔から一言。


“え?『テイル』って
あの全然
売れなかったやつ?
いらない。”


そう言って、企画書はポイっとされました。





“・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。”


まあ、声も出ませんね。

我々が思っている以上に。

バンダイにとって。内山大輔にとって。


『テイルコンチェルト』は“売れなかったタイトル”としてのイメージが強かったのです。


“いやいや、今回のは前作とは違うんですよ!”

みたいな発言もとりつく島もない状態。


完全にバッサリ。


これは……無理だな。

“今”は。


そう感じた私は泣く泣く博多に戻って、WAKAにあるがままを報告し。


『テイルコンチェルト2』の企画はあえなく凍結となるのでした。





しかし。

我々はあきらめない。

あきらめきれませんでした。


『テイルコンチェルト』の良さも弱点も我々が一番わかっている。


けど、これが商売であり、お仕事である以上。

パブリッシャーであるバンダイから“いらない”と判断された以上、
普通の状態で続編の企画を持ち込んだところでOKは出されない。

もっと戦略が必要だ。

タイミングも大切だ。
残念ながらそれは“今”ではない。


で、あれば。

“その時”を迎えるべく準備を進めよう。

備えよう、“その時”のために。


あきらめるのは簡単です。

けどね、“アイデアコンペ”を社内で実施して多くのスタッフが
“売れそうで、面白そうで、作りたい”と思った企画なのです。

それを、信じたい。

というか、それを疑ってはいけない、とすら思いました。


我々はクリエイター。

“作りたい”だけでは商売になりません。

けど、最初の一歩は“作りたい”からスタートしたい

当然、それだけじゃなく市場性も商品力も必要だ。

それはわかっている。

わかっているけど、結果として“それ”は……受け入れられなかった。

“いらない”って言われました。


少なくともパブリッシャーのプロデューサーである内山大輔は“最初のお客様”

彼の向こう側に何万人もの“お客様”がいる、と思わないといけない。


そんな“最初のお客様”である内山大輔すらを
“おお!これいいね!面白そう!欲しい!”
思わせるパワーが無いようであれば、やはり商品としては力不足。

企画そのものの練り直しも必要だ。

タイミングだって大事。


まず、最初にやれることから。


そうして、我々は会社のホームページにあった
『テイルコンチェルト』のサイトの改修からはじめました


“『テイルコンチェルト』の冒険から数年経って。”

“あれから、ワッフルくんは少しだけ背が伸びました。”


そんなコメントと。
“続編を作りたい”というメッセージを用意して。

ユーザー様の反応と応援を味方につけようと。まずは、そこから。


現在のようにツイッターやフェイスブックもない時代。

なので、専用の掲示板を作って。

そこで応援コメントを募集。


こんな開発会社のホームページの小さなサイトにある掲示板のコメントが
続編の制作決定に直接繋がるかというと、まあ、正直、厳しい。

けど、なんでも今は積み重ねるべきだ。

そう思って、最初はそこからはじめました。




で、その時に開発していた『.hack//』の中に登場する街の人々(PC)に
こっそり『テイルコンチェルト』のキャラクターの名前を付けたり。

作品中の架空のWEBサイトのバナーに
『テイルコンチェルト2』のバナーをこっそり作って入れたり。


ホントに地道な行動。

そういったことをコツコツ続けつつ。

定期的にWAKAと集まっては、『テイルコンチェルト』の
分析と反省そして新作のための作戦を議論し合う日々。

どうしても日常的には『.hack//』や『NARUTO-ナルト- ナルティメットヒーロー』を
手掛けている以上、なかなか時間も取れない。

1カ月に1回しかミーティングできないこともしばしば。

それでも少しずつ積み上げていく。


構わない。


時間はあるんだ。


どれだけ時間がかかっても実現する。


まるで執念にも似た、モノ作りへの感情。


これもクリエイターの性。


不思議とあせりはありませんでした。


あせったところで通らないものは通らない。
もっと考えるんだ。

もっともっと。

いつも足りないのは考える力。


そうしてWAKAと話し合って、議論を積み重ねて。

少しずつ。

おぼろげながら見えてきたこと。


そもそも―――


(松山洋による“「Solatorobo それからCODAへ」全記録vol.3”【4】へ続く)

▼これまでの「ソラトロボ全記録」コラムアーカイブ
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-1-10072010413.html


本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。

LITTLE TAIL BRONX ARCHIVES 「Solatorobo それからCODAへ」完全設定資料集 Vol.3 -Starlet- 通常版
¥5,000
Amazon.co.jp
LITTLE TAIL BRONX ARCHIVES 「Solatorobo それからCODAへ」完全設定資料集 Vol.3 -Starlet- 限定版
¥8,800
Amazon.co.jp


松山洋へのメッセージを募集中!いただいたメッセージの中から、一部ブログ記事中で取り上げ、松山より直接ご返答させていただきます!(※メッセージには全て目を通しますが、ご返答できない場合もございます。)