マントラの向こう側 第三回『100年経ったらまた闘ろうや』 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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▼これまでの「アスラズ ラース」マントラの向こう側
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もう、ちょっと前になりますが『範馬刃牙』が最終回を迎えました。
『グラップラー刃牙』そして『バキ』と続いていわゆる第三部にあたる『範馬刃牙』まで、
およそ21
年間の週刊連載。

それまでに何度か定期的に休載はありつつも基本的には企画を含めて
シリーズ連載として継続して21年間の連載に幕が下されました。

中には『刃牙』を読むために週刊少年チャンピオンを読んでいた方も
いらっしゃったのではないでしょうか。かくいう私もそのひとり。
(最近は『囚人リク』を目当てに読んでいたりもしますが、それはまたの機会に。)

この『刃牙』シリーズの魅力はたくさんあります。

誰も見たことのない格闘的価値観。絶対的な強者に対する憧れ。
その描写。表現方法。直接的だったり間接的な比喩・誇張。
そしてその作品世界にはそれら数々の技法によって表現される
たくさんのキャラクター達が存在します。
本作の魅力はなんといってもこのキャラクターの存在感だと私は思います。

 

〝鍛えることは女々しい。〟


恐らくは全ての登場人物(主人公含む)を全否定しかねない、
圧倒的価値観。生まれながらにして強いことの物語性と魅力。

 

〝握力×体重×スピード=破壊力

 

理屈なんか微塵も関係ない。気にすることすら諦める素敵な方程式。

断言してもいいです。そうです。
男で花山薫を嫌いな人はいません。だれもが憧れるんですねえ。

 

本作には花山薫をはじめとしたたくさんの力の象徴、暴力の象徴が登場します。
愚地独歩・烈海王・オリバ・死刑囚やピクル。
たくさん登場しますが、私の中で最も特別なのがやはり花山薫。
あとは範馬勇次郎。

ただ、勇次郎は主人公である刃牙の絶対的な存在として描かれ続けて、
最後までそれを貫いて終わりますので、ちょっと存在が例外なところがあります。
きっと最後まで負けることはできない。そういう存在ですからね。

ただ、花山薫はそうじゃない。過去に二度負けています。
外伝にあたる『バキ外伝
疵面』の中でも本人の口から
〝過去に二度負けた〟と呟かれています。
この負けたことがあるところもまた魅力。

 

実に人間味がある。

 

やはり、人間・花山薫の魅力にみんな夢中になってしまうのは
そういうところなのではないか
、と私は考えます。
作中の柴千春が全面的に憧れと畏怖を抱いているのと同じように。

 

さて。本巻のタイトルにもあるオーガスというキャラクター。
ASURA'S WRATHという作品世界の中で、
主人公アスラの前に立ちはだかる絶対的な強者であり、かつての師匠。
力の象徴であり暴力の塊の戦闘狂。
最後まで共に成長しあい、競い、削りながら、ぶつかっていくヤシャとは
完全に役割が違います。

 

オーガスというキャラクターは、私の中でのイメージは花山薫であり、
範馬勇次郎であり、松尾象山であり、丹波文七であり、花山薫なのです。
(花山が二回登場するのはご愛嬌。)

細かい事情や状況説明もする必要がないキャラクター。
見た瞬間に〝きっとこういうことなんだろうな。〟で済まされてしまうキャラクター。
そんな真っ直ぐでブレない気持ちのいいキャラクターが欲しかった。

 

ASURA'S WRATH』という作品世界を組み上げていく過程においても、
非常に速い速度でオーガスというキャラ設定は完成しました。
そして最後の最後まで、やっぱりブレることはありませんでした。

なので『
ASURA'S WRATH』という作品を振り返ってみなさんが語る時に、
〝あのキャラのここがいい!〟とか〝あのキャラはあの時こういう気持ちだったんだよ!〟と
様々語られることはあるかと思いますが。
〝好きなキャラは?〟と聞かれた時は誰もがやはり〝オーガス!〟と答えて欲しい、
と思っています。男が男に……否、漢が漢に惚れて、憧れるキャラクターです。

 

さて、せっかくのトリビュートマガジンなので。
今まで語ってこなかったネタバレをひとつ。

ゲーム本編の
11話で決着を迎えるアスラ VS オーガス戦ですが。
最終的な本編ではアスラが地球ごと串刺しにされた刀をたたき折り、
口にくわえてオーガスにとどめの一撃を与えますが。

制作時の絵コンテでは、あのまま口にくわえた刀で
オーガスの身体を横一文字に真っ二つにしていました。


あれです、初期の頃のガッツ(漫画「ベルセルク」の主人公)がよくやっていた
〝切られたあとの上半身がそのままグルンと回転するやつ〟です。
実際の話、絵コンテどころか、〝それ〟のアニマティクスも実機映像も作られました。一度。
ただ、どうしても製品化にあたって対象年齢の都合で〝どぎつ過ぎるだろう〟と(笑)。
今さらかよ!
と思われるかもしれませんが。

 

途中まで(ほとんど)作っていた我々が演出や作品全体のことを考えて、
作り直したのですから。そういうギリギリの判断だったと思ってください。
(まあ、ここまで描けばわかると思うので言っちゃいますが
序盤のアスラがヤシャに真っ二つにされるシーン。
あそこも最初はキレイに両断されてました。
最終的には……製品版の本編の通りです。)

 

まあ、どちらが良いとか、悪いとかの話をしているのではなく。
(最終的に直した判断は正しいと思って
いますから。)

愛されるキャラクターというのは時には開発者も虜にして、
行き過ぎた演出をさせてしまう
ことがあるということです。

 

株式会社サイバーコネクトツー

代表取締役 松山 洋


▼これまでの「アスラズ ラース」マントラの向こう側
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本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。

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