マントラの向こう側 第一回『俺達が生まれたこの世界を最後まで見捨てるな』 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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福岡に本社を置くゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 代表取締役 松山洋の公式ブログです。
定期的に最新の“思っていること”や弊社で刊行した書籍に掲載したコラムのアーカイブを掲載していきます。


▼これまでの「アスラズ ラース」マントラの向こう側
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-1-10072223547.html



H・E 1 The HUNT for ENERGY (ヤングジャンプコミックス)/Boichi
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H・E The HUNT for ENERGY(以下『H・E』)』という漫画作品があります。

『サンケンロック』などで有名な韓国の漫画家・Boichiさんの作品です。
現在も集英社の月刊漫画誌『ジャンプ改』で好評連載中です。
本作はテーマとしては珍しい〝エネルギー問題〟を扱った作品です。
Boichiさんらしいスケール感あふれる壮大な会社モノであり、
社会に対するアンチテーゼのような作品ですが、
非常にうまくまとめられたエンターテインメント作品です。

面白いのは作中で“石油がいかに素晴らしいエネルギーか”
ということをアピールした上でそれに代わる新しいエネルギーを
生み出そうとしているところです。

さて、みなさんは石油というエネルギーについてどれくらいご存知ですか?

非常に不可欠なエネルギーでありながら、枯渇していて、残存する量があとわずかしか無い。
確かにそれに代わるエネルギーを見つけて生み出していく必要がある、
なんとなくそんなイメージはありますよね?

一般的には〝地球上にはあと46年分の石油しかない〟と言われています。
そう、いまいちピンとこないかもしれませんが、実はかなり切羽詰まっているのです。
非常に身近な感じがしてきたでしょう?

ところがこの『H・E』という作品の中ではもう少し掘り下げて紹介されています。
実は〝46年〟というのは〝その年に確認された採掘可能な埋蔵量〟
という単位で計算されたものなのです。
ポイントは〝採掘可能な〟という部分。
現在の技術では油田に埋蔵された石油の30%しか採掘できないというデータがあるのです。

世界中の廃油田に残されている石油量だけでも〝採掘可能な埋蔵量〟の何倍とある。
さらには地球上には液体以外の様々な状態で大量の石油が残されています。
それらを合わせると(憶測ですが)なんと地球上には500年分の石油が埋蔵されているらしいのです。

まあ、500年分が多いのか少ないのかは別として。
〝46年分〟と言われていたものが実は〝500年分〟あったり。
埋蔵量としては存在してるけど、それを採掘する技術やコストを考えると
〝500年分あるから大丈夫〟とはとても言えない。

ただ、なんとなく〝石油は足りない。いつか無くなるらしい。〟
というイメージだけでぼんやりしていた時よりもこの話を聞くと、
少し意味が変わってきた印象ではないでしょうか。


私がBoichiさんの作品が大好きな理由のひとつに
〝好きだから〟という理由だけで作品を描かないこと、があります。
当然、自分自身でゼロから魂削って描き続けていく作品なので
〝好きだから〟という理由も必要なのですが、〝それだけ〟じゃない。

読む側に〝必要な情報〟だと思って読んでもらう。
〝興味がある・関心がある・関係がある〟こういった要素が必ず氏の作品には入っているんですね。
それは圧倒的な取材量から生まれます。
氏の作品は作画においても、実際にワイシャツを破ってみたり、
ビールの缶をバットで打つ瞬間を何度も撮影してみたり。
そうした探究心から生まれるある種の説得力があるのです。

別に事細かに説明しなくっても〝ああ、キチンと取材して調べたうえで、
読者に興味・関心を持って読んでほしい部分を抽出して制作されているんだな〟

と感じることができます。そして、その内容はやはり〝興味深く〟読むことができます。

我々ゲームクリエイターも同様に、ただ楽しいとか、スカッとする、
という理由だけで作品を作ったりはしません。

まあ、中にはそういう作品もあるかもしれませんが。
少なくとも私はBoichiさんのように、作品を企画する時には〝理由や根拠〟を求めます。
〝お客様に何を与えられるか? それは興味をもって振り向いてもらえるだけのパワーを有しているか?〟
という部分ですね。

それがないと〝ただのひまつぶし〟にしかならない作品になってしまいます。
私はそれを恐れます。作る以上は、遊んでくれたプレイヤーに何かを残したい。
そうでないと作る意味すらない
、と思っています。


本書〝トリビュートマガジン〟では『ASURA'S WRATH』というゲームソフトをテーマに、
弊社の開発スタッフが様々なイラストや漫画や企画などを通して、作品に対する〝想い〟を表現しています。
ゲームソフトが発売して、ダウンロードコンテンツの配信も全て完了して。

もうこれ以上、『ASURA'S WRATH』での展開は予定されてないなぁ、
というユーザー視点の寂しさのようなものを、
我々開発者自らが〝もう少し一緒に楽しもうぜ!〟とゲスト作家さんなどを交えて
まるで夏休みの〝お祭り〟のような、そういう気持ちから生まれるある種の情熱をもって作られています。

『ASURA'S WRATH』という作品では、〝怒〟という感情を基軸に全てのゲームデザインがなされました。
キャラクターデザインだって、音楽だって、シナリオだって。全ては〝怒〟が中心。
〝怒を楽しむこと〟を良しとする。〝怒〟って喜怒哀楽と称されるとおりの基本的な感情のひとつ。
誰にだってある感情。
それは日本人だって、アメリカ人だってヨーロッパ人もアジア人も。
みんなに関係があって、必要な感情のひとつ。


現代はたくさんのストレスを抱えやすい時代だなんて人は言いますが。
それを〝癒す〟サービスや商品はたくさん作られていますが。
逆に基本的な〝怒〟の感情をもっと爆発させてもいいんじゃないでしょうか?
せめてゲームの中だけでも。たまには大きな声を出したくなるように。

それが、私が『ASURA'S WRATH』を生み出そうと思った〝理由であり根拠〟なのです。


株式会社サイバーコネクトツー
代表取締役 松山 洋


▼これまでの「アスラズ ラース」マントラの向こう側
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本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。
「アスラズ ラース」 トリビュートマガジン第2巻 Vol.2 ワイゼン
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