レス・ポールのバリエーション4 | おんがく・えとせとら

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 レス・ポールのバリエーションその4。

 その1で触れたレス・ポール本人のギター。最近はレコーディング・モデルをメインに使ってるようですが,かつては写真の白いギターがメイン。

 基本的にはカスタム・モデルがベースで,ネックのバインディング無し,フラットトップ。50年代のヒット曲のレコーディングで活躍したギターだそう。
 PUとコントロール部はボディトップからプレートで装着されており,当初の仕様を大改造したものと推測されます。パーソナル・モデルをはじめとする70年代の一連のロー・インピーダンスPUモデルの原型となったギターとのこと。

les

 いつ頃のショットかは不明ですが,まだ立奏が可能だった時期。最近は椅子に座って演奏しています。

 このギターで一番特長的なのは,マイクをグースネックで接続しているところでしょうね。マイクスタンドの位置に移動しなくても,ギターアンプからボーカルやナレーションを出力することができる。69年に市販されたパーソナル・モデルも同様の仕様になっていますが,ステレオ・ケーブルを使えばマイクとギターを別々に出力できるそうです。写真のギターは後にトグルスイッチの下あたりにマイク用のボリューム・ノブが追加されます。

lp_peraonal LesPaul PERSONAL

 コントロール部も通常のモデルとは異なっており、本機を元に作られたパーソナルの仕様に倣えば,4つのノブはボリューム,デケイド(DECADE),トレブル、ベース。あと,レバースイッチはトーン切換,ジャック付近のは出力切換,フェイズ切換スイッチあたりかと思われます。
 「デケイド」は名前のとおり10(DECA)のトーンを切り換える,ES345,355などで見られるバリトーンと同様の回路のようです。

 ボディ下,ビグスビーのテール部に乗っかっているのは,レス・ポールヴァライザー(Les Paulverizer。食品加工用粉砕機pulverizerにひっかけた造語だと思われる)。DEVOはギターにファズをくっつけて使ってましたが、これは伴奏用テープ・レコーダーのリモート・コントローラーのようなもの。自ら発明したマルチ・レコーディング・システムの流用で,アイゼンハワー大統領の前で演奏した時に初めて使ったそうな。自分の弾いたギター伴奏に合わせてツインギターを披露してたんでしょうね。

low_imp スタック式ハムバッキング構造

 ロー・インピーダンスPUは,60年代末~70年代,ノーリン時代の一部ギターに装着されていましたが,出力が低い,専用ケーブルやプリアンプが必要,コントロール部が複雑,というハンディを背負い,ハードロック全盛でパワーのあるPUが求められたのと逆を行く指向で,短命に終わりました。
 現在,このPUをメインで使っているのはレス・ポール本人ぐらいですね。
 ただし,ロー・インピーダンスPUの思想は,その後EMGやバルトリーニなど,プリアンプ込みのアクティブ・システムに受け継がれていきます。


larry

 一方,ギター(ベース)にマイクをセットする,という思想はラリー・グラハム(Larry Graham)に受け継がれています。ムーンの彼のモデルのボディ・サイドからはグースネックがびよ~んと伸びている。これで「Wanna take you higher!!」なんてやるワケです。


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