最近、新しい記事を書いていなかったのですが、
新しい店も三カ月経ちやっと落ち着いてきました。


sherry

で、昨日ブログのアクセス検索に
【モスカテル・デ・チピオナ】
が数件あったので、今日はそのことを少し。


まず、品種のモスカテルMoscatelですが、
これはよく知られる一般名は
「マスカット・オブ・アレキサンドリア」
になります。

モスカテルがスペインで栽培されるようになったのは
紀元前900年頃と言われています。


地中海沿岸で古くから好んで栽培されてきましたが、
現在好まれるスティルワインとしてではなく、
食用、干し葡萄用、そして強化ワイン用、
またミサワイン用としてずっと好まれてきました。


13世紀になって、
錬金術師のアルナルド・デ・ヴィラノヴァによって
モスカテルを用いて初めての酒精強化ワインが造られ、
当時のアラゴン王に若返りの薬として処方されました。


製法としては遅積み、または天日干しによって糖度を上げ、
甘い果汁を搾ったら、そこへブランデー*を足して、
アルコール発酵が起こらないようにします。**

*現在は連続蒸留機由来の高スピリッツ
**日本でいう味醂の製法と同じ考え方


ここまでの製法はスペイン各地で行われており、
ステンレスタンク、ティナハ(大甕)、樽で行っても同じです。


ただ、伝統的なシェリーのモスカテルは、
樽熟をさせ、ソレラ・システムでの熟成を行うので、
次第に褐変を起こし色調は茶系へと変化していきます。


これは他のシェリー同様、
メーラード反応やカラメル化反応によるものです。

では、上記に上がってるルスタウ社の
「茶色くないモスカテルとは何なのか?」
という問いなのですが、

moscatel

これはシェリー以外の地域の普通のモスカテル同様に、
褐変していない状態で販売されているものです。


つまり、逆を言えば、
シェリーの茶色いモスカテルの方が
スペインの他の地域のモスカテルからすると特殊と言えます。

シェリーのDOに乗っ取った形で言えば、
ソレラ・システムでの熟成はしていますが、
ソレラ自体が若い、抜き注ぎのサイクルが早い、
そして、
何より樽が目一杯入っており空気との接触をなくすことによって
褐変しないモスカテルを造ることが可能になります。

そもそも
褐変というのは、主として

・空気(酸素)との接触
・温度変化
・時間経過

の三つの要素で進行しますので、
この三つを操作すれば
褐変は抑えることが出来ます。


補足するなら、
透明度が高い黄金色のモスカテルを購入しても、
上記の三原則を破れば、液体は褐変していきます。

このような製法はヘレス(シェリー)ではやられてこなかったのですが、
DO外のミサ・ワインとして採用されてはいました。

近年はルスタウ社以外でも数社がこのような
透明度の高いモスカテル・シェリーを出すようになりました。

*****

これ以上の話は
五反田Sherry Museumのカウンターでお尋ねくださいw


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