視線の先、追いかけていたんだ。
そして手を伸ばす、そっと触れてみたくて。
思い出の蛍の場所へ行きたかったけれど、ここからは1000キロも離れているので近くの場所へあの季節をなぞりに行ってきました。
わたしの職場から歩いて30分、目白にある椿山荘というホテルの庭園で蛍が見れると聞いたので行ってみました。
ずいぶん日も長くなって、涼しい夕暮れの道。
高田馬場から目白方面へは初めて歩きましたが、とても気持ちのいい街です。
ひっそりとした住宅街、都会の喧騒は遠く、緑に囲まれてみずみずしい街並み。
茜色夕暮れに染まる目白通り。
福岡で言うとけやき通りみたいな雰囲気です。
椿山荘はとても高級なホテルで、ものすごい庭園があります。
その中で蛍を離しているそうです。
水辺に蛍がいました。
数はそんなに多くなくて、やはりホテルの灯りも少し明るいし、あの真っ暗など田舎で光を見るのとは全然違っていたけれどね。
わぁいっぱいいる、という声に九州の田舎はもっとすごいんだからなんて言ってしまいたくなっちゃいますね(笑)
あの日の短い動画見てみると、虫の声が聞こえていてあの懐かしい景色が目に浮かぶようでした。
そんなのもわたしたちのエゴなのかもしれないけれどね。
あの山奥の水辺でも、この都会のど真ん中でも、ホタルたちはその短い命を燃やしていることに変わりはないよね。
こうして6月の空にちいさな光を放ち、生きているんだよね。
僕だって、キミだって、そうなんだ。
それでもやっぱりあの思い出の景色が愛おしいや。
できることなら戻りたいなんて思ってしまうよ。
わたしも激しく命燃やした、あの瞬間が何より美しかったのだと。
帰り道は思い出をたどりながら目白から池袋まで歩きました。
初めての街を歩いて、夜風に吹かれて。
池袋ではとても意味のあるラーメンを食べました。
暖暮にて。
なんだか今日は味が違ってあまりおいしくなかったのが残念でしたが、今日はラーメンを食べなきゃいけなかったのでこれでOKです(笑)
そして今日という日の最後には明るすぎる都会の空からホタルの光のような、ともすれば見落としてしまいそうな透明で尊いひかりがわたしに降ってきました。
わたしは饒舌すぎるということを思い知らされます。
大事なことをなんとか伝えようとたくさんの言葉をもってしてなみなみ注いで。
その浅はかさを。
それはたった一言なんだよ。
たった一言でわたしの世界はひっくり返って、くらくら眩暈のなかに落ちていくんだよ。
そのかすかなひかりの美しさに、わたしは魅かれて、そっと手を伸ばしたんだったね。
少しひんやりした6月の夜の湿った空気に、僕ら灯したんだ。
世界の片隅で、誰にも知られずに。
その光の残像は、
ほら、こんなにもきれいだよ。