「 ドライブ・マイ・ハート 」
『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー
賞で四部門、一三年ぶりに受賞しましたね。
それは原作の力でしょう? そう思った途
端、私は書店に向かっていました。
どうも苦手でしかたがない原作者の村上春
樹さんですが取り憑かれたように読破。七0
ページあまりの短編でした。
料理と同じで素材がいいと、いかようにも
美味しくなる、と言ったら監督に怒られそう。
それでも主人公の家福が我が子を生後数日
で亡くし、その悲しみを癒やそうと書道に没
頭するくだりがあって意外でした。
「異様なほど書道に凝っていた。真っ白な紙
の上に黒々と筆を走らせ、様々な字を書いて
いると自分の心の仕組みが透けて見えてくる」
村上さん、きっと子どものころ書道塾に通
っていらしたのね。こうした感覚を味わえる
というのは段持ちぐらいの腕前だったはずよ。
ドライブ・マイ・ハート。筆と心が直結す
る快感は車の心地いいドライブによく似てい
るでしょ? 今すぐそう村上さんに話したい。