音色 ( ねいろ )
風の音が変わった。
ついこの間まで、酷暑のなか、空気が熱く止まっていたのに。
足早に歩くと、風が耳に響く。
風の音、虫の音。かぜのおと、むしのね。
確か、清少納言が秋の風物として 『 枕草子 』 に挙げていた。
「 音 」の文字を 風は 「 おと 」 、 虫は 「 ね 」 と読み分けられるところが日本人の感覚。
音を 「 ね 」 と読む風情はわたしたち日本人にしかわからない微妙な感性だろう。
ちなみに、外国人は虫の声を雑音として耳にとらえるらしい。
耳ざわりであると。
日本人の耳の左右の構造は 「 音 」 をさまざまに聞き分けられる
天才的な構造なのだと、何かで読んだことがある。
中国人や韓国人ともちがうというからおもしろい。
虫の声を音色として味わえる 「 耳 」 を持つ喜びを、深まりゆく秋とともにかみしめたい。
秋の夜長、虫たちが奏でる楽の音に、しばらく耳を傾けよう。
そうは言っても、まだ初秋。
ウォーキングでもしながらまずは風の音を感じてみようよ!
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ おどろかれぬる
どなたの歌だったかしら?
まあ、とにかく風の音を聞いてみて・・・・。
書: 清水 恵