CAR STYLING主催の日本カーデザイン大賞は、12月4日(日)に山口京一氏ほか7名による選考会議でフォルクスワーゲンとマツダの作品に決定した。
ゴールデンマーカー・トロフィーはフォルクスワーゲン“UP!”に
今シーズンの日本車は厳しい災害に襲われながらも例年並みの25車種に及ぶ新型車が市販されたが、ニューデザインは少なく、世界に視野を広げてフォルクスワーゲン“UP!”が最も印象的な量産車として選ばれた。授賞理由は「これからの時代に即したコンパクトなパッケージとシンプルなデザインで清潔感のある魅力的な小型車を実現し、世界に規範を示した」というもの。
UP!は2007年のIAA(フランクフルト)にコンセプトカーとして初登場、2011年8月に量産型が公開され、9月のIAAではUP!をベースに6車種のコンセプトカーが披露された。ヨーロッパ市場には12月から投入。VWグループの新世代スモールカーとして期待され、スペインのセアト、チェコのシュコダにも展開されると見られている。スモールカーのひしめく日本市場には2013年頃に上陸する予定とか。
ゴールデンクレイ・トロフィーはマツダ“靭”(SHINARI)が獲得
今シーズンに登場した車の中で最もモデルワークの優れた作品を開発したティームに与えられるゴールデンクレイ・トロフィーはマツダ“靭”(SHINARI)のモデラーティームが獲得した。授賞理由は「デザイナーの意図する伸びやかなラインと起伏のある面質を卓越した造形センスと技量で躍動感のある立体に仕上げ、国際的に見ても今シーズンの最も印象的な自動車フォルムの1台である」と評価されたこと。
マツダのモデラーティームはこれまでに、センティア(1991-92)、ユーノス500(1992-93)、ランティス・クーペ(1993-1994)、RX-8(2003-04)、デミオ(2007-08)でゴールデンクレイに輝き、今回はコンセプトカーの“靭”で受賞し、最多受賞ティームとなった。
一方、今シーズンの最優秀コンセプトカーに送られるゴールデンマーカー(研究者部門)は該当車が見出せなかった。世界のモーターショーには100台近いコンセプトカーが出展されたのだが、ユニークなアイデアや啓蒙的な提案はいくつか見られたものの、デザインの完成度で高い評価を得たものはなかった。
(選考座談会の要約は後日紹介します)
コンセプトカー“UP!”シリーズの変遷
UP!コンセプトの登場以降、さまざまな姿に変えたコンセプトカーが次々と発表され、同じプラットフォームによるスタイリングの可能性を示唆。2010年にはタクシーの提案も公表された。
UP! Concept (2007 IAA)
Space UP! (2007 Tokyo)
Space UP! Blue (2007LA)
E-UP! Blue-e-Motion (2009 IAA)
UP! Lite (2009 LA)
Milano Taxi (2010 Hannover)
Berlin Taxi (2010)
London Taxi (2010)
Buggy UP! (2011 IAA)
Cross UP! (2011 IAA)
E-UP! (2011 IAA)
Eco-UP! (2011 IAA)
GT UP! (2011 IAA)
UP! Azzurra Sailing Team (2011 IAA)
デザイン言語「魂動」をテーマとするコンセプトカー群
前田育男・デザイン本部長の指揮の下に始まったマツダの新しいデザイン言語「魂動」をテーマとする第1作“靭”(SHINARI)。2作目“勢”(MINAGI)が11ジュネーブで、3作目“雄”(TAKERI)が11東京で発表された。
SHINARI (2010)
MINAGI (2011 Geneva)
TAKERI (2011 Tokyo)
デザイン言語「流れ」をテーマとするコンセプトカー群
前任者ローレンス・ヴァンデンアッカー氏は「流れ」をテーマに、06LAで発表された1作目“流”(NAGARE)をはじめ、07 デトロイトの “流雅”(RYUGA)、07ジュネーブの“葉風”(HAKAZE)、07東京の“大気”(TAIKI)、08デトロイトの“風籟”(FURAI)、08モスクワの“風舞”(KAZAMAI)、08パリの“清”(KIYORA)、と一連のスタイルテーマを、様々に車型を変えながら、マツダの全てのデザイン拠点を駆使して(研究・修練の意味が会った)展開し、世界から注目された。しかし2009年5月、ルノーからパトリック・ルケモン副社長の後任としてオファーがあり、移籍した。
NAGARE (2006 LA)
RYUGA (2007 NAIAS)
HAKAZE (2007 Geneva)
TAIKI (2007 Tokyo)
FURAI (2008 NAIAS)
KAZAMAI (2008 Moscow)
KIYORA (2008 Paris)
(文:F、写真:フォルクスワーゲン/マツダ)