先日のこと友人に、「今騒がれているTPPって、よく解らないけど、あれ良いの?悪いの?」という質問をされました。

政府も、しっかりと説明していないので、国民の皆さんもよく解ってないんですね。それどころか、新聞やテレビメディアでは、「グローバル化する世界において、自由貿易を推進するのは当然で、日本も後れをとってはいけない。国内の農業・漁業といった第一次産業へのダメージを訴える輩は、自由貿易推進に対する抵抗勢力である。」というような論調を強調しています。

つまり、TPPの問題は

自由貿易推進派 VS 農林水産業保護派

という単純な構図化を計ろうとしているような気がしてなりません。しかし、それは根本的に間違っています。

確かにこれまでも、自由貿易協定を組む時に、国内の第一次産業(特に食糧にかかわる農業)がネックになっていた側面はあります。
しかし、TPPはEPAやFTAとは根本的に違うのです。
以下解りやすく説明します。

●FTAとは?
 自由貿易協定(Free Trade Agreement)の略です。簡単に言えば、2国間以上で、商品などの輸出入にかかわる関税や規制を取り除くための国際協定です。話し合いによって、「米だけは対象外にしてください」というように、すべてが対象となるわけではありません。
●EPAとは?
 経済連携協定(Economic Partnership Agreement)の略です。上記の自由貿易協定(FTA)を柱として、物品に関わる通商上の障壁だけでなく、サービス・投資・電子商取引等のさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進等を計ろうというものです。これについてもFTA同様に、お互いの話し合いにより、特定の分野を対象外にすることは可能です。


それでは
●TPPとは?
 環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)の略で、2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国が、互いに足りない部分を経済連携により補おうという考えのもとで発足しました。そして、2010年10月現在、マレーシア、ベトナム、オーストラリア、ペル―、米国の9か国間が参加表明をしています。具体的な内容は、関税の撤廃だけでなく、郵政、金融、保険、医療薬、公共事業の入札、人の移動等、あらゆる分野での完全なる自由競争を行おうというものです。品目による限定は、行わないというのがTPPの本旨です。


この背景には、成長するアジア市場をなんとか取り込もうとする米国の意図が見え隠れしています。

さて、問題はこのTPPに参加するとどうなるのか?ということです。
推進派の経団連などは、「関税や規制が撤廃され、日本製品を輸出する上で大きな前進だ」と意気込みますが、よく考えてみてください。

人の移動もサービスも、入札すらも自由競争にするのですよ…そこで生起するのは、

働く場所の奪い合い…つまり、
「雇用の争奪戦ドクロ!!
が始まるのです。

日本人の労働者は「こんな安い賃金じゃ働いていられない」なんて言っていられなくなります。日本人よりも遥かに低い賃金でも十分に満足できるハングリーな労働者が、TPPを組んだ後進国等からドッと大挙して押し寄せてきます。

企業にとってはありがたいかもしれません。消費者にとっても物の値段が安くなるから喜ばれるかもしれません。しかし、日本人の雇用環境は、現在よりも確実に厳しいものとなることは火を見るより明らかです。

TPPは急ぐ必要はありません。加入するかどうか決める期限は、来年の11月ですから、国民も巻き込んで十分に議論し、その長短を見極めてからでも遅くありません。

それを、「APEC開催までに方向性を決定する」って、菅総理が主催国として何か手柄を立てたいだけにしか見えないのです。

軍は拙速を貴ぶものですが、外交に拙速は禁物ですビックリマーク