市街地構造の再整備・・・ロハス指向型/国内2事例の市街地密度を検討 (図表再更新版) | ゆるポタで心リセット“おれ野_お散歩日記”by_✡CAMMIYA…ちょいマニアックで開運

市街地構造の再整備・・・ロハス指向型/国内2事例の市街地密度を検討 (図表再更新版)

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↑住宅地人口密度指標 *■本ブログ関連記事『密度論』編も、ご参照くださいませ…


宇都宮屋台

朝霞市浜崎2




1.本記事作成の背景と目的
 1990年代末にアメリカで生まれたコンセプトであるロハス(LOHAS)は、2002年9月21日付の日本経済新聞(生活情報面)によって紹介されて以来、国際シンポジウムや大手企業におけるWEBやフリーペーパー、雑誌、放送媒体などを利用した取り組みによって、わが国においても急速に認知が高まってきた。さらに、最近では2005年6月に日系流通新聞の「ヒット商品番付」に「西の大関」と選定されたことを受け、たとえば東武百貨店池袋店ではLOHASをテーマとした商品政策を重視するなど、消費者側のライフスタイルに関する意識だけではなく、ビジネスのあらゆる場面においてLOHAS的な考え方が強く志向されるようになってきた。
 ちなみに、LOHASとはLifestyles of Health and Sustainabilityの頭文字をとったものであり「健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイル」という意味である 参考・引用文献1) 。
 一方で、都市工学の分野における「市街地構造の面から見た持続可能性の追求」については、例えば郊外開発と増価公共投資額に関する問題への言及(補注1) 、郊外商業施設立地に伴う周辺道路の渋滞損失額や雇用に与える影響を取り上げたもの(補注2) 、さらには職住隣接型の都市が行財政効率および消費エネルギー効率に優れることを明らかにした研究(補注3)等の既往文献が存在する(「環境への低負荷」系の論文については、今回は遡及対象外)。
そこで本研究では、LOHAS意識の高揚という現況に鑑み、おもに都市工学的な視点から「市街地構造のLOHAS化(持続可能性)を指向した再整備手法」の(実事例検討を中心とした)探求を目的とする。


行財政効率

*「筆者」=本ブログ管理者
人口密度とエネルギー消費

*松橋啓介(国立環境研究所)ほか

「エネルギー消費と人口密度」都市計画255(2005年)p.22より引用



2.本記事作成の方法
 本記事においては、わが国を代表するLOHASに関する調査・研究や情報のネットワーク機関である(NPO)ローハスクラブ(補注4)から出版されたビジネス書籍 参考・引用文献1)において紹介された国内外40件の実事例のうち、「まちづくり」分野に関する5事例を抽出。さらに(5事例のなかから)本記事が目的とする市街地構造の再整備との関連性が高いと考えられる2事例を絞り込み、それら市街地構造における特徴の拾い上げを中心に研究を進める。



3.滋賀県近江八幡市における事例
 琵琶湖の南畔に位置し、JR東海道本線の「新快速」電車が停車する地域交通の要所である滋賀県近江八幡市(人口約7万人)における郊外の田園地帯(中心市街地の西に隣接する位置)に計画されている「小船木エコ村」は、開発面積15ha(地産地消を目指した隣接農園を除く市街地総面積)、計画人口1000人(居住人口密度67人/ha)の田園住宅地である(図1) 。
 地区内には環境共生をテーマとした戸建住宅(平均区画70坪の敷地と10坪の菜園)を主体に職住隣接型の店舗(17店)のほか、中央公園(4500㎡)に隣接する交流活動の場である小舟木エコ村センター(集会所)が、豊かな緑と共に整備され、2007年に一部完成が予定されている。
 「小船木エコ村」の理念とは、①人々が生き生きと人間として真に成長しながら暮らせる、②自然が尊重され再生可能な、③水やゴミの処理にも最大限自然が本来持つ力を活用するような、④ビジネスが活発に行われ多くの人々を刺激し合うような住まい方の実現であり、そのような環境共生型のコミュニティを目指すものである。
 2000年11月にエコ村の実現を目指す組織が生まれ、2003年にNPO法人格を取得しまちづくりワークショップを何度も重ねると同時に、理念の具現化および事業計画の立案と推進を行う別組織として同年に「株式会社地球の芽」を設立し、現在に至っている。



4.北海道帯広市における事例
 2004年度における年間入れ込み客数181,000人、3億3千万円を売り上げた都心部立地の集合型屋台村「北の屋台」は、北海道十勝地方36万人都市圏の中核であり人口17万人都市の帯広市の「玄関」(JR帯広駅)から徒歩5分圏内に位置し、周辺には都市型ホテルなどが立ち並ぶ繁華街の一画に存在する(図2) 。
 帯広の「新名所」になった「北の屋台」は、1996年に空洞化した中心街に活気を取り戻そうという地域の若手有志が集まってSPO(Social Profit Organization、すなわち、単なる金儲けではなく、社会を良くする為、働くことを楽しみながら皆と分かち合える「社会利益」を生み出す非営利組織)を結成、その活動の一部として2001年7月に、居酒屋、中華、フレンチ、ブラジル料理など店主の個性に合わせ、地元農家の食材等を利用した特色のあるメニューと店造りを行った20ブース18軒(1ブース当り店舗面積3坪)で開店し、現在に至る。
 2005年10月発行の屋台村に関するリーフレットによると、顔写真掲載の屋台村「公式」スタッフ(各店主+店主夫人・共同経営者の合計)は33人この数値を開発総面積534㎡で除した従業者人口密度は62人/ha。平均週6日・6時間営業(時間当り95人来客)するので、通路幅員1m当りの歩行者・・・本事例は「屋台」なので滞留者(補注5)密度は38人/hと概算できる。
 「北の屋台」における開発コンセプトは「ゆったりふうど」。すなわち、料理とは本来人をもてなす心が大切で、単なる空腹を満たすためのものではない。また、単に「早い」「遅い」で評価されるのではなく、お客様1人ひとりの好みや、四季のハッキリした十勝の風土、旬の食材、店主やお客様同士の心の通い合いという、ゆっくり・ゆったりとした「ふうど(風土とfood)」を提供することである。


警「美」報 告 書 ☆彡 .......................... 街と電車と時々グルメ ▼CAMMIYA-屋台店舗平面概略図

屋台村における「コの字」カウンター配置の一般的形態

*画像をクリックすると、文字が拡大して読み易くなります。。。。。
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宇都宮市の屋台村における一般的な出店形態
*本ブログ管理者撮影



5.結びに代えて(今後の検討課題の整理)
以上、2事例より市街地構造に関する特徴を整理すると以下のようにまとめられる。

5-①

居住地系市街地である「小船木エコ村」は、地方都市郊外に位置する環境共生型の戸建住宅地でありながら、類似事例である「農住団地(たとえば新潟県上越市「アーバンビレッジ(最低敷地制限152坪)」等)に比較して、平均敷地水準70坪(人口密度67人/ha)という高密度な居住形態を採っているところに特徴がある。

居住人口密度67人/haとは、平成12年国勢調査データ・基準メッシュでいえば、たとえば東京の副都心である池袋から急行電車で20分弱の時間距離に位置し、駅前の商業系地域を抜けた先(公共交通の利便性を最大限に享受可能な徒歩5分圏内)に畑地と中層マンションおよび低層戸建住宅が入り混じる住居系用途(第2種中高層・容積率200%/建蔽率60%指定)地域が広がる埼玉県朝霞市浜崎1~2丁目(東武東上線・朝霞台駅北口)における居住人口密度(77人/ha)に迫る数値である。

5-②

従業地系市街地である「北の屋台」の場合、従業者人口密度62人/haという数値は、一極集中型のオフィス街を擁する帯広駅北口全体の従業者人口密度(126人/ha、平成12年事業所企業統計調査・基準メッシュ)から見れば低密度であり、帯広市よりも人口規模の小さい人口7万~12万人級の地方都市(平成の大合併以前)における中心街地区の従業者人口密度(宮城県石巻市60人/ha、宮城県古川市63人/ha、静岡県三島市66人/ha、山形県鶴岡市62人/ha、資料出典は直前と同じ)の数値に相当する。

しかしながら、「飲食」という滞留時間の長い業種・業態に特化したうえで、さらに、通路幅員を歩行者専用の2.5mに狭く設定することで、通路幅1m当たり38人という、既往研究(補注6)によれば商業系モールとして相当な「賑わい感」を示す数値を得たものと考えられる。


5-③

2事例に共通する特徴として、

居住地系、従業地系市街地を問わず60~70人/ha程度の人間の密度を志向していることがわかる。

このことから

「肩を寄せ合い気軽に話せて楽しむ」程度のコミュニケーションを生み、かつ「個人のライフスタイル」「生活環境(自然)」も尊重・両立可能な程度の程よい加減の人間の密度が、LOHASを志向した持続的な市街地構造の再整備における1つの要件になると考えられる。
小船木図面
北の屋台図面

*どちらも「筆者」=本ブログ管理者




[補注]
(1)神戸市都市問題研究所「インナーシテイ再生のための政策ビジョン」1981年 pp..100-113
(2)たとえば矢作弘「地方都市再生への条件」1999年 岩波書店 pp..42-49
(3)藤原章正・岡村敏之「広島都市圏における都市形態が運輸エネルギー消費量に及ぼす影響」2002年日本都市計画学会学術研究論文集pp..151-156など
(4)人々の健康や社会活動、経済、環境の保全に寄与することを目的として2004年3月10日設立され、おもにLOHASの概念を普及するための調査・研究や情報ネットワーク化に関する事業を行っている特定非営利活動法人である。
(5)坂本和昭「北の屋台繁盛記」2005年 メタブレーン pp..73,96によると、「北の屋台」における飲食客の平均滞留時間は120分/人、また、屋台村(路地)内部における通路幅員の実効幅は2.5m。ブース(店舗)総面積から算出される「売場効率」は167万円/㎡(1650万円/1ブース)。
(6)池澤寛「市民のための都市再生―商店街活性化を科学する」2002年 学芸出版社 pp..42,86
[参考・引用文献]
1)NPOローハスクラブ「日本をロハスに変える30の方法」2006年 講談社 p.13など
[冒頭写真の説明]

(上)栃木県宇都宮市の「屋台横丁」

(下)埼玉県朝霞市浜崎2丁目付近

*いずれも、本ブログ管理者自ら撮影