住友生命のポスティングチラシ

 

チ ラシを毎日集計していると、その傾向がだんだんわかってきます。大手チェーン店でチラシを活用する企業は、だいたい同じ曜日にチラシを入れています。た だ、売上拡大を目指してか、入れる曜日を変えるところもたまにあります。最近で言えば、ユニクロでしょうか。以前は、家電量販店と同様土曜日に入れていた のですが、昨年秋ぐらいから金曜日にチラシを入れるようになりました。セール期間を従来の週末2日間から、金曜からの3日間に変えたのです。売上拡大を目 指しているのは明らか。

 

今回取り上げるのは、住友生命のチラシ。保険会社のチラシは、さほど多くはありません。ただ、確実に月に何枚かは入っています。そのほとんどは、県民共済などの共済保険。次に多いのは、ソニー生命などの個人向けコンサルティング営業の生命保険。(ちなみに、ソーシャルメディア型チラシとして注目していた丹波通信 は、休止するとのこと。残念です。)実は、住友生命など従来型の大手保険会社のチラシが入ったのは、今回が初めてなのです。

 

ち なみに、住友生命チラシは、新聞折り込みチラシではなくポスティングチラシ。そして、会社発行のものではなく、生保レディ(保険営業員)が独自で配布した ものです。(配布者が明記されています)生保レディと言えば、これまで企業での勧誘・契約を主要な活動としていたはず。個人宅への営業は、ほとんど聞いた ことがありません。そして、チラシも今回が初めて。ということは、生保レディの営業活動が変化しているということになります。

 

その要因は、

 

企業での営業活動が難しくなったから

 

に 他ならないでしょう。セキュリティの関係上、昔みたいに事務所にまで足を踏み入れるということが難しくなったのは、想像に難くありません。ただ、それは今 に始まったことではないはず。特に、生保レディが営業に向かう企業は、ほとんどが大企業や官公庁でしょう。ならば、今さらセキュリティを強化して、生保レ ディの入場を禁止するということもしないのではないでしょうか。すでに、禁止しているのが普通ですね。

 

ならば、今回の住友生命のチラシは、企業や保険業界に何かしらの異変があったことを、物語っているのかもしれません。そこで、その異変として以下のように推測してみました。

 

【生保レディが個人宅営業を行うようになった背景】

[1] 事務所勤務の従業員が減少しているから

[2] 既存契約の解約が増加しているから

 

1 は、生保レディのターゲットそのものの減少です。生保レディが企業を訪問して勧誘するのは、事務所で働いている従業員。その事務所勤務の従業員が、そもそ も減少していては、いくら営業努力しても営業成績は上がりません。だから、その不足分を個人宅営業で補完しようとして、ポスティングをしたのではないで しょうか。そこで、統計局のデータ にて、正規の職員・従業員の数を調べてみました。

 

【正規の職員・従業員の数の推移】

[2011年]3352万人

[2010年]3374万人

[2009年]3395万人

[2008年]3410万人

[2007年]3449万人

※ 最新は2011年

※ 年齢階級,雇用形態別雇用者を参照

 

2007年と比べて、2011年の正規職員・従業員の数は、2.8%減少しているのがわかります。さらに、非農林漁業・非サービス業の就業者数を調べてみました。

 

【非農林漁業・非サービス業の就業者数】

[2012年]2596万人

[2011年]2623万人

[2010年]2646万人

[2009年]2685万人

[2008年]2760万人

※ 最新は2012年

※ 非サービス業として、「鉱業、採石業、砂利採取業」「建設業」「建設業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」「運輸業,郵便業」「金融業,保険業」「不動産業,物品賃貸業」「公務」を集計

※ 第12回改定日本標準産業分類別就業者数を参照


 

農 林漁業やサービス業でも、本社勤務の人は事務所勤務になりますが、事務所勤務の就業者数を示すデータがなかったので、上記の業種を選択して、計算しまし た。2008年と比べて、2012年は5.9%減少しています。正規職員・従業員よりも、減少割合が大きいのがわかります。

 

高齢化により定年に達する人が増えている割には、事務所勤務の正社員を採用していないからだと思います。また、コストセンターと考えられることの多い事務所自体を縮小しているのかもしれません。もちろん、正社員の仕事を非正規に任せている会社も多いでしょう。

 

2 について、既存契約の解約が増えれば、生保レディは新規顧客を開拓しなければ、収入を維持できません。セキュリティの問題上、これ以上大手企業への営業は 難しいので、新規顧客開拓の先として、個人宅を考えても不思議ではありません。では、解約はなぜ増えたのか。その要因として、

 

店舗型保険代理店利用者の増加

ネット契約の増加

 

が考えられます。節約志向の高まりを考えると、生保レディと何となく契約した保険を見直そうと考える人が増えていることは、十分考えられます。ただし、上場保険代理店で店舗も運営するアドバンスクリエイトの月次動向 を 見る限り、対面販売・通信販売での契約数が右肩上がりというわけではありません。ただ、店舗型代理店が増えていることを考えると、店舗型代理店利用者が増 えることにより、パイオニアのアドバンスクリエイトが伸び悩むほど、競争が激化しているのかもしれません。ネット契約に関しては、上場しているライフネット生命のIRデータ を調べてみました。契約件数が右肩上がりなのがわかります。これらを総合すると、店舗型・ネット販売の保険契約者が増えていることは、ほぼ間違いないかと思います。逆を言えば、生保レディによる契約件数が減っていることになります。

 

このように考えると、住友生命のチラシがポストに入っていたのは、

 

人口動態

企業就業者数の変化

保険販売形態の変化

 

が要因だと思われます。特に、企業就業者数の変化は、保険以外の業界にも影響を与えることでしょう。そして、新たなニッチ市場が生まれるかもしれません。

 

 

☆ 今日のまとめ☆

大手生保が個人宅営業に力を入れている要因は、以下の二つではないか。

一つは、事務所勤務従業員の減少により、従来の企業営業がジリ貧だから。

もう一つは、店舗型・ネット型利用者が増えることにより、従来の契約が解約されているから。

 

 

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☆ 今日のこぼれ話☆

節約志向が高まると、割高な保険が安い保険に切り替える人が増えるのでしょう。

ただ、いつの新聞かわすれましたが、保険契約数そのものを増やす人も増えているとか。

余裕はないけど、それ以上に将来が不安なんでしょうね。

 

☆サムシンググッド創業者 坂本桂一さんの言葉☆

「あるいは、ネガティブオプション系のゲームにする。いい例がセコムだ。いったん納得して契約してしまったら、積極的な理由がない限りなかなか止めようという気にならないから、毎年ユーザーの方で勝手に自動継続してくれるのである。雑誌の定期購読もこの類だといえよう。」

 

『頭の良い人が儲からない理由』 より)

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