笹口が変わったところ。そう言われると難しい。
「そうだなぁ。一言で言えば雰囲気かな。前はもっと尖ったイメージがあったが。今はなんか丸くなったというか…あ、そうだ、口調が変わったな」
「口調か、具体的には?」
「うぅん、前はもっと自己主張が強かったイメージがあるな。自分のやり方のほうが正しいんだって言わんばかりで。でも、今はそれがない。あ、オレの言うことをきちんと聴いてくれている、受け入れてくれている、そんな感じがするな」
すると笹口、ホヤっとした笑いになった。
「よかった、そう見られていたのなら成果があったということになりますね」
そう言って笹口が見たのは、マスターであった。
「笹口さん、自分が望んだ自分になれているようですね」
マスターが言う、自分が望んだ自分ってどういうことだ?その疑問に、笹口はすぐに答えてくれた。
「佐川、俺もこの店に来たときにはお前のようにちょっと突っ張ってたんだ。でも、オレが望んだものが見えたときに、どうすればいいのかがわかった」
「望んだものが見えた?」
「あぁ、このシェリー・ブレンドのおかげでな」
「シェリー・ブレンドのおかげ?そういや、魔法がかかっているとか言ってたが」