結局、この日の夜勤では水島さんの意欲の理由を聞くことができなかった。けれど、水島さんの味方になることはできる。私は彼女の仕事がやりやすくなるように、さりげなく手伝いをするようになった。
「この件についてですが、何か質問はありませんか?」
いつものように看護師長が申し送りで質問を要求してくる。
「ハイ」
手を挙げていつものように質問をする水島さん。周りは「またか」という顔をする。
「203号室の山本さんのことですが…」
質問内容はいつものようにすごくまっとうなもの。けれど、その言い分を聞いていたら面倒な作業を強いられる。
「ハイ、その件についてですが、私がやらせていただきます」
周りが面倒だと思う前に、私が率先して彼女の言い分に協力をしてあげる。そうすることで、面倒な仕事は私が引き受けるという図式が徐々に成り立っていく。
言い出しっぺになってしまう水島さんも、自分の言うことに対しては私と一緒になって作業を行う立場となる。つまり、私と水島さん、一緒にいる時間が徐々に長くなってくる。これは私にとっては密かにうれしいことだ。
そんな中、未だに水島さんの意欲の理由は聞けない状況が続いている。