第79話 愛しの君へ その19 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「えっ、なに、これ?」

 最初はコーヒーの味だった。けれど、そのあとすぐに別の味がボクの舌に広がった。いや、味というよりはイメージだ。

 小学校五年生の時に感じた、響子先生への想い。あのとき、一生懸命つくったプレゼントの切り絵。そこに込めた、ほんのりと甘く切ない恋心。それを思い出させてくれる味。

「みちたかくん、どうだった?」

 響子先生の声で、ハッと我に返った。夢でも見ていたような感覚。なんだったんだ、あれ。

「あ、えっと、なんか夢を見ていた感じでした。味というよりは、記憶を呼び起こしてくれたような感じです」

「どんな記憶?」

「え、えっと、そ、それは…」

 さすがに内容は、本人を目の前にして言うのは照れくさい。

「あれっ、どうしたの?顔が真っ赤だよ」

「か、からかわないでくださいよ。それより、響子先生はどうだったんですか?」

 ちょっとムキになって切り返す。すると、響子先生はちょっと遠い目をしながらこんなふうに語り始めた。

「私はね、前にここで飲んだときと同じ味がした。味というより、想いかな。あのときね、初心に戻してくれたの。私が先生になるって想いに」

 そういえば、響子先生が先生を目指す理由はなんだろう?