カインの冒険日記 -2ページ目

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元山賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
ククール……元マイエラ聖堂騎士団。キザ男
ゲルダ……女盗賊。宝探しに憧れるがセンスはない
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ


レティス……神鳥
ゲモン……レティスの卵を奪った妖魔
マスターライラス……故人。七賢者の末裔。ドルマゲスの師
サーベルト……故人。七賢者の末裔。ゼシカの兄
オディロ……故人。七賢者の末裔。前マイエラ修道院長
チャゴス……サザンビーク王子。ミーティアの許嫁
クラビウス……サザンビーク王。トロデ王と旧知
チェルス……故人。七賢者の末裔。ハワード邸の使用人
グラッド……オークニスの薬師。メディの息子
メディ……故人。七賢者の末裔。カッティードの遺跡の守り人
レオパルド……ハワードの愛犬。暗黒神の杖を所有
ラグサット……ゼシカのフィアンセ

 

 

 

レティスの背に乗り、
神鳥の巣の麓まで辿り着いたカイン一同。
レティスの話によると、
これ以上近付いてしまうと、
妖魔ゲモンに感づかれてしまう恐れがあるということで、
あとは、カインたちが歩いて登っていかなければならなかった。
カインたちの目的は、
ゲモンに人質にされている、
神鳥レティスの卵の奪回である。

おれにまかせろ!
と、胸を叩きたい気持ちは、確かにある。
意気込みだけで良いのであれば、
十分な意気込みがカインにはある。
これはカインに限ったことではなく、
トロデ王もヤンガスも、
ククールもゼシカも、
同じ気持ちは、大いに持ち併せている。
しかし、
意気込みは意気込みでしかなく、
それ以上でも以下でもないのである。
その意気込みを持って臨んだ結果、
目的を果たせたことが一度でもあるのかと問われると、
実は一度もない、と言わざるを得ない。

たとえば、
トロデーンがイバラの呪いに侵されたとき、
犯人であるドルマゲスを追って、
師マスターライラスを訪ねようとしたが、
結局ドルマゲスに先を越されてライラスは殺害された。
たとえば、
関所を破壊してリーザスに向かったドルマゲスを追ったが、
結局サーベルトが殺害されることを防げはしなかった。
たとえば、
ドルマゲスの狙いを看破し、
オディロ院長を守ろうと駆け付けたというのに、
結局、目前で院長を殺害されることとなった。
たとえば、
サザンビークの成人の儀式を護衛したが、
チャゴス王子を一人前にしたい、
と思うクラビウス王の願いむなしく、
王子の愚かさを助長しただけだった。
たとえば、
闇の遺跡で宿敵ドルマゲスを討ったにも関わらず、
暗黒神を封印した杖を確保することができなかった。
たとえば、
チェルスこそが七賢者の末裔だと見抜いたにもかかわらず、
そして、
そのチェルスを守るためにゼシカと戦ったにもかかわらず、
結局、チェルスの命を救うことはできなかった。
たとえば、
オークニスのグラッドの頼みで、
薬師メディを助けに行ったのに、
結局はメディが殺害されるのを傍観してしまった。
たとえば、
そこでレオパルドを捕らえる機会もあったのに、
むざむざと取り逃がしてしまった。

サッと思い当たるだけでも8連敗中である。
目的に対して結果を出せたことなど、
1度もないのだ。
そのことを口にはせずとも、
今回こそは、
卵の奪回というミッションを無事に果たしたいと、
カインは強く思う。



神鳥の巣を登っていくにあたって、
新戦力ゲルダの「忍び走り」は役に立った。
ゲルダのこの能力のおかげで、
カインたちの足音が完全に消えるのである。
足音が消えると、たとえ肉眼で見えたとしても、
魔物はカインたちを発見できなくなるようだった。
魔物たちの探知センサーは、
「目か耳」ではなく「目と耳」であり、
目視で確認した上で足音を感知してはじめて、
敵や獲物だと認識できるようである。

ゲルダとヤンガスはともに盗賊であるが、
ずいぶんと特性に違いがある。
ヤンガスは素早い動きが苦手であるが鼻が利く。
「盗賊の鼻」で宝の匂いをかぎ分けられるのだ。
それゆえヤンガスは、ゲルダよりも圧倒的に、
お宝にありつくのが得意であった。
一方のゲルダは、お宝が好きなわりに探り当てる勘がない。
代わりに、魔物に見つからない隠密の足運びがある。
素早さを活かしたその足運びが、ゲルダの持ち味だと言えた。

その持ち味は、
妖魔ゲモンとの戦いにおいて存分に威力を発揮した。
ただでさえ素早いゲルダは、
さらに素早さが上がる星降る腕輪を装備していて、
さながら疾風である。
戦闘が開始するとゲルダは、
誰よりも早く動いてピオリムを唱え、
そしてパーティー全員を素早くした。
疾風の速度で皆を疾風にする、
もはや疾風の呼吸の使い手、疾風柱と呼んでも差支えがない。
仮にパーティーが窮地に立たされたとしても、
疾風のベホマがあるという安心感は大きかった。
時おりやってくる「敵に先に動かれるとマズい状況」を
可能性として消し去ってくれるのである。

これは同時に、
ゲモン視点での「先に動ければ1人ぐらい殺せるかも」を
可能性として完全に潰していることを意味する。
ゲモンにとって「詰み」の状態を作ったのは、
紛れもなくゲルダであった。
こうして、はじめは、
退屈しのぎに遊んでやる、と高をくくっていた妖魔も、
やがて、
「バカな!」
と叫び声を上げることになったのである。

このようにしてゲモンを倒すまではよかった。
ただ、今回の任務は、
ゲモンを倒すことではなく卵を奪回することである。
そう思ってカインも、
この神鳥の巣の山頂でゲモンと対峙したとき、
ゲモンと卵の間に割り込みながら戦闘を開始したものである。
こういう位置取りであれば、
ゲモンとしても、
カインを倒さないことには卵に手出しができない。
また、カインたちが戦闘している隙に、
別動隊のレティスが卵の回収に飛んで来ても良い。
戦闘開始時点では、
そういった作戦のどれもが可能なポジショニングだった。
にもかかわらず、
戦っている間にカインたちはそのことを忘れて動き回り、
戦闘終了後には、なんとゲモンの手元に卵があったのである。

任務9連敗目はこうして訪れたのだった。
ゲモンを倒しておきながら卵を奪われ、
これはレティスの仕業だとクーデターを看破され、
「ヤツの卵も道連れにしてやる!」
と卵もろとも、ゲモンは自爆したのである。



「さっきの音は、いったい何が!?」
とレティスが慌てて飛んできたのは、
卵が割れた後のことだ。
黄身と白身が混じり合ったような我が子を見つめるレティスが、
カインの目には印象的だった。
人質を助けに行ったのに、
その人質を殺害され、
呆然と現場にたたずむ姿を目撃されたカインに、
いったいどのような言い訳ができるのだろう。
「私の赤ちゃんが!」
と豆鉄砲を食らったような顔のレティスが、
どんな罵詈雑言を乱射してくるのかと、
戦慄を覚えもした。

「お前のせいで私の子が死んだのだぞ!」
「ゲモンを倒しておきながら卵を守れなかったのか!」
「あなたなどに頼むのではなかった!」
「所詮はただの旅人。頼った私が間違っていました」
様々なパターンの言葉に「いいえ」と言える要素は皆無である。
「はい」と平謝りする心積もりをカインはしていた。
そんなカインの心情を察してか、
「ごめんなさい」
と、あのゼシカもしおらしく頭を下げている。
レティスと目を合わせるのもためらわれるような状況だった。
ところがレティスは、
全身青ざめて、鳥肌を立てて震えていたにもかかわらず、
内心の不満をおくびにも出さず、
それどころか逆に、
「申し訳ありません」
とカインたちに対して俯くのである。


もちろん、レティスにも落ち度はある。
というより、レティスの落ち度のほうがよほど大きかった。
まず、人選である。
あえて8連敗中のカインを指名しているあたり、
適性を見損ねる視界の悪さは「鳥目だから」で済む話ではない。
それに、クーデターの計画の甘さもある。
今回、カインたちが行けば自分の存在が隠せるだろうと見たが、
実際はゲモンに看破されてしまった。
敵の推察力を侮った結果だと言える。
そして最も大きな落ち度は、
自分の卵を取り戻すという最重要任務を
他人任せにしてしまったことである。
「自分の子を最も愛しているのは自分自身である」と、
理解していたにもかかわらず、
より愛情が薄いであろう他人に100%任せてしまい、
自分は高みの見物をしてしまったのである。
その罪に対する、これは罰だったと言えるだろう。
もう少しまともに作戦を考えていれば、
カインたちがゲモンの注意を引いている間に、
自分で卵を取り戻しに行くという発想に、
辿り着いたはずなのだ。
考えてみれば、
カインたちが、我が子をどれほど大切に思うものなのか、
全幅の信頼をおけるはずが、そもそもなかった。
「明日になれば、また次の卵が産まれるんだろう」
と思っている可能性すらある。
こういったことを考え合わせると、
レティスの作戦は、
失敗するべくして失敗したと言える。
カインたちに原因を押し付けて済む話でもないのである。


ただ、カインたちは、
そんな神鳥の心情を知る由もない。
「光の世界から呼び寄せておいて、こんな嫌な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありません」
と、子を失ったのに自分が謝るレティスに、
ただただ驚くばかりだった。

そんなとき。
「母様」
と、どこからともなく声が聞こえた。
カインたちはあたりを見回す。
どうやら、
溶き卵状になったレティスの子の声であるようだった。
「生まれてくることもできず、こんな姿でお話しすることになってごめんなさい」
と溶き卵は言う。
何事も、
度が過ぎると感心にも感動にも感銘にも至らないものである。
0歳児とは思えない立派な精神と立派な言葉遣いは、
逆にカインたちをポカンとさせた。
そしてカインたちが唖然としているうちに、
溶き卵姿の0歳児は、
「魂だけの僕に、皆さんの体を貸していただければ、空を飛ぶことができるようになるはず。どうか皆さんの旅に、僕をご一緒させていただけませんか?」
と提案し、その母親は、
「私からもお願いします」
とまくし立てる。

あまりの展開について行けていないカインの手に、
いつの間にか、ひとつのオーブが乗っている。
「神鳥の魂」であるようだった。
レティスと別れて闇の世界から戻るや、
カインはすぐに「神鳥の魂」を使ってみた。
霊媒の一種なのだろうか、
何かが憑依してくるのをカインは感じた。
と同時に、手が伸びて翼になり、唇が伸びて嘴になる。
ドルマゲスが人の姿から猿鳥姿の「第二形態」になったのと、
さして変わらない変化だった。

このカインたちの第二形態を
少なくともミーティアだけは喜んでいる。
王女として生まれ、遊び相手もいない中、
鳥になれたら城から出られるのに、
と思う幼少を過ごしてきたのである。
ミーティアはその思いを
「まるで夢のよう」
と夢の中で語った。



さて、
こうして思わぬ形でレティスのチカラを手に入れたカイン一行。
満を持して、
黒犬レオパルドを捕らえようと、
サヴェッラ大聖堂に戻った。
そこでカインは、
諸国漫遊中のラグサットと久しぶりに再会する。
「ここが噂のサヴェッラ大聖堂か!記念にペナントを買わなくっちゃ!」
いそいそと走り回るラグサットは、
フィアンセのゼシカがそこにいるのに気付いていない様子だ。
カインはゼシカのほうを見るが、
ゼシカのほうも、フィアンセのことなど眼中にない様子である。
「ねえカイン。全部終わったら、みんなで船で旅をしたいね」
それを聞いて、
「この場面でそれ、どういう発言?」
と、優男カインが言うことはない。



カイン:レベル36
プレイ時間:62時間17分、サヴェッラ大聖堂
 

 

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