東を目指したかいん。
東へと続く橋を前に、急に足踏みをし始めた。
橋を越えると強い魔物が出る、という話に脅えているのだ。
ローラ姫と覆面マスクを探すためには東へ行かなければならない。
しかし、橋の向こうにいるであろう強い魔物が怖い。
まだ見てもいないのに怖い。
超コワい。
怖いけれども、
ないはずの勇気を振り絞って、
試しに1歩だけ橋の向こうに行ってみると、
さっそく大サソリが現れた。
1撃で6ものダメージを受けたかいんは、
すぐに逃げ出した。
そして、橋を戻った。
怖い。
怖すぎる。
しかし、いつまででも恐れてばかりはいられない。
1撃で6のダメージを受けることはわかったのだ。
これで計算できるではないか。
怖がるな、かいん!
恐れるな、俺!
かいんはまた橋を越えた。
そして、メイジドラキーに出会った。
こいつは弱そうだ。
ふよふよ浮いているだけじゃないか。
だいたいピンク色なんてチャラチャラしていて、
強いわけがない。
所詮はドラキー。
それも100年以上も前の維新時代に栄えたような名前。
古ぼけた化石のドラキーだ。
怖くもなんともない。
そう、全然怖くない。
怖くて逃げているわけじゃない。
ドラキーが唱えたギラで11のダメージを受けたかいんは、
逃げながら負け惜しみを言い続けた。
逃げるのにも慣れてきて、
背中を見せずに、後ろ向きに走れるようになってさえいた。
お前たちなんて相手にしてやらねーよ!
悔しかったら追って来やがれ!
走るのなら負けないぜ!
わはは、どうだ悔しいか!
悔しいだろう!
俺は悔しくもなんともないぜ!わはは!
わめきながら草原を走る勇者の姿がそこにはあった。
これでもくらえ、大サソリ!
かいんはそう言って棍棒を振りかざし、
スライムベスを殴った。
お前なんか怖くないぞ、メイジドラキー!
そう叫んで、ギラを唱えて、
ゴーストを燃やした。
大サソリとメイジドラキーが怖いので、
そう叫びながらスライムベスやゴーストをいたぶり続けるかいん。
そうこうしているうちに、
ゴールド袋が膨らんできて、
銅の剣と鎖帷子を買うことができた。
ゴーストを1撃で倒せるようになり、
ゴーストに1のダメージも受けなくなったかいんは、
また急に強気になった。
待ってろ、大サソリ!
リベンジしてやる、メイジドラキー!
勇み勇んで走りながら橋を渡った。
だが、結局大サソリとメイジドラキーは現れず、
魔法使いばかりが現れるだけだった。
かいんの勇気ない叫びは、徒労に終わった。
かいんは、やがて温泉の村マイラへと辿り着いた。
「マイラ温泉の紅葉は竜町に聞く」
と、暗号染みたことを温泉娘が言う。
どういうことだ?
紅葉の時期に温泉に浸かると、
竜の町に行くための情報が聞けるということか?
竜の町とは、竜王がいる島にあるのか?
かいんはもう一度温泉娘に問いかけた。
そしてわかった。
娘が言っていることは、
「マイラ温泉の効用はリュウマチに効く」
ということだった。
なんと紛らわしいことを言うのだ、このバカ娘は!
りゅうまち、などと発音するからだ!
りうまち、と言えばわかるものを!
まるで俺が勘違いしたみたいじゃないか、ボケがっ!
かいんは温泉から4歩ほど南の位置で、
八つ当たりのごとく地面を蹴った。
なにやら棒状のものが足に当たる。
なんだこれは?と、かいんはその棒を拾い上げ、
またポイと捨てた。
俺にゴミ拾いをさせるんじゃねえ!
お前が拾え!バカ娘!
マイラの村では、
他の町に関する情報がいくつも聞けた。
ここから南にある島にはリムルダールという町があり、
リムルダールには鍵を売る店がある、とか。
ドムドーラの東には素晴らしい武器を売っている街がある、とか。
妖精たちは笛の音が苦手なゴーレムを眠らせた、とか。
しかし、なによりかいんの興味を引いたのは、
ゆう帝という男の発言だった。
俺はゆう帝だが、キム皇を探している、と言うのだ。
ゆう帝が何者なのかは知らない。
単なる村人かもしれないし、
この世界の作り主なのかもしれない。
だが、重要なのはゆう帝ではない。
キム皇のほうだ。
ガライの町のミヤ王と、
マイラの村のゆう帝と、
ふたりの人物がキム皇を探している。
キム皇が何なのか、
かいんにはすぐにわかった。
冷蔵庫の脱臭剤である。
そして、脱臭剤を探すミヤ王とゆう帝は、
冷蔵庫を持っているのに間違いない。
しかし、冷蔵庫を持っていたからなんだというのか。
それは、竜王のいる魔の島に渡るのに使うのだ。
3種の神器は、覆面マスクと海パンとマントではなかったのだ。
やはり冷蔵庫だったのだ。
キム皇を持ってゆう帝とミヤ王に見せれば、
ふたりは俺を認めてくれて、
3種の神器のひとつである冷蔵庫を授けてくれるに違いない。
俺はキム皇を探さなければならない。
結局ローラ姫のことはわからなかったが、
かいんは南のリムルダールを目指して、
3種の神器、冷蔵庫取得の旅へと足を進めた。
もちろん、残りの2つはテレビと洗濯機である。
俺はかいんだ。キム皇を探している。
かいん:レベル6
銅の剣、鎖帷子、皮の盾
わけうとね ずさほめめづね ふみやりが けにれ

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