ドラクエ4冒険日記(40) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

世界樹の花を手に入れたカイン。
誰を生き返らせようか、よくよく考える。
考えながら、山奥の故郷の村の中を行ったり来たりする。
そこかしこで、花を天にかざしたり、地面に埋めたりする。
ところが、どうやっても、
シンシアも村の人も生き返る気配がない。

実は、カインはうすうす気がついていた。
どんな生命をも蘇らせるなどと言っているが、
世界樹とエルフが密接な関係にあるように、
世界樹の花もまた、エルフだけに奇跡を与えるのではないか、
ということに。

そのことに気が付いたカインは、
世界樹の花でロザリーを蘇らせ、
彼女の説得をもってデスピサロの暴走を止める、
というストーリーを頭の中に描いていた。
しかし、そのストーリーを実行するためには、
カインには、ある重要な決断をする必要があった。
それは、シンシアを蘇らせることは諦める、ということ。
ただの仮説を遂行するにあたって、
この決断は、カインにとって、とても勇気の要ることだった。

今までカインが、シンシアが蘇らないことを納得していたのは、
蘇らせる手段がないという理由であった。
ところが、世界樹の花を手にした今、
カインは、シンシアを蘇らせることができるかもしれなかった。
狭間でシンシアに再会して以来、
カインの中で、
一度は諦めたシンシアと会うことを願う気持ちが、
膨れ上がりつつあった。

カインは、今葛藤の最中にあった。
カインはすでに、
デスピサロにシンシアを殺された悔しさから抜け出していた。
ロザリーが人間に殺されたことに憐れみを感じてもいた。
しかし、だからと言って、
自分の最愛のシンシアを放っておいて、
ロザリーを生き返らせようと考えることにはならない。

極論するならば、
今、カインの手で、シンシアかロザリーか、
どちらか一方を蘇らせることを決めれる状態にある、と言ってよい。
少なくともカインはそう思っていた。

ロザリーを蘇らせることは、
デスピサロを救うことに繋がるかもしれない。
しかし、他ならぬシンシアの仇の、
デスピサロを救う必要などあるのだろうか。
それも、シンシアを生き返らせない、という条件まで背負って。

カインは、かつて、デスピサロが話し合いに応じるならば、
平和的解決を望んでもいた。
だがそれは、
デスピサロがロザリーを失った苦悩を加味してのことであり、
自分にも、気持ちがわからないでもない、
と考えてのことである。
さらに言うならば、
ロザリーのことを加味するとしても、
シンシアの仇であることには何ら変わりはなく、
カインが無限大に等しい譲歩をしてのことだった。

この上、デスピサロに対して、
カインはまだ譲歩しなければならないのだろうか。
結論は・・・、出なかった。

結論が出ないカインは世界樹に行き、
この世界樹の花の宿命がどうなのか、
ここで試すことにした。
自分で決められない決断を世界樹に委ねることにした。
カインは、世界樹の根元の一部をくり抜いて、
サイコロ状の立方体を削り出した。
立方体の5面に「シンシア」と彫り、
残る1面に「ロザリー」と彫った。
もし、このサイコロで「ロザリー」が出るようなことがあれば、
それは、世界樹の意志、ということになる。
カインは、結果がどうであれ、
命運を世界樹の意志に委ねることにした。

そしてサイは投げられた。

出た目は・・・、「ロザリー」。

カインは、目をつぶり、歯を食いしばり、
道具袋に手を入れ、シンシアの羽根帽子をぎゅっと握った。


ロザリーは簡単に生き返った。
そして、簡単に仲間になった。
シンシアを蘇らせようとした時とは違い、
ただ、墓前に世界樹の花を添えただけで、ロザリーは蘇った。

ロザリーが蘇るときに、
カインは一瞬、狭間でのシンシアとの再会を想起していた。
しかし、もちろん、
カインが密かに思っていた万が一の期待は実現せずに、
ロザリーが息を吹き返す結果となる。
誰もが喜んだ結末だったが、
ただ、カインひとりだけ複雑な想いを胸にしまっていた。
もちろん、カインがロザリーの復活を望まなかったことなどなく、
カインにとっても、嬉しいことではあった。
ただ、嬉しさの奥に、複雑な心境があったのもまた事実である。

ロザリーが仲間になるや、
ドランが仲間から外れた。
このことをマスタードラゴンに報告に行くのだと言う。
いや、カインには、何と言ったかよくわからなかったのだが、
最もドランと面識の薄いはずのロザリーが通訳してくれた。

ロザリーを仲間にしたカインは、
予定通り、デスピサロのもとへ行った。
そして、ロザリーが説得する。


ピサロは、何もわからなかったし、何も覚えていなかった。
ただ、人間を滅ぼすことだけが、唯一わかることだった。
そこに現れたのが、エルフの娘。
娘は自分に必死に説得を試みる。
初めて会ったときのことを必死に話す。
そんな話を聞いているうちに、
ピサロはだんだん記憶を取り戻してきた。
そう、強欲な人間に襲われていたエルフの娘を助け、
自分が育った村の名前を一部取って「ロザリー」と名付けた。
そして、ロザリーのためにも、
人間を滅ぼそうと思っていたことを思い出す。
怒りに我を忘れて、ただ人間を憎んだのも、
ロザリーを失ったからのことであった。
そのロザリーが無事で、今こうして目の前にいる。

ピサロは嬉しかった。
ただ、嬉しさを表情に出す男ではなかった。
ピサロはカインに短く感謝の意を述べ、
本当に憎むべき相手のことを悟った。
奴には結界を守らせる任務を与えていたのだが、
どうやら、それも果たしていないのだな、とピサロは考えた。
そして、カインもその者を追うことで利害が一旦合致し、
ピサロはカインと行動を共にするのだった。

待っていろ、エビルプリースト。
このピサロを貶めた礼は高く付くぞ。

天空の武具を装備した、天空と人間の血を引くカインと、
魔界の武具を身にまとった魔族ピサロ。
今、まさに、カインの思う「天下三分の計」が完成していた。

天下三分の計は完成していたが、
カインは愉快な気持ちにはなれずにいた。
デスピサロ、僕はお前を許したわけじゃない。
仲間になったつもりもない。
カインはピサロに目で語った。

ピサロもまた、目で答えた。
私も仲間になったつもりなどない。
目的が同じ間だけ、互いが互いを利用するだけだ。

天下を三分するカインとマスタードラゴンとピサロ。
カインから見たら、どちらとも仇であり、
マスタードラゴンから見たら、掟破りの子と魔王であり、
ピサロから見たら、野望を阻害する竜神と勇者である。
今この時こそ協力体制にあるものの、
3すくみの関係にあると言ってよかった。
ただ、この3者が協力するということは、
他の何者の追随も許さないことを示していた。

何者の追随も許さないことを唯一理解していないのが、
現魔族の王、エビルプリースト。
大きく傾いている魔族界を救うことができるのは、
少なくともエビルプリーストではなかった。
カインもピサロも、それだけは理解していた。

カインとピサロは、長い戦いを終わらせるべく、
エビルプリーストの根城、デスパレスへと向かうのだった。


カイン:レベル38、プレイ時間30時間34分
パーティ:8人+ロザリー+ピサロ





にほんブログ村 ゲームブログ ドラクエシリーズへ
にほんブログ村