このことをエンドール王に伝えると、
約束どおり、エンドールでの出店許可をもらえた。
そして、ボンモールでの情報どおり、
店を売りに出したい老人がいた。
トルネコは、まず、店をくまなく見て周り、
間取りも悪くなく、いい雰囲気で商売ができそうな店だと確認した。
カウンターもあり、ダイニングもあり、非常口もある。
絶妙なのは、
ダイニングやキッチンから店の様子がわかる間取りであり、
仕事が忙しい中でも食事が取れるという、
商売人としては、うれしさこの上ない作りをしていた。
また、2階には寝室があり、
ポポロが遊ぶにもちょうど良い広さがあった。
さらにちょうどいいことに、ベッドも3台備え付けられており、
まさに、トルネコ一家が住むに相応しい物件といえた、
次の子供が産まれなければ。
トルネコは、この物件を購入するつもりでいた。
ただ、予算が全く足りない。
老人の要求額は35000G、トルネコの全所持金は262Gだった。
35000Gというのは、
レイクナバで雇われの仕事をしていたときの、
無休で働いた場合の、年間所得とほぼ同額である。
物件の価格としては妥当な気がしたが、
トルネコには、全く手の届かない額であった。
ただ、35000G稼いでくれば、
この物件は譲ってくれるということであるだろうから、
今は、その金額まで、お金を貯めることだけを考えることにした。
ところで、トルネコの全所持金が262Gになったのはわけがあって、
それは、スコットとロレンスという用心棒を雇ったこと。
スコットは肉体派兵士、ロレンスは呪文を得意とする詩人だった。
スコットもロレンスも、
用心棒にしてもらえそうな雇い主を探していた。
2人とも、
サントハイムから来た3人組と話したことがあり、
自分を用心棒として雇ってもらえないか、
ちょっと考えたことがあった。
が、3人で旅をしている者に、用心棒など必要そうになかったので、
声をかけれずにいたのだった。
今回、ロレンスがトルネコに声をかけたのは、
トルネコが一人旅だったから。
スコットがトルネコを雇い主として見込んだのは、
お金を持ってそうだったから。
そういう経緯があり、今や3人で旅をしているトルネコ。
おかげで、所持金は262Gとなり、
物件の購入まで、あと33738G必要であることとなった。
この町には、今は閉鎖されているカジノがあり、
トルネコは、ちょっとだけ、足を運んでみた。
運営されていなかったので、客はいなかったものの、
カジノには似つかわしくない風貌の人物と遭遇した。
その人物は、ライアンという旅の戦士だった。
ライアンは言う。
「私のお探しの人が武術大会に出ているかもしれないと思って来たのだが、もう武術大会も終わってしまったようだ。」
トルネコは、
このライアンという戦士も用心棒として雇おうと考えた。
なんだったら、スコットの方は解雇しようとも考えた。
だが、ライアンは、どうやら重要な使命を持っているようで、
自分の夢と家族の幸せを願うトルネコでは、
彼は雇えない存在であるとなんとなくわかった。
トルネコは、瞬間的な目利きで、
ライアンの持っている剣が、
とても高価で、切れ味の鋭い剣だと気付いた。
そして、自分にも装備できそうだと思うのと同時に、
こういう高価な武器が取り扱える店にしたいものだ、
と思うに至っていた。
ちなみに、先進国と言えど、エンドールは、
兵士の装備に割く予算がなく、銅の剣を携帯している。
それに比べると、ライアンという旅の戦士が、
どれだけ充実した武具を身に纏っているか、
目利きのあるトルネコでなくても、一目瞭然であった。
腕に覚えのあるスコットはなおのこと、
装備だけでなく、生身でもライアンには叶わないことを悟っていた。
すでに、トルネコの活躍によって戦争は食い止められたのだったが、
もし戦争になっていたら、
装備の手薄さから、実はエンドールはかなり危険な状態にあった。
ただ、そのとき、このライアンという戦士がどう行動するかで、
戦局は大きく変わったであろう気がするトルネコ。
もっとも、
そんなことは起こってないし、すでに過去のことであるし、
仮定法過去完了形で語られる話ではあるが。
さて、商人仲間がうっかり口を滑らせて、
「銀の女神像」なるものの存在を教えてくれた。
その像は洞窟の奥深くに眠るもので、
骨董品コレクターが高値で買ってくれそうな一品であるらしい。
トルネコは、
物件購入資金の助けになりそうなこの情報を幸運と思い、
女神像を探しに行くのだった。
女神像を探しに行く途中で、
トンネルを掘っていたが、
資金が底をついて挫折してしまった老人と会った。
「あと60000Gもあればトンネルを掘り続けることができるのだが、どうだ、後を継いでくれぬか?」
と言われ、トルネコは、勢いで承諾してしまった。
「そうか、ならばまず自分の店を持つことじゃ。」
老人から離れたトルネコに、スコットは言った。
「あんた、本気で言っているのか?」と。
トルネコは、勢いで言ってしまったことを認め、
「そうか、だったら安心した。」
と、スコットは言った。
だけど、と、トルネコは、自分の選択を振り返った。
もしかしたら、店を持ってひと稼ぎした後には、
そういう選択肢もあるのではないか、と、後になって思った。
ただ、今は店を持つことだけを考えるときだし、
その前に、銀の女神像を探して、
コレクターに買い取ってもらうことから始めるところである。
さて、洞窟の仕掛けの謎を解き明かして、
銀の女神像を手に入れたトルネコ。
早速、コレクターのところに持っていった。
2000Gぐらいで買い取ってはくれないかと思っていたら、
その10倍以上の25000Gで買い取ってくれた。
いや、正直、あまりの額の大きさに、
一瞬意味がわからなくて、即売りできなかった。
指を折りながら、もう一度金額を自分で復唱し、
その後、再度コレクターに確認し、
自分でもびっくりの法外な値段での取り引きが行われたのだった。
この富豪コレクターは、25000Gの出費をものとも思わず、
次には、天空の剣が手に入れたい、と言っていた。
この言葉に、ピクリと反応するトルネコ。
ちょっと前に、サントハイム方面へ足を伸ばそうとしたら、
門番が、無許可では管轄地へ入れてくれない動きをしていた。
ウワサによると、
サントハイムは滅びたような話を聞いたトルネコだったが、
この門番は、滅びた国のために、律儀に仕事をしているなぁと、
忠義の心を感じるのだった。
そのサントハイムに向かう宿屋で、
天空の剣の力を悪用させてはならない、
と言っている人がいて、
コレクターの言葉にシンクロさせたのだった。
そして、そんな重要な武器があるのだったら、
ぜひ、自分の目で鑑定したい、
と思うのが、武器屋としてのトルネコの正直な気持ちだった。
さてさて、そうこうしているうちに、
目標の35000Gが思いの外簡単に貯まってしまい、
すぐに、物件購入依頼をする。
高額な買い物であったが、取り引きは一瞬であった。
老人は、店を空け渡し、
トルネコは、自分の新しい持ち家にネネとポポロを呼んだ。
自分の店を持ちたいというトルネコの夢は叶った。
だが、この夢は、次の夢への踏み台でしかない。
夢は叶ったときがゴールなのではなくて、
そこからがスタートなのだとトルネコは知っていた。
トルネコは、この店を世界一の店にしたいと思っていた。
そう思っていたが、さて、何で世界一にしようか、考えていた。
エンドールには、武器屋も防具屋も道具屋もある。
品揃えか、サービスか、顧客の人気か、王宮御用達か、
どんな分野で世界一にしようか、家族会議を開いて考えた。
そして、ある結論が出た。
それは、利益率、であった。
仕入れ値と売値の差額である利益率、
この利益率が世界一の店を目指す、
というのが家族会議の結果だった。
そして、店番はネネに任せ、トルネコは仕入れに行くのだった。
トルネコ:レベル8、6時間38分

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