ドラクエ4冒険日記(10) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

第三章 武器屋トルネコ


「むにゃむにゃ。いってらっしゃい。」
寝ぼけた声でポポロが言った。
ポポロ少年は、まだ幼い子供であり、
母親はネネという専業主婦、
父親はトルネコという雇われ武器屋だった。
父と母は良く愛し合っていて、
ポポロは非常に恵まれた家庭に生まれた。
ポポロは、父親によく可愛がられ、母親にもよく愛され、
不自由のない生活をしていた。
ただ、決して裕福ではなかった。

母ネネは父トルネコにお弁当を渡し、
父トルネコは、朝から仕事に行く。
ポポロが、まだ寝ぼけている時間の話である。
そこに、「いってらっしゃい。」の声をかけるのが、
ポポロの日課だった。
ポポロの何気ない日課は、日々、トルネコに活力を与えていた。

ポポロは、父の職業をよく理解し、
将来は、自分も武器屋になりたいと思ってもいた。

夜になると、トルネコは帰って来る。
そして、疲れて、すぐに寝てしまう。
裕福ではなかったが、
父親は忙しくてなかなか遊んでもらえなかったが、
ポポロは不幸だと思ったことも、寂しいと思ったこともなかった。
むしろ、父親の仕事ぶりを誇らしいと思っていた。

ポポロは、
そんな父トルネコと母ネネが、最近話していることを耳にした。
今は雇われの身だけど、いずれあなたは羽ばたく人よ、
そんな風な会話だった。
ポポロにはよくわからない会話だったが、
その会話以来、父トルネコの態度が変わったことはわかった。
今まで、日中に外で見かけることのなかったトルネコが、
町の中をあちこちと動き回っていたのだから。
ポポロは、トルネコが防具屋ヘ行き、道具屋ヘ行き、
近所のトムじいさんを助けながら教会へ行っているのを目撃した。

ポポロは、宿屋の主人から、
トルネコに話があるということづけを預かっていた。
忙しそうに動き回るトルネコに、ポポロは言う。
「パパ、宿屋のおじちゃんが話があるって言ってたよ。」

ポポロがそう言うと、トルネコは宿屋へ行き、
それから、町を出て、
帰ってきたときには、大きな金庫を持って帰って来ていた。

ポポロは、子供ながらにわかっていた。
パパは、今から何かをしようとしている。
そして、あんまり家に帰ってこなくなっちゃう。
でも、僕は寂しくなんかないよ、
パパは一生懸命、やりたいことに向かっている、
世界一カッコいいパパなんだから。


ここ、ポポロが育った田舎町はレイクナバ。
エンドールからずっと北にある、平和な町である。
幼いポポロが見守る中、
平和な田舎町から羽ばたこうとしているのは、
父トルネコである。
トルネコには夢があった。
それは、自分で武器屋を開き、世界一にしてみせる、という夢。
このお話は、
そんなトルネコが夢を叶えて武器屋を開店し、
洞窟を掘って大陸間通路を開通し、
船を購入して航海し、
勇者と共に伝説の剣を手に入れ、
世界を平和に導き、
そして、スピンオフするという壮大な物語の、
ほんの初めの部分である。


トルネコはレイクナバを出て南下し、
南の先進国エンドールを目指す。
エンドールを目指すのは、
先進国で店を興すことが、世界一への第一歩だと思ったからだった。
その途中で名も無き集落に立ち寄り、
一泊することにした。
一泊した後に気付いたのが、
起きてみたら集落も何も無く、ただの原っぱだったということ。
この辺では狐に化かされることが多いらしく、
どうやら、トルネコも一杯食わされたようであった。

トルネコは、気を取り直して、再度エンドールを目指す。
しかし、次なる障害が立ちはだかる。
エンドールへの橋が壊れていて、渡れない状態にあった。
この橋の管轄はボンモール。
貧しい国の、小さなお城である。

トルネコはボンモールに立ち寄り、現状の把握に努めた。
そして、この城では、大変な策謀が立てられていることがわかった。
貧しい国ボンモールは、富める大国エンドールを侵略するべく、
攻撃の手はずを整えていた。
ところが、この国のリック王子は、自国の侵略を阻止しようとして、
一通の文書をトルネコに託すのだった。
あて先は、エンドールのお姫様であった。

トルネコは、文書を盗み見した。
それは、恋文であると同時に、
ボンモールからの侵略を事前に伝える密告の文であった。

橋が直り次第、すぐにエンドールへ向かうように、
と、リック王子は言った。
しかし、橋が直らない原因をトルネコは知っていた。
橋の修理を依頼されている建築家のドン・ガアデ氏が、
狐の集落で化かされていることを知っていたからであった。

一方、レイクナバ出身者が、
ボンモールの地下牢に捕まっているという情報も手にしていた。
トルネコは、門番の目を盗んで不法に侵入し、その囚人と話す。
囚人は、トムじいさんの息子だとわかったのだが、
彼は、盗みを犯したが、心を入れ替えたので、
脱獄の手助けをして欲しいと言う。
とても、心を入れ替えたとは思えない発言だった。


さて、いくつかの頼まれ事を
同時に引き受けてしまったトルネコであるが、
状況をよく整理した。

リック王子の頼まれ事を果たすためには、
エンドールへの橋を修理せねばならず、
修理のためには、ドン・ガアデ氏を狐の幻惑から助けねばならず、
狐を追い払うためには犬を連れて行かねばならず、
トムじいさんにもなつかない息子の犬の協力を得ようと思ったら、
それは、
やはりトムじいさんの息子の脱獄を手伝う必要があることになる。

しかし、仮に万事うまくいったとしても、
ボンモール軍よりも先に、
エンドールにたどり着くことができるだろうか。
いや、ただ単に、先にたどり着くだけでは不十分である。
エンドール軍の防戦体勢が間に合ったとしても、
侵略を防ぐことができるだけで、
戦争の勃発は防げないことになる。
自分が、戦争を起こす手伝いをしてしまうかもしれないことを
自覚するトルネコ。
それならば、いっそ、ドン・ガアデ氏が橋を修理しない方が、
ボンモール軍が攻め込めないので、いいかもしれない。
そう考えると、先ほど自分で考えたことと、逆の理屈が成り立ち、
トムじいさんの息子の脱獄を手伝わないことで、
すべてが防げることになる。

そう考えもしたが、別の考えも浮かんでいた。
エンドールでは店を売りたがっている人がいるという。
その人から店を買い取って、エンドールで武器屋を開店できたら、
どんなにいいことだろう。
戦争は望んでいないが、
実は戦争になった方が、武器屋は儲かるという打算も働いていた。
それから、ドン・ガアデ氏が橋を修理しなくても、
いずれ、代わりの誰かが修理することは疑いない。
そうなれば、万事休すで、
リック王子の文書も届けられぬまま、
エンドールはボンモールの支配下となる可能性がある。
ボンモール支配下のエンドールで開店することは、
トルネコにとって、いささかおいしくない話であった。
ということは、結局は、
ドン・ガアデ氏を助けて、橋を修理してもらい、
いの一番でエンドールの姫に文書を届け、
そこで、対策を練ってもらうことのほうが、
より良い結果をもたらす気がしているトルネコ。

トルネコはネネを想い、ポポロを想う。
ポポロ、
パパは手紙を盗み見したり、
不法侵入したり、
脱獄の手伝いをしようとしたり、
もしかしたら戦争のきっかけをつくることをしようとしたり、
一見悪いことをしているように見えるけど、
いや、本当に悪いことをしているんだけど、
でき得る範囲の最善の行動をとっているつもりなんだよ。

トルネコは、勇者でも聖者でもなく、
一介の商人だった。
その商人にとっての判断基準は、
善悪ではなく、儲けるかどうか、であり、
トルネコもまた、例外ではない存在なのであった。


トルネコ:レベル3、プレイ時間5時間50分




にほんブログ村 ゲームブログ ドラクエシリーズへ
にほんブログ村