キンッ!
キン!キンッ!
これは剣が交わる音。
いまだ未熟な勇者カインが、剣の手合わせをしている音。
「どうだ?今日はもうこのくらいにしておくか?」
手合わせしてくれている剣士が聞く。
はい、手合わせありがとうございました。
「少し厳しくしすぎたかもしれんが、これもお前が腕を上げている証拠だ。」
厳しくもあり、優しくもある口調で、剣士はそう言った。
ここは名も無き山奥の村。
カインは、ここで勇者としての素質を鍛えられていた。
カインは、この村から外に出たことがなかった。
村の入り口は、村の兵士に固く封じられ、
外部からの訪問者も訪れなければ、
村の者が外部に出て行くことも無い。
そんな閉塞した世界がカインのすべてであった。
カインには、心を許し合える親友がいた。
それは、シンシアという女性。
シンシアはいたずら好きで、よくカインをからかう。
つい先刻も、シンシアは変化の呪文でカエルに化けて、
カインをからかっていた。
カエルのフリをしたシンシアは言った。
「勇者様、私はとある国の王女なのですが、呪いでカエルにされてしまいました。どうか助けてください。」
このカエルの話を真剣に聞いているカインを見て、
途中で笑いが我慢できなくなったシンシアは、慌てて逃げ出した。
そして、それを追ってきたカインに見つかり、
「ひっかかった?この呪文、モシャスっていうの。何にでも姿を変えられるのよ。」
と笑って見せた。
カインは、このシンシアの無邪気で気さくなところが大好きだった。
そして、この平和な村での生活がずっと続けばいいなぁ、と、
漠然と思っていた。
その夜、カインは夕食をとりながら、
いつもどおり、父親と母親と団欒をした。
「カイン、お前はまだ知らないだろうが、この村の外にも広い世界があって、いろんな人々がおるのだ。」
と父親。
「いやですよ、あなた。カインはこれからもずっとこの村で、過ごしていくんですから。」
と母親。
父がいて、母がいて、親友がいて、
剣の師がいて、呪文の師もいる。
狭い村ながら、何ひとつ不自由の無い生活を送っていたカイン。
ただ、何のためにこういう環境に置かれていたのか、
そんなことは、カインは考えたことも無かった。
ただ、周りの期待に応え、ひたすらに修行に打ち込む日々であった。
この物語は、そんなカインの物語。
視点は、一旦このカインから離れ、バトランドという王宮へと移る。
カイン:レベル1、プレイ時間6分

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