告知から1年~夫という人・2~ | QOL ~Quality of Life~

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日々のいろいろ、仕事、乳がん。
でも、より良い人生のために。
毎日笑って、生きていこう。

1からの続き。



いまに至るまで、


夫と乳がんについての話はほとんどしていない。


病気に対する感情も、あまり見せていない。


何故だかは、自分でもよくわからない。


家の中では普通にしていたかった。


少しでも気を緩めると、


発狂してしまいそうにも思えて、


そんなことになったら、


家の中に自分の居場所がなくなるように思えたから。



あとから義母から聞いた。


「あいつは強い。本当に強い」


そして、恐い、とも。


可愛げがなかったのだろうな、と思う。


助けて!辛い!って、もし言えたら、


夫ももっと楽だっただろうに。


それでも、わたしがぽつりぽつりと話す、


経過や今後の治療方針を、


夫は的確に理解していた。


きっと、夫は夫なりに、


いろいろ調べたりしていたのだろうと思う。



お互い、感情を抑えたまま、


わたしの乳がん治療は、淡々と過ぎていった。


けれど、一度だけ、


夫が感情をあらわにしたことがあった。


まさかの抗がん剤治療となり、


TC1クール目を過ぎてしばらく。


脱毛がピークを迎えたとき。


日増しに抜け続ける髪に、もうどうしようもなくなり、


よし、今日やってしまおう!と、


バスルームで、2時間かけて抜けるだけ抜いた。


夫は娘の習い事に付き添い、


家にはわたしひとりだけだった。


2人が帰るまでに、抜けた髪を始末し掃除し、


9割ほどが抜けた頭に、ケアキャップをかぶった。


数日前から、帰宅するたび、


「大丈夫なのか」


自分の髪を指しながら、夫は脱毛のことを気にかけていた。


脱毛したら、帽子をかぶるね、


そう伝えていた通り、


ケアキャップ姿で、帰ってきた2人を玄関まで出迎えた。


「あー、ママお帽子なんだね!」


「そうだよ、今日からしばらくお帽子だよ」


「かわいいよ、キャハハ♪」


娘がなんだかはしゃいでいるおかげで、


照れくささも和らぎ、アハハなんて言っていた時、



「かっ!!!」



玄関から、声が飛んできた。


なに?


「か?!」


「か」ってなに?


振り向いたら、靴も脱がず、


まだ玄関に夫が立っていた。



「かっ、髪はまた生えてくるから!!!」



夫が叫んでいた。


自分がその時、なんて答えたか覚えていない。


でも、その光景は鮮明に覚えていて、


思い出すと、泣けてきてしまう。



よく他の方のブログで、


ご主人と足並みを揃え、


二人三脚で病気に立ち向かっている様子を読んだりする。


そんなダンナさんもいるんだなあと思ってきた。


いろんなカタチがあるんだな、と。


夫は、わたしの望んだカタチでの優しさは表してはくれなかった。


でも、1年経って、いまならわかる。


わたしは、夫という船の上で、


乳がんと闘ってきたんだな、と。


きっと、夫が望んでいることは、ひとつなのだろうと思う。


わたしが健康になり、


笑って過ごせる毎日なんだろうな。


そういう家に帰ってくることが、


夫の願いなのだろうな。



先週末、


「俺が出すから、居酒屋行こうぜ」


へえ、珍しい、はーい、行きますと、


家族3人、居酒屋の個室で夜ごはんになった。


飲み物を手に、


さぁ、何に乾杯しようと、わたしが言ったら、


「1年おつかれさま」、と夫。


検査なんともなくて、ゴニョゴニョゴニョと、続けて何か言っていた(笑)



あなたも。


おつかれさまでした。


1年、ありがとう。










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