1からの続き。
いまに至るまで、
夫と乳がんについての話はほとんどしていない。
病気に対する感情も、あまり見せていない。
何故だかは、自分でもよくわからない。
家の中では普通にしていたかった。
少しでも気を緩めると、
発狂してしまいそうにも思えて、
そんなことになったら、
家の中に自分の居場所がなくなるように思えたから。
あとから義母から聞いた。
「あいつは強い。本当に強い」
そして、恐い、とも。
可愛げがなかったのだろうな、と思う。
助けて!辛い!って、もし言えたら、
夫ももっと楽だっただろうに。
それでも、わたしがぽつりぽつりと話す、
経過や今後の治療方針を、
夫は的確に理解していた。
きっと、夫は夫なりに、
いろいろ調べたりしていたのだろうと思う。
お互い、感情を抑えたまま、
わたしの乳がん治療は、淡々と過ぎていった。
けれど、一度だけ、
夫が感情をあらわにしたことがあった。
まさかの抗がん剤治療となり、
TC1クール目を過ぎてしばらく。
脱毛がピークを迎えたとき。
日増しに抜け続ける髪に、もうどうしようもなくなり、
よし、今日やってしまおう!と、
バスルームで、2時間かけて抜けるだけ抜いた。
夫は娘の習い事に付き添い、
家にはわたしひとりだけだった。
2人が帰るまでに、抜けた髪を始末し掃除し、
9割ほどが抜けた頭に、ケアキャップをかぶった。
数日前から、帰宅するたび、
「大丈夫なのか」
自分の髪を指しながら、夫は脱毛のことを気にかけていた。
脱毛したら、帽子をかぶるね、
そう伝えていた通り、
ケアキャップ姿で、帰ってきた2人を玄関まで出迎えた。
「あー、ママお帽子なんだね!」
「そうだよ、今日からしばらくお帽子だよ」
「かわいいよ、キャハハ♪」
娘がなんだかはしゃいでいるおかげで、
照れくささも和らぎ、アハハなんて言っていた時、
「かっ!!!」
玄関から、声が飛んできた。
なに?
「か?!」
「か」ってなに?
振り向いたら、靴も脱がず、
まだ玄関に夫が立っていた。
「かっ、髪はまた生えてくるから!!!」
夫が叫んでいた。
自分がその時、なんて答えたか覚えていない。
でも、その光景は鮮明に覚えていて、
思い出すと、泣けてきてしまう。
よく他の方のブログで、
ご主人と足並みを揃え、
二人三脚で病気に立ち向かっている様子を読んだりする。
そんなダンナさんもいるんだなあと思ってきた。
いろんなカタチがあるんだな、と。
夫は、わたしの望んだカタチでの優しさは表してはくれなかった。
でも、1年経って、いまならわかる。
わたしは、夫という船の上で、
乳がんと闘ってきたんだな、と。
きっと、夫が望んでいることは、ひとつなのだろうと思う。
わたしが健康になり、
笑って過ごせる毎日なんだろうな。
そういう家に帰ってくることが、
夫の願いなのだろうな。
先週末、
「俺が出すから、居酒屋行こうぜ」
へえ、珍しい、はーい、行きますと、
家族3人、居酒屋の個室で夜ごはんになった。
飲み物を手に、
さぁ、何に乾杯しようと、わたしが言ったら、
「1年おつかれさま」、と夫。
検査なんともなくて、ゴニョゴニョゴニョと、続けて何か言っていた(笑)
あなたも。
おつかれさまでした。
1年、ありがとう。
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