久しぶりに一気に読めた本があります。
ご存じの方も多いと思いますが、私は活字が苦手です。
どんなに興味があることでも、たくさん読めることが稀です。
今夜読んだのは、「スタインウェイ戦争」。
調律師の髙木裕さんの、ピアノへのそして音楽にかける情熱を
感じました。
ご自身の職業のことを「職人」であると表現されています。
純粋に、ただ純粋に美しい音色を作りたいと願うだけでなく、
なんて真摯に、地道にその職務を全うしようとしたか。
音楽業界の裏側にも触れるこの一冊には、何が真実なのか
何を信じて音楽を奏でていくべきかを、考えさせられました。
私は調律師ではないけれど、一講師として音楽に携わる者と
して一体何ができるのか。
懐の深さと言いましょうか・・。
より深い音色を求めて日本を飛び出し学ぶ心意気や、
しがらみや媚びへつらいなどにこだわらない、その生き方。
堅実に誠実にピアノと向き合う姿勢は素晴らしいと思います。
損得を勘定に入れないと商売は成り立たないですけれど、
ピアノをホールに持ち込んでのコンサートを実現させたり、
ホロヴィッツの愛したピアノをカーネギーホールへ運んでの
レコーディングをしたり、
作曲家自身から教えを受け継ぐピアニストを招聘しての
レクチャーや録音をしたり…。
誰もやらなかったことを積極的にやる推進力、実行力。
実現力・・・とでも言いましょうか。
誰もやらなかった、ということに対しての同業者からの
陰湿&表立っての嫌がらせや妨害にもくじけず、
力強く実現させていく力に、言葉がありませんでした。
以前、「今のピアノでショパンは弾けない」、
「調律師、至高の音を作る」も読みましたが、
今回も読了後には何とも言えない気持ちになりました。
私は胸がすぐにいっぱいになってしまうタチなのかも
知れません(笑)。…特に自分の心に沁みるものに対しては。
昨年、タカギクラヴィアにサロンコンサートに行ったとき、
髙木さんにご挨拶させていただきました。(ずうずうしくも…)
この方があの髙木さんなんだと思うと不思議な気持ちが
しました。
とても気さくで明るくて…、ここまでの道のりはきっと平坦な
ものではなかったはずなのに、そんなことを感じさせない
雰囲気でピアノのことを(この時はフォルテピアノ)語って
おられました。
そんなことも思い返しながら、この本を読んで何か語れる
だろうかと考えていました。
けれど、知れば知るほど無口になる自分がいます。
それは良い演奏を聴いたときも同じですね。
語れないのです。
音楽への情熱を深く感じたとき、語るものはありません。
それでも、こういう人がいるんだという感動は伝えたいと
思うのです。
目立たないところで日々、音と真剣に向き合っている人がいる。
会社が大きくなることよりも、本物の音とは何か、
次世代に残したいものは何か、地道にひたむきに頑張っている。
そういう一途さを持った方に…私は憧れるのです。
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