全国でも強豪とされる聖栄高校CF部。

しかし、2年連続で黒珠学院に敗れVF甲子園への

出場を逃すこととなっていた。

今日は昇格試験の結果発表である。

 

「・・・・・・諸君、先日までの昇格試験ご苦労。

目を見張る活躍をした者もいれば

力を出し切れなかった者もいる。

君たちの出したファイトの結果を踏まえ、

伊弉諾二軍監督、吾平コーチと議論した結果

今から呼ぶ者が1軍昇格だ。」

 

(全力は尽くした・・・・・・結果は?)

 

「・・・・・・」

 

ポンッ

 

「え・・・・・・?」

 

「1軍昇格は大友ソウジュウロウモトチカ!

旋風マナ!長嶋シゲル!以上だ。

なお、現1軍である柳生ミチルは試験の結果を踏まえ

2軍降格とする。移動したのは4名のみだ。」

 

「よしっ・・・・・・」

 

「全戦全勝で通過してるってのはいいねー。」

 

「おめでとうございます、大友さん。」

 

「お互いに、な。」

 

「柳生。八雲。お前たちに残されたチャンスは2回。

4月の昇格試験で1軍に上がれなければ、

規定通り退部してもらう。覚悟をもって練習に励め。」

 

「・・・・・・はい。」

 

「はい・・・・・・」

 

「では、2軍メンバーは通常練習に入れ。

1軍メンバーはこれより新人戦に向けてミーティングだ。」

 

***

 

「・・・・・・」

 

「待ってたぜ。」

 

「ケイガ・・・・・・」

 

「あんたが上がってくるのは予想外だったわ。

でもまぁ、お互い頑張りましょ。」

 

「ああ。」

 

「では、新人戦へ向けてミーティングを始める。

新人戦は夏の大会に直接関係のあるものではないが、

3年生が抜けた新体制を調整する目的で開催される。

形式は団体戦ではなく個人トーナメントだ。

各校シングルで3名、タッグで2組まで参加できる。

各校が重点を置くのはタッグファイト。

新人戦という舞台を使ってタッグファイターを見極める。

どのような組み合わせなら良いかを模索するわけだな。」

 

「タッグファイターというのは非常に希少な戦力で

どんな高校もタッグファイターを欲しているんだよ。

それはうちだって例外じゃない。

タッグファイトでこちらが求める一定水準を満たしてくれれば

昇格試験の残留ラインも少しハードルが下がる。

例えば猫田君と上代君の2人はタッグでの戦いが評価されてるから

5戦中2勝すれば1軍残留になっていたんだ。」

 

「もちろん、全員がこの限りではないが

タッグファイトで成績を残した者はこちらとしても貴重な戦力だ。

県予選での猫田のようにシングルで戦ってもらうこともある分、

試験で全敗した者はさすがに引き留められないが

タッグファイトが強いというのは高く評価する。

さて、ここまでの説明でおおよそ察してもらえただろうが

今回のミーティングはそのタッグについて。

タッグファイトの出場メンバー2組を決めることだ。」

 

「・・・・・・」

 

「ちなみに今回はレギュラー争いとかはなしですか?」

 

「ああ。新人戦はあくまで力試しのようなものだ。

各校があらゆる画策をして臨むものであると同時に、

既に力量のあるファイターは情報漏えいの場となる。

例えばだが、この新人戦で武田の出番はない。

無駄に情報を流す必要もないからな。

また、それは瀬戸と真弓も同様だ。特にこの2人は

次期レギュラーとして世間からの注目はされているが

校外でのファイトが多くない分、狙い撃ちされやすい。

夏に向けて、勝利ではなく情報を引き出すように戦う学校もある。

そういったところとぶつかると厄介だからな。」

 

「つまり実力が確立されている2年生3人は欠場。

今回出場するのは1軍所属の1年と今回から1軍昇格した

長嶋先輩だけってことですか・・・・・・ピッタリ7人ですね。」

 

「そういうことだ。できることなら

タッグに臨むメンバーを定めてからシングルに出場する者を

決めたいところだが・・・・・・希望者はいるか?

タッグファイトで必要なのはデッキタイプや相性もさることながら

パートナーとの阿吽の呼吸だ。

優れたチームワークは高いパフォーマンスを生む。

こちらが指示したり余った面子でチームを組むというのは

極力避けたいところだからな。」

 

「もちろん、それぞれのファイト適性を

こちらも把握はしているから、決まらない場合は

お願いすることもあるんだけど・・・・・・」

 

「・・・・・・監督。」

 

「なんだ、大友。」

 

「俺が出ます。」

 

「え・・・・・・」

 

「ほう・・・・・・」

 

「俺がタッグファイトの部に出場します。」

 

「・・・・・・その意志は買わせてもらおう。

だがタッグはお前1人ではできん。お前と組むパートナーを」

 

「・・・・・・いますよ、パートナーなら。」

 

「・・・・・・何?」

 

「あいつです。」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・へぇ。」

 

「ファイトが想像できないね。」

 

「でも・・・・・・納得できる・・・・・・」

 

「面白い組み合わせね。」

 

「ホントに想像できないね・・・・・・どうなるのか。」

 

「・・・・・だが、悪くない組み合わせだ。」

 

「・・・・・・ふふっ。」

 

***

 

「大友、お前の連れが来たぜ。

特訓の内容を切り替える。」

 

「・・・・・・でも、なんでタッグの練習を?」

 

「タッグファイトができるようになれば

どの高校でも重宝される。タッグは練習もしにくいからな。

それは聖栄高校とて例外じゃねえはずだ。」

 

「・・・・・・便利屋になれ、ってことっすか?」

 

「・・・・・・ま、そうとってくれて構わん。

だが何戦か繰り返せば分かる。俺がタッグを練習させる意味がな。」

 

「・・・・・・」

 

***

 

「・・・・・・待たせたな。ケイガ!!」

 

「・・・・・・待ちわびたよ。モトチカ。」

 

「・・・・・・互いに、同意しているようだな。

ならば、決定だ。新人戦でタッグを組め。大友、前田!」

 

「はい!!」