東ベルリンから来た女 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう



監督・脚本 クリスティアン・ ペツォールト

脚本 ハルーン・ファロッキ

撮影 ハンス・フロム

編集 ベッティナ・ボーラー

音楽 ステファン・ウィル

出演 ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ライナー・ボック

2012年 ドイツ


ベルリンの壁崩壊以前の東ドイツが舞台で、

西ドイツの移住申請を拒否されて、

シュタージ(東ドイツ秘密警察)の監視下での生活を

余儀なくされた主人公の女医が、恋人の手引きで、

西側への脱出計画を図ると言うサスペンスな内容から、

身体の痛みを伴う血生臭い場面が用意された、

政治色の強い重苦しい作品ではないかと想像していたのですが、

密告されるのではないかと言う、周囲にいる人々への

猜疑心から人間不信に陥っている主人公が、

同僚の医師による愛の力によって心を解放していく姿や、

患者に対する献身と自己愛の狭間で揺れる葛藤を、

日常の風景の中で静かに描いているので、

どんな環境にいる人々にも共通する、人としてのプライドや

ヒューマニティを、自分自身の問題として問いかけられる作品で、

ラストシーンで、疲れ果てて沈黙する主人公から、饒舌な思いを

読み取った同僚の医師が零す至福に満ちた笑みが、

いつまでも心を捉えて離さない、人間賛歌の佳作です。




東ベルリンから来た女 [DVD]/ニーナ・ホス,ロナルト・ツェアフェルト,ライナー・ボック
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