舟を編む | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


監督 石井裕也

脚本 渡辺謙作

原作, 三浦しをん

音楽 渡邊崇

撮影 藤澤順一

編集 普嶋信一

出演 松田龍平、宮崎 あおい、オダギリジョー、黒木華、池脇千鶴、

    加藤剛、小林薫、渡辺美佐子、伊佐山ひろ子、八千草薫

2013年 日本



言葉の海。それは果てしなく広い。

辞書とは、その大海に浮かぶ一艘の舟。

人は辞書と言う舟で海を渡り、自分の気持ちを的確に表す言葉を探します。

それは唯一の言葉を見つける軌跡。誰かと繋がりたくて、

広大な海を渡ろうとする人たちに捧げる辞書。

(劇中の台詞から抜粋)


2012年本屋大賞を受賞した、三浦しをんの同名小説を映画化した本作は、

大学院で言語学を専攻していたことを買われ、不向きな営業部から

辞書出版部に転属する事になった、内向的で真面目な青年を主人公に、

新しい辞書編纂に、10年以上の歳月をかけて取り組んだ人々の悲喜交々を、

ユーモアと優しさで描いた、心温まる人間賛歌で、辞書に限らず、

自分の身の回りにある、普段何気なく使っている日用品が、愛おしく見えてくる作品です。


弱冠29歳とは思えない西村監督の、オーソドックスで静かな語り口は、

奇を衒った映像表現を競い合う現在の映画界で、逆に新鮮な味わいを醸し出していて、

これから映画の世界を目指す若者には、映像表現の基本を教えてくれる、

正に辞書の如き作品と言えるでしょう。

ネットやEメールなどデジタル化された事で、軽くなってしまった言葉を、

主人公が、鉛筆と消しゴムを使ったアナログ的作業で、意味のあるものに

作り上げていく過程は、間違った情報が氾濫して、コミュニケーション不全に

陥っている現代社会に、最も求めらている事で、リアルな人間関係を取り戻すために、

言葉と向き合う時間の大切さを、本作は教えてくれました。


こい【恋】


ある人を好きになってしまい、

寝ても覚めてもその人が頭から離れず、

他のことが手につかなくなり、

身悶えしたくなるような心の状態。


成就すれば、

天にものぼる気持ちになる。

(劇中テロップから抜粋)


さて、あなたは、恋の意味を説明できますか?


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