ハッシュパピー バスタブ島の少女 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本 ベン・ザイトリン

原作・脚本 ルーシー・アリバー

撮影 ベン・リチャードソン

編集 クロケット・ドゥーブ、 アフォンソ・ゴンサウヴェス

出演 クヮヴェンジャネ・ウォレス、ドワイト・ヘンリー - ウィンク

2012年 アメリカ


地球温暖化による海面上昇により、水没の危機が迫るバスタブ島で、

自然と共存して生きる少女ハッシュパピーの視点を通して、

環境破壊により世界の秩序を壊してきた人間の愚かさと生命の在り様を問うた作品で、

政府の干渉を拒否してコミューンを作り、野生に帰って生きる島の人々のリアルな日常と、

氷河期に氷の中に閉じ込められていた怪物オーロックが、温暖化によって蘇えり、

世界を破壊するためにやってくるというファンタジーを違和感なく融合させた、

マジック・リアリズムの手法によって、ネガティブになりがちな社会問題を、人間賛歌にまで

昇華させることに成功しています。

僅か180万ドルの予算で製作された本作は、16ミリカメラで撮影され、

1982年生まれの若手監督は劇映画未経験、主役の父娘は演技経験のない素人で、

ハリケーンカトリーナによって水没被害を経験したことのあるルイジアナ州住民の協力を

得て作られているので、全体的に荒っぽさが目立ちますが、プロの発想では作りえない、

まさにインディーズ映画としての、魅力を満載した自由奔放な映画で、老若男女を問わず

自分自身が、世界を構成しているピースのひとつであることに気付き、観終わった後に、

未来に向かって、強く生きて行こうと言う気持ちにさせてくれるはずです。


余談になりますが、未曾有のハリケーンに襲われて、壊滅したパスタブ島の惨状を見て、

原発事故の放射能汚染により、帰宅困難地域に指定された福島県浪江町他4町の姿が

ダブって見えた人は多いと思います。最大5兆円と試算され、いつ終わるか分からない

除染作業に対して、故郷を捨てて新たに作った街に移り住んでもらおうと言う意見が

ありますが、島から強制退去させられ、難民キャンプに移された、重い病を患っている

ハッシュパピーの父親のように、死を引き換えにしても、島に戻りたいと思う心の問題に対して、

答えを持っている人はいないのではないでしょうか。


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