ボクと空と麦畑 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら
監督・脚本 リン・ラムジー

撮影 アルウィン・カックラー

編集 ルチア・ズケッティ

音楽 レイチェル・ポートマン

出演 ウィリアム・イーディー、トミー・フラナガン、マンディー・マシューズ

1999年 イギリス


「少年は残酷な 弓を射る」で衝撃を受けた

女性監督リン・ラムジーの劇映画処女作を初鑑賞。


1970年代、不況に苦しむスコットランド・グラスゴーを舞台に

色を失くしたゴミ溜めのような街から抜け出したいと願う、

ガラスの様に繊細な心を持つ少年の目を通して描いた社会派作品。

原題は「ネズミ獲り」で、清掃業者のストによって、街に散乱して

腐臭を放つゴミに群がるネズミたちに、住民の姿を重ね合わせて

描いているので、ファンタジーな日本語タイトルに釣られて

鑑賞した人は、見たくないものを見せられた気分になるでしょう。


たまたま乗り合わせたバスの終点地にあった、建築中の家と

窓の外に広がる麦畑にオアシスを見だした少年ですが、

絶望の果てに、友人を誤って溺死させた水路に入水して、

意識が薄れていく中、家族とともに家財を抱えて、

麦畑の中を新居に向かって移動していく幻影を見る場面や、

主人公の近所に住む知恵遅れの少年が、

誕生日にもらった白いネズミを風船に結わえて大空へ放つと、

やがて月まで辿り着くが、その場所にも大量のネズミたちが所狭しと

犇めいている幻想場面など、最後まで気分の晴れない作品ですが、

こう言う悲惨な世界を描く健全さを持つイギリス人の反骨精神を、

臭いものに蓋をされ、偽りの世界を見せられて満足している今の日本人は、

見習わなくてならないと思いました。



ボクと空と麦畑 [DVD]/ウィリアム・イーディ,トミー・フラナガン,マンディー・マシューズ

¥3,990

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