この夏公開のハリウッドSF最新作3本 ヒーローを必要とするアメリカ | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

半世紀前に日本でもTV放送されて好評を博し、その後何度も映画化された「スーパーマン」

「スタートレック」に、日本のロボットアニメと怪獣映画を合体させた作品を、新世代のクリエイターが、

最新のテクノロジーを駆使して換骨奪胎した、ハリウッド最新SF大作3本を続けて鑑賞しました。

3作品共に、バトルによる建造物の破壊を見世物にしていますが、最近のハリウッドSF映画は、

建物崩壊場面がお約束事になっていて、さらに信頼や絆の大切さと言った、人間関係の回復を

物語の軸として描いている点を見ると、アメリカ社会が、未だに911テロのトラウマから抜け出せずに、

もがき苦しんでいる様が窺えます。


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


「パシフィックリム」は、「パンズ・ラビリンス」「 ヘルボーイ ゴールデンアーミー」の

ギレルモ・デル・トロが監督しているので、3作品の中で最も期待していましたが、

何時もの毒やユーモアが全く見られず、あまりにも常識的なオタク映画に

仕上がっていたので、少しがっかりしました。

ディテールに至るまで緻密に作られた巨大な人間型ロボットに比べて、

KAIJU(怪獣)と名づけられたモンスターの造形が今一つで、菊地凜子が主役を務めるぐらい

キャストも地味ですが、子供騙しではない、大人の鑑賞にも充分に堪えられる、

迫力ある映像は手抜きが無く、A級の怪獣映画に仕上がっています。

本作の様なイマジネーション溢れる世界的規模の作品が、本家日本で製作されないのは、

SFXの技術力以上に、ソフト力に原因があることは、本作を観れば明らかだと思います。


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


スーパーマン”の新作「マン・オブ・スティール」はゾッド将軍、「スター・トレック

イントゥ・ダークネス」はカーンと、お馴染みの敵役が登場しますが、過去の作品と違うのは、

彼らを狂気に走らせる原因になった絶対悪を別に存在させていることで、両作品共、

物語に深みを増すことに成功しています。


(ネタバレあり)

「マン・オブ・スティール」は、「ダークナイト」「インセプション」のクリストファー・ノーラン製作、

「300」「ウォッチメン」のザック・スナイダー監督が手掛けただけあって、

原作のコミック色が薄めらたリアルな作品に仕上がっていて、賛否が分かれるところですが、

突出した力を行使することで、新たな悲劇を生み出してしまうジレンマを常に抱える、

スーパーマンの人間的苦悩を描くことで、世界の秩序を保とうとして、反感を買って

孤立しているアメリカと言う国の現状を比喩しているのは明らかで、スーパーマンが、

敵役のゾッド将軍の首を捻って止めを刺した後に泣き叫ぶ場面に、製作者の思いが

集約されています。


エイミー・アダムス、マイケル・シャノン、ケビン・コストナー、ラッセル・クロウ、

ダイアン・レインと、ドラマとしての厚みを増すために集められた役者陣が豪華で、

アメリカだけで280億ドルを超えるヒット作になったのが頷ける作品です。


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


活劇の面白さで言うと、サスペンスなストーリーに、スピード感溢れるアクションが展開される

「スター・トレック イントゥ・ダークネス」が一番でしょう。

設定の粗さを隠すために、観客に考える暇を与えない強引な描写が気になりましたが、

それを補って余りある、若いスタッフ、キャストの我武者羅なエネルギーに、

終始圧倒されっぱなしでした。

本作も、「マン・オブ・スティール」同様に、無感情なミスタースポックが、クライマックスで見せる

涙と怒りの中に、アメリカの暗い影を見せていますが、良くも悪くもアメリカには今、

ヒーローが必要なようです。



映画(全般) ブログランキングへ