ムーンライズ・キングダム | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本 ウェス・アンダーソン

音楽 アレクサンドル・デスプラ

撮影 ロバート・デヴィッド・イェーマン

編集 アンドリュー・ワイスブラム

出演 ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード

    ブルース・ウィルス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、

    フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、

    ジェイソン・シュワルツマン、ハーヴェイ・カイテル、ボブ・バラバン

2012年 アメリカ

 

 

1965年、舗装路がなく、松や楓が生い茂る森と島を縦横に流れる多くの川で成り立つ、

全長25キロの小さな半島を舞台に、ボーイスカウト仲間から虐めを受けている

情緒障害を持つ孤児の少年と、暴力的な性格で、学校で停学処分を受けたこともある

ファンタジー本好きの少女が意気投合して、古代インディアンのルートを辿って、

二人だけの王国ムーンライズ・キングダムを目指して駆落ちする。

「愛しているから一緒にいたいだけ。どこが悪いの。」と劇中で少女が語るように、

アラン・パーカー脚本の『小さな恋のメロディ』からヒントを得た初恋の物語は、

二人の逃避行を阻止するために、弁護士を職業とする厳格で口うるさい少女の両親

(ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド)、独身で心寂しい島唯一の中年保安官

(ブルース・ウィルス)、指揮能力の無いボーイスカウトの隊長(エドワード・ノートン)、

福祉局の冷徹な女(ティルダ・スウィントン)と、社会のルールそのものであるが、

人間の弱さを隠し持った不器用な登場人物たちが追跡を開始する事で起こる騒動を通して、

大人たちが失ってしまったイノセントワールドを浮き彫りにして行きます。

 

シンメントリーな画面構成に無駄のない編集、そして音楽の使い方の上手さ等

スタンリー・キューブリックの映画手法を彷彿とさせますが、ノーマン・ロックウェルの描く

イラストに影響されたという、ノスタルジー漂う暖色の風景と困り顔をした登場人物たちの軽みが、

ヒューマンなユーモアとなって、ウェス・アンダーソン監督独自の世界を構築しています。

さらに特筆すべきは、ハリウッドを代表する大物俳優たちの変奏を合体させたオーケストラの

如きアンサンブル演技によって、独りよがりのアートに陥りやすいインディーズ系作品を、

エンタティメントの面白さにまで導く事に成功させていることで、アンダーソン監督は本作で、

唯一無二のスタイルを確立させたと言っても過言ではないでしょう。

 

 

 

ムーンライズ・キングダム [Blu-ray]/ブルース・ウィリス,エドワード・ノートン,ビル・マーレイ

 

 

 

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