ライフ・オブ・パイ／トラと漂流した227日

監督　アン・リー

原作　ヤン・マーテル

脚本　デヴィッド・マギー

撮影　クラウディオ・ミランダ

編集　ティモシー・スクワイアズ

出演　スラージ・シャルマ、イルファーン・カーン、アーユッシュ・タンドン

　　　　レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデュー

２０１２年　アメリカ

海難事故にあって、トラ（他に後足を骨折したシマウマ、オラウータン、ハイエナ）が

紛れ込んだライフボードで漂流する事になった少年のサバイバルを描いた作品ですが、

生と死の境界で、宗教も哲学も意味を成さなくなった極限状態に陥った人間の、

理性と獣性（少年の化身であるトラ）の戦いを通して、ペルソナに隠された人間の本性に

迫った奥深い内容で、ブッカー賞を受賞した原作本は、アメリカでは学校の教材に

採用されているほど、議論の対象にされています。

（ネタばれあり）

救助された後の少年の証言で、トラとの漂流話が、忌まわしい真実を隠すための

作り話であるという事を観客は最後に知ることになり、海難事故に遭遇するまでの、

主人公の生い立ちや環境、貨物船内のエピソードを描いた場面に、

伏線が張り巡らされていた事に気付いて、「シックスセンス」のように多くのリピーター客を

生みました。

小説では、この導入部が全体の半分を占めていますが、映像化するに際して、

見せ場のサバイバルシーンを邪魔しないように、非常にコンパクトに纏められています。

映画化が困難と言われた、奇想天外なストーリーを可能にした視覚効果ですが、

トラの映像が９０％CGで作られていると知って、この技術を極めれば、

他界した過去の大スターを蘇らせて、ブラッド・ピットやジョニー・デップ等

現在のスターと夢の競演が可能になるのではないでしょうか。

（参照）

父親が経営していた動物園で飼われていた、リチャード・パーカーと名付けられたトラが、

ボートに紛れ込んでいたのですが、このリチャード・パーカーは、１９世紀に実際にあった、

ミニョネット号遭難事故で、救命艇で脱出した４名の乗組員のひとりで、飢えのために

衰弱したために殺害されて、他の３人の食料にされた人物として知られています。

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定) [Bl.../スラージ・シャルマ,イルファン・カーン,アディル・フセイン: ￥4,190; Amazon.co.jp

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら