再会の食卓 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本 ワン・チュアンアン

脚本 ナ・ジン

出演  ルサ・ルー, リン・フォン, シュー・ ツァイゲン, モニカ・モー

2010年 中国


1949年、中国人民解放軍が中華民国国軍に勝利し、
毛沢東率いる中国共産党独裁の中華人民共和国が樹立、
中華民国国軍は本土を追われて台湾に退却したために、
数十万世帯に及ぶ兵士が、家族と生き別れることになった。

本作は、台湾当局が退役軍人の本土帰省を許可したのを
切っ掛けに、40年間音信不通だった妻ユィアー(玉娥)と息子に
会うために、上海に帰って来た元夫イェンション(燕生)を、
複雑な気持ちで迎えるユィアー、新しい夫シャンミン(善民)と
その家族たちの、食卓を囲んで交わされる会話に込められた、
それぞれの思いを通して、国によって翻弄される市民の悲哀が
浮き彫りにされて行きます。
国民軍兵士が残した妻子と知りながら、 周囲の反対を押し切って
嫁に迎えた事で、周囲からの批判に晒されて人生を台無しに
してしまったシャンミン、生きるために自分の幸せを犠牲にして、
新しい夫と家族のために苦労したユィアー、元妻との失われた
40年を取り戻したいイェンションが、食卓で本音をぶつけ合い、
やがて理解し合ってひとつになり、酒を飲み交わし歌を口ずさむ場面は、
引き裂かれた中国に対する、修復への想いが込められていて感動的です。

再開発によって、シャンミンとの住み慣れた家から立ち退いて、
高層マンションに転居することになったユィアーが、
「開発業者は上海人を全員、マンションに入れる気よ。」と嘆くように、
近代化政策によって招いた核家族化によって、
昔のような、家族全員が囲んだ賑やかな食卓がなくなってしまった現状が、
新たな家族の崩壊の始まりとして、ラストシーンで描かれていますが、
中国は、すでに家族が崩壊してしまった日本の姿を教訓にして、
人間にとって大切なものは何かを考え直してもらいたいものです。


人気ブログランキングへ