1ヶ月ほど前の9月28日に精神科医の斎藤環(さいとうたまき) 氏が毎日新聞に「ワーキングプア」について寄稿しています。また10月5日のNHK教育の「視点・論点 」に「格差」について述べています。時期が近いこともあって内容的には共通するところも多かったです。


これから公務員を目指す人にとっても「ワーキング プア 」は切実な問題となりえるかもしれません。

「卒業後も公務員試験浪人をして、結局何年やっても不合格だった場合、その後どうするのか?」と言う問題です。

実家の家業を継ぐ・親戚関係でコネがあると言った人は良いのかもしれませんが、そう言ったものが無い場合はワーキングプア状態に陥る可能性については知っておくべきでしょう。


ワーキングプアとは簡単に言えば「働いても生活がままならないほどの収入しか得られない」状態(人)のこと。

都市と地方などの格差の問題もあるので地方に住む個人事業主の高齢者などもいるけど、よくワーキングプアで取り上げられるのはフリーター・パート・派遣・請負などの比較的若い非正規社員です。


まず認識しなければいけないのは彼らは仕事をしてないニートではないと言うことです。

きちんと働いています.

そして何より重要なの彼らには「そう言った非正規社員の仕事しかない」と言うことです。


斎藤氏が寄稿した9月30日の毎日新聞。

そこに「パラサイトシングル」「希望格差社会」でおなじみの山田昌弘氏 の意見を紹介しています。

山田氏によると彼らを生み出した格差社会は小泉内閣以前から進行していたニューエコノミーの産物であり、その結果、労働性の高い仕事(正社員)と低い仕事(非正規社員=パート・派遣など)との間に以降困難な分断を生じたとの事です。


IT化によりコンピューターにひたすら入力する仕事も出てきました。こういった仕事も必要なわけです。

大変な仕事だと思います。しかしこういった仕事は大変ではあるものの比較的誰でもできるわけです。

そうなるとこう言った仕事には高い給料を払いません。代替性がきくからです。

「嫌ならどうぞ、おやめください。他はいくらでもいますよ。」と言う世界です。

こう言った労働性の低い仕事は低賃金になります。


他方、公務員の仕事のように「通達をきちんと読み理解して仕事をする」とか「政策・法律・通達・法改正の趣旨を理解して仕事をする」とか「審査請求に対処する」と言ったことはすぐに誰でもできるわけではありません。

民間でも営業とかプレゼンとか外部との訴訟担当とかも誰でもできるわけではありません。

こう言った仕事には生産性の高い労働として一定の所得が確保できます。代替性がきかないからです。


問題なのは1回学校を卒業して非正規社員の仕事をしてワーキングプア状態になるとそこから抜け出すのは困難であると言うことです。

非正規社員の仕事は大変ですが企業から見れば代替性のきく仕事です。

その経験はキャリアとして扱われません。

そうなるとそこから中途採用で正社員として働くのが本当に難しいと言うことです。

今の企業のスタンスは「新卒は一から育てます。既卒は経験者で即戦力の人しかいりません。教育や研修が必要な人はいりません」と言うものです。


私は卒業後、正社員・正規職員で働かなかったことの最大のデメリットは「経験する機会をロスしている」ことだと思います。

公務員と言えでも大きな組織で実際に働くと言うことは人間関係などを含めて経験になります。

しかしそう言った経験が無いというのは採用する側にとっては「使いづらい」と感じるのだと思います。だから既卒の正規社員未経験者は採用しないという企業のスタンスがあります。

そうなると非


非正規社員で働く→キャリア不足と判断され正規社員の仕事が無い→やむを得ず非正規社員として働く→転職しようとしたがキャリア不足と判断され正規社員の仕事が無い→やむを得ず非正規社員として働く→・・・と言うようにワーキングプアから抜け出せない状態に陥る可能性が高いです


それは酷だということで安倍新政権は「再チャレンジ」の一環として新卒一括採用の改善を提言していますが、うまくいくは未知数です。

これだけ世の中の流れが速いと企業側が「そんな奴に教育・研修をしている暇はない」と言うことで新卒一括採用は変わらない可能性もあります。


これが現実です。そう言った現実を踏まえて、今後どのような戦術で就職活動をするかお考えください。