ツァイ監督は、椅子にゆったりと座って、終始リラックスした様子でした。なんでも来いという感じのあの落ち着き。野上照代さんはツァイ・ミンリャン監督の作品を初期からサポートしてお

られたそうです。2人の俳優が立ちつくすシーンに重要なモチーフとして使われているのが、山河を描いた壁画でそれについて話してくれました。以下コメント。「あそこで使われた壁画は、

あるアーティストが描いたものです。1892年にあるイギリス人が台湾南部の先住民の村で撮った古い写真を基にして描いたんです。いわば台湾の原風景で、この壁画はロケハンをしている

時に偶然見つけました。壁画があるのは、廃墟となった建物の壁です。台湾のかつての風景が、今は、セメントで固められてそんな場所にあるという不条理をあらわしました。おそらく多くの

人があの壁画の風景にあこがれを持つでしょう。それは、かつては確かに存在したけれど今はあるかどうかもわからない大自然です。これだけ近代化された社会で、人間は更に何を求めていく

のか、という思いが湧きました。でも、観てくれた人それぞれがご自分の解釈で映画を観てくださればいいと思います。私は映画を20年間撮ってきましたが、リ・カンションという役者には

感動しました。みなさんがこの映画で見つけるのも、リ・カンションという素晴らしい役者ただ一人です。」つまり、20年かけて専門性を身に付けた人が辞めてしまうんですね。(つづく)

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