「地方の時代」映像祭事務局のイベントを見てきました。「がんばれ!小さな映画館」がテーマです。上映されたのは、朝日放送の番組「映画館がない街なんて」と、名古屋テレビ「シネマの叫び-コロナその先へ」。ほか1本です。コロナ禍後、多くのミニシアターが経営難に陥っていますが、支える制度や体制は脆弱だといいます。今後、どんな風に日本のミニシアターは変化していくのか。答えはまだ出ていません。

 

上映された番組の1本「映画館がない街なんて」では、兵庫県豊岡市にある豊岡劇場の、休館から劇場再開までのプロセスを取材しています。支配人の田中亜衣子さんを中心に、市民ボランティア、大学や大学院の協力、市民の寄付によって劇場再開する様子に密着しました。劇場再開の目玉作品は「THE FIRST SLAM DUNK」(東映)です。ホームページによると豊岡劇場は、現在ボランティア21人。個人サポーター592人。企業サポーター7社。上映後のトークでは田中さんが、劇場の前列の椅子を引き抜いて、空きスペースを作り、イベントに使用していることなどを話されました。

 

「シネマの叫び-コロナその先へ」では、島根県益田市の小野沢シネマの挑戦や、名古屋のシネマスコーレに密着しました。両方の番組に是枝裕和監督と深田晃司監督が出演していて、是枝氏は「市場原理に任せておくと、ミニシアターは減っていく。どんなサポートが可能か考えなければいけない」深田氏は「助成制度を整えなければならない」とコメント。名古屋テレビの村瀬史憲プロデューサーや、〝映画宣伝おばちゃんこ

 

と松井寛子さんもスピーカーとして登壇されました。松井さんの「今、映画がたくさんあるので、1本1本の印象が薄くなってるんじゃないか」という意見は当たっていると思います。コロナ禍後、二極化(莫大な興行収入を上げる作品とその逆の作品との開き・落差)が進んでいる以上、入場料収入だけに頼らなくてもよい構造を作り上げる必要がありそうです。これは、何も映画の分野だけに限ったことではありません。演劇、音楽、文学、美術にも共通する課題です。日本のどこに住んでいるかや、性別や収入に関係なく、シャンタル・アケルマンの特集上映に接することも出来て「THE FIRST SLAM DUNK」の上映館にも入ることが出来るというのが理想です。文化の民主化、というと、ちょっとキザですが。2023年6月8日、メイシアターにて。