「敷地利用権」は「専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利」と定義される
(区分法2条6項)
 通常は、土地の所有権の共有であるが、賃借権・地上権の順共有の場合もある
(1)分離処分の禁止
 ①原則・・敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、
      専有部分と敷地利用権を分離して処分することができない
 ②例外・・ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない
      (区分法22条1項)
 専有部分と敷地利用権は、不可分であり、原則的に分離して処分できない
 【分離処分できる場合】
 共用部分・・・法律(区分法)に別段の定めがある場合
 敷地利用権・・規約に別段の定めがある場合

(2)敷地利用権の持分の割合
 専有部分が譲渡されたときに、敷地利用権の持分も譲渡されることになる。
 ①原則・・分離処分が禁じられている場合において、区分所有者が2個以上の専有部分
      を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、共用部分の持分の割合
      (専有部分の床面積の割合)
 ②例外・・ただし、規約で異なる割合を定めたときは、その割合による(区分法22条2項)
 敷地利用権の持分割合は分譲契約により定まるが、分譲契約に定めがなかった場合は平等と
 推定される(民法250条)
 注意1)分離処分の禁止・敷地利用権の持分敷地利用権の持分の割合に関する規定は、建物の
     専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合
     に準用する(区分法(22条3項))
     分譲業者がマンション完成後引き渡し前に単独でマンションを所有する場合にも分離処分
     禁止などの適用があるということ

(3)分離処分無効の主張の制限
 ①原則・・分離処分禁止の規定に反する処分については、その無効を善意の相手方に主張
できない
 ②例外・・ただし、分離処分禁止を登記した後にはこの限りでない(区分法23条)
表示の登記がされると原則として分離処分が禁止される

(4)民法255条の適用例外
 民法255条「共有者の1人が。その持分を放棄または相続人なくして死亡したときは
 その持分は他の共有者に帰属する。
 民法239条「無主の不動産は、国庫の所有に属す」
 ①分離処分が禁止されている場合には、民法255条の規定は、敷地利用権には適用しない
 区分所有者が相続人なくして死亡したときは、特別縁故者にその所有権が帰属し、特別縁故者
 がいないときに国のものとなる






1. 共用部分の共有
 共同所有とは、1つの者について2人以上が所有権をもっているということ。
 ①原則・・共有部分は、区分所有者全員の共有とする
 ②例外・・ただし、一部共有部分は、これを共有すべき区分所有者の共有とする
 ③この規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。この場合も、管理者の
  管理所有とする場合を除いて、区分所有者以外の者を共有部分の所有者とする
  ことはできない(区分法11条)

一部共有部分であるか否かは、当該共用部分の客観的性質により定まるのであり、
 規約の定めによるのではない
 管理所有(登記しない)の場合を除いて、区分所有者以外の者を所有者とすることは
 できない。

 注意1)民法177条(不動産部兼の対抗要件は登記)の規定は、共用部分には適用しない
     (区分法11条3項)これは、共有部分の物件変動に関しては、専有部分の登記が
     あれば、共有部分についても第三者に対抗できるということである。

2. 共有部分の使用権
 ①各共有者は、共有部分をその用方に従って使用することができる(区分法13条)
 民法の規定で、「共有者は、共有物の全部について持分に応じて使用することができる」
 としているのを修正したもの。持分に関係なく用方に従って使用できることになる。
 特に法定共有部分については、規定によっても、その用方に従って使用を禁止することは
 できない。
 ②専用使用権による制限・・ベランダをその専有部分を有する区分所有者のみが使用
  できる等の場合。この場合は、共有部分であっても、他の区分所有者は使用できない。
  また、専用使用権を区分所有者以外の第三者に与える旨の規約も有効である(屋上に
  看板を設置するなど)

3. 共用部分の持分の割合
 ①共有者の持分は、その専有部分の床面積の割合による
 ②専有部分の床面積は、壁その他の区画にの内側線で囲まれた部分の水平投影面積による
 ③これらの規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない
  (区分法14条1項、3項、4項)
 専有部分の床面積は壁の内側線で囲まれた部分の水平投影面積で測る。これは不動産登記法
 に合致させたものである。不動産登記法は、専有部分の床面積だけは内のりで測り、その他に
 関しては壁芯で測るという定めをしている。
 規約により持分の割合などを定めることができる。
 注意1)一部共有部分で床面積を有するものがあるときは、その一部共有部分の床面積は
     、これを共有すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、
     それぞれの区分所有者の専有部分に算入する(区分法14条2項)

4. 共有部分の持分の処分
 ①原則・・共用部分の持分は、その有する専有部分の処分に従う。したがって、共有者は
  その有する専有部分と分離して持分を処分することはできない。
 ②例外・・ただし、区分所有法に別段の定めがあるときはこの限りではない。

5. 共有部分の管理
 (1)共有部分の管理
 共有部分の管理(広義)とは、共有部分の保存行為・狭義の管理行為(利用・改良行為)
 変更行為を含む広い意味で用いられている。
 ①原則・・共有部分の管理に関する事項(狭義)は、集会の決議で決する。
 ②例外・・ただし、保存行為は各共有者がすることができる
 ③以上に関しては、規約で別段の定めをすることができる(区分法18条)
 「集会の決議は、過半数で足りる。
 「保存行為」とはm共有部分の滅失毀損を防止して、現状を保つ行為のこと(雨漏りの修繕
  など)。保存行為は、それをしないとマンションの価値が下がるので、各区分所有者(共
  有者)が単独でできる
 注意1)共有部分の管理(保存行為を除く)が、特定の専有部分の使用に特別の影響を及ぼす
     場合は、その専有部分の所有者の承認を得なければならない(区分法18条3項)
 注意2)共有部分に関して損害保険契約をすることは、共有部分の管理に関する事項とみなす
     (区分法18条4項)
 (2)一部共有部分の管理
 ①原則・・一部共用部分を共用すべき区分所有者が管理
 ②例外・・1)一部共用部分の管理が、区分所有者全員の利害に関する場合
      2)規約で一部共用部分を区分所有者全員で管理する旨定めた場合(ただし、一部
        区分所有者の4分の1またはその議決権の4分の1を超える者が反対したときは
        規約で定め得ない)
      は区分所有者全員で管理する
 一部共有部分の管理事項のうち、ある事項(例えば修繕)は全員で行い、他の事項(例えば
 清掃)は当該一部区分所有者のみで行う旨を規約で定めることもできる。
 (3)共用部分の変更
 ①重大変更・・共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)
        は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する
 ②区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる
 ③共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは専有部分の所有者の承諾を
  得なければならない
 ④警備変更・・その形状または効用の著しい変更を伴わないものは、集会の普通決議で決する
 過半数まで減ずることができるのは区分所有者の数だけ
 「特別の影響」とは、専有部分の所有者が受忍すべき程度を超える不利益を受ける場合
 軽微変更・・「給・配水管の交換、増設」「光ファイバーケーブルの設置」「エレベーター
 昇降機の交換」
 重大変更・・「階段室をエレベーター室に変更」「集会室を廃しして賃貸店舗に転用」
 「敷地の一部を駐車場として賃貸する」
 尚、共用部分や敷地の処分行為(共用部分を区画して専有部分とする敷地の一部を売却する
 など)は民法の規定が適用され、共有者全員の同意が必要

6. 共用部分の負担および利益収取
 共用部分の管理には費用がかかるし、場合によっては利益をもたらすこともある
 区分所有法では
 各共有者は、規約に別段の定めがない限り、その持分に応じて、共用部分の負担に任じ
 共用部分から生じる利益を収取する と定める
(負担に応じ→管理費などの支払い)
 注意1)建物の敷地または共用部分以外の附属施設が区分所有者の共有に属する場合は、
     共用部分に関する規定((区分法17~19条)を準用する(区分法21条)

7. 共用部分の管理所有
 「管理所有」とはマンションの共用部分の管理を行うため、便宜的に外見だけの所有権
  を与えるもの。
 ①規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分は
  これを共用すべき区分所有者)のために共用部分を管理する義務を負う
 ②この場合には、区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる
 ③管理所有者は、共用部分の重大変更をすることができない(区分法20条)
 注意1)管理所有者は管理所有権の登記をすることはできない
 注意2)管理所有は共用部分に関してであり、敷地については、管理所有の対象とならない
 注意3)管理者も、管理所有者となることができ、この場合は、区分所有者以外の管理者も
     管理所有者となれる(区分法27条 11条2項)

 



  



5. 区分所有者の団体(管理組合)
① 区分所有者は、全員で、建物ならびにその敷地および付属施設の管理を行うための団体
  (管理組合)を構成する
② 管理組合は、区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、管理者を置く
  ことができる(区分法3条)
管理を行うための団体(管理組合など)への加入は任意ではなく、区分所有者になったときに
当然管理組合に加入留守ことを示す
管理組合は法人化しない限りは完全な権利能力はない
注意1)管理組合が「権利能力のない社団」と認められれば、登記ができないことを
    除けば、管理組合「法人」と同様に扱われる。民事訴訟の原告・被告になることも
    管理組合の名義での預金も可能である
③ 一部の区分所有者のみに供されることが明らかな共用部分(一部共用部分)を、それらの
  共用者が管理するときは、その区分所有者は、全員で管理組合を構成し、集会を開き
  規約を定め、管理者を置くことができる

6. 区分所有者の権利義務
① 区分所有者じゃ、建物の保存に有害な行為その他建物管理または使用に関し、
  区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない
② 区分所有者以外の専有部分の占有者も同様である
長期にわたる高額な管理費などの滞納行為は「共同の利益に反する行為」にあたる
「共同の利益に反する行為の禁止」に違反する場合は、義務違反者に対する差し止め
使用禁止・競売請求という裁判上の請求権を認めている(区分法57,58,59条)
注意1)区分所有者は、その専有部分または共用部分を保存し、または改良するため必要
   な範囲において、他の区分所有者の専有部分または事故の所有に属さない
   共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者
   が損害を受けた時は、その償金を支払わなければならない(区分法6条2項)

注意2)専有部分の占有者には不法占拠者も含まれる。たとえ不法に専有している者でも、
   共同の利益に反する行為をしてはならない。


7. 区分所有者などの先取特権
① 区分所有者は、共用部分、建物の敷地もしくは共用部分以外の建物の付属施設につき
  他の区分所有者に対して有する債権、または規約もしくは集会の決議に基づき他の
  区分所有者に対して有するについて、債務者の区分所有権および建物に備え付けられた
  動産の上に先取特権を有する
② 管理者または管理組合法人がその職務または業務を行うにつき区分所有者に対して
  有する債権についても、同様である
注意1)先取特権の順位および効力は、共益費用の先取特権とみなす(区分法7条2項)
   すなわち、特別の先取特権には劣後するた、一般の先取り特権の中では優先することに
   なる(民法239条)
注意2)7条1項の債権は、債務者である区分所有権の特定承継人(マンションを買った人)
   に対しても行うことができる(区分法8条)
管理に関する債権は、債務者の一般承継人(債務者の相続人)に対しては当然行うことが
できるのであるが、債権者(管理組合など)の保護を図るため、債務者の特定継承人に対して
も追及できることとしたのでおる。特定承継人の責任は無過失責任である

8, 建物の設置または保存の瑕疵に関する推定
① 建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときには、その瑕疵
  は、共用部分の設置または保存にあるものと推定する(区分法9条)
これにより、被害者は区分所有者全員に損害賠償請求できることになり、その立場が保護
される。本条は、あくまで「推定」されるに過ぎないので、区分所有者の側で反対の証拠を
持ち出して専有部分に瑕疵があったことを証明することはできる

9. 区分所有権売渡請求権
① 敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を
  有する者は、その区分所有者に対し区分所有権を時価で売り渡すべきことを証明する
区分所有者がマンションの土地に関する権利を失うことが考えられる。その場合、土地などで
競売が発生してしまうと他の区分所有者に損害が発生することも推測されるため、管理組合が
区分所有者に対して所有権の買い取りを請求することができる