企業の信用力(前編) | 四十にして立つ ~1,000億円企業への道~

四十にして立つ ~1,000億円企業への道~

40歳を前に突然起業しようと思い立った現役社長が、実際の出来事を通して、企業経営の楽しさや苦しさを発信中!!
「10年後に1,000億円」を公言して起業した僕が、いかにしてその目標を達成したかを描くリアル・サクセスストーリー

起業したばかりの会社って信用がないことがよくわかりました!


《注意!》今回の話は、起業直後の2013年5月頃の話です。

正式に会社の登記が完了したので、やるべきことが一つあった。

それは、銀行口座をつくること
僕個人の口座ではなく、トランスパートナーズの法人口座をつくることが必要だった。

法人口座がないと、当社への支払いができない。
売上を上げても、入金できないということになってしまう。
それは、ものすごく困る。

だから、起業してすぐに銀行に法人口座をつくりに行くことにした。


では、どういった銀行に口座をつくればいいのか?

銀行には、いわゆるメガバンクと言われる都市銀行、
地銀(地方銀行)、信用金庫とさまざまある。

僕の仕事は、信用が第一だ。
しっかりとした会社だから、紹介する会社も大丈夫、と思ってもらわなければならない。

だから、僕はメガバンクに口座をつくることにした。
メガバンクの口座があるということが、会社の信用力にプラスになると考えたからだ。


では、どのメガバンクにするか?

僕は、新入社員の頃からずっと個人口座を持っている某メガバンクにすることにした。
長年のお付き合いもあるから、なんとなく親しみを持っていた。


では、どうやったら、法人の銀行口座はつくれるのか?

当然ではあるが、それまで法人の口座をつくったことなどない。
全く分からかった僕は最寄りのメガバンクの支店に行って聞くことにした。

法人用の口座開設用の窓口があったので、そこでどんなことが必要なのかを教えてもらった。
法人の口座を開設するためには、会社の登記簿謄本や会社概要等、結構な量の書類が必要だということが分かった。

必要な書類をまとめ合たリストをもらったので、
それに従い、必要な書類をそろえた。
ただし、たくさんの資料を造ったり、集めるのは大変だ
だから僕は、必要最低限の書類だけを提出し、
万が一足りないものがあったら、必要に応じて追加で提出すればいいと思っていた。

数日後、僕は必要な書類を持って、再度メガバンクを訪れた。
窓口の担当は、そんなに年齢の高くない女性だった。

僕は、書類をその方に渡すと、窓口の女性から僕の会社の内容を簡単に説明をした。
その窓口の方からは大した質問もなく、手続きは終わった。
追加の書類を要求されることもなかった。

最後に窓口の方から事務的にこう言われた。

「口座開設の審査には2週間ほどかかります。
 2週間以内にこちらから連絡します。

 なお、審査の結果、口座を開設できない場合があることをご了承ください」


・・・口座を開設できない場合がある?

気になる言葉だった。
確かに「振り込め詐欺」や口座を悪用する会社が増えたため、
口座開設が以前より厳しくなった、というのはうっすら聞いていた。

ただし、言っては何だがたかが口座開設だ。
融資のお願いをしに来ているわけではない。

それに、僕の会社は、自分で言うのもなんだが、まともな会社だ。
やっている事業も誰が見てもすばらしい(と自分では思い込んでいた)

しかも、開設に問題がありそうならば、もっと窓口で聞かれるはずだ。
それが何も聞かれないということは、問題がないということだ。

僕はひどく楽観的に考えていて、口座が開設されることに全く疑いを持たなかった。
こうして僕はその銀行を後にした。


2週間が経った頃、僕の携帯電話宛に電話があった。

「○○銀行の課長の××と言います」

僕が会ったことのない人。
この前に僕が説明した人とは違う男の人だった。

(ようやく審査が終わったのか。えらい時間がかかったな)

僕は、その時になっても断られるという結果なんて、これっぽちも考えていなかった。

「審査の結果がでました。

残念ながら当銀行としては貴社の口座を開くことはできない、ということになりました」

・・・は!?開けない??

信じられなかった。
届出をしたとき、ほとんど質問らしい質問もされなかった。

それなのに、開けないというのは、何を根拠に判断しているんだ?

少し興奮した状態で、僕は聞き返した。

「どういうことですか?
口座が開けない理由を教えてください。」

「申し訳ありませんが、理由は当銀行の規則でお答えできないことになっています。」


何度理由を聞いても、「規則ですから」の一点張り。

僕は、そんなにすぐにカッとなる方ではないと思う。
ただし、この時は、猛烈に怒りがこみ上げてきた。

これは、もう無理だ。

十数年もの間、この銀行のカードを使い続けていて、愛着もあった。
でも、これでは、もうこの銀行とはやっていけない。

悔しさのあまり、僕は負け惜しみだと分かっているのに、
最後についついこんなことを言ってしまった。

「僕の会社は、数年後には大きく成長させるつもりです。

その時になって、口座を開いてください、お金を借りてください、と
あなたの銀行の方から頼まれても、絶対にやりませんが、それでもいいですか?」

「はい、結構です。」

あっさりとした回答だった。

「わかりました。もういいです」

僕は電話を切った。

悔しかった。
自分の会社、自分のビジネスを完全に否定されたように感じていた。

その夜は、くやしさのあまり、なかなか寝付けなかった。

次の日の朝、一晩経って冷静に随分冷静になっていた。
そして、気づいた。

これが周りから見える現時点での僕の会社の評価なんだ、と。
立ち上げたばかりのベンチャー企業なんて、
口座も作れないくらいの信用しかないんだ、と。

この現実を受け入れた上で、これからどうすべきかを考えなくてはならない。


起業直後の時期、僕はベンチャー企業の起業は、やっぱり簡単ではない、
ということを改めて思い知った。


■僕の気づき
ベンチャー企業の信用力というのは、ものすごく低い。
過去にいた会社の経歴、実績もほとんど関係ない