神社本庁で更に内紛の深刻化―内部告発の部長を懲戒解雇 | ワーカーズの直のブログ

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神社本庁で更に内紛の深刻化―内部告発の部長を懲戒解雇

 2017年9月6日のワーカーズの直のブログで、神社本庁の内紛とその背景について書いておいたが、ここに来て神社本庁の内紛の根深さ・深刻さが公然と暴露された。

 

 それは今まで隠蔽されてきた不動産売却・処分の金銭上の不祥事が週刊誌の報道により明らかになったことだ。これまた山尾議員の不倫追及で名を上げた週刊文春の報道であった。

 9月4日、全国約11万余社の神社を包括する宗教法人・神社本庁で、不動産売却をめぐる不正を指摘していた部長が懲戒解雇された。

 

 最近、神社本庁では青山・中野・百合ヶ丘の職員宿舎が同一の不動産会社に売却されたが、何れも売却当日に転売されていたことが発覚し問題となっていた、と週刊文春(2017年9月21日号)は報道している。

 その記事によると「2015年11月の百合ヶ丘の職員宿舎売却では、神社本庁の内規では競争入札と定められているが、『市場価格が変動するので緊急性がある』との理由で随意契約となり、新宿区の不動産会社に決まった」(神社本庁関係者)とのこと。

 この宿舎は1億8400万円で売却されたが、同じ日に東京都内の別の不動産会社に2億1240万円で転売された。その後、さらに埼玉県内の不動産会社に約3億1千万円で転売された。

 

 かくて転売により短期間で約1億3千万円、7割も価格が上がったのである。

 神社本庁内で職員宿舎が格安で売却された経緯について、部長らが問題を指摘。神社本庁ナンバー2の熱田神宮宮司の下に調査委員会を発足させたが、真相解明には至らず、その宮司は一身上の都合を理由に8月末に辞任した。

 

 まったく不可解なことである。しかしこの問題を指摘した部長は、9月4日付で懲戒解雇され、別の部長も降格処分を受けた。そしてこれを不服とする部長ら2人は、現在訴訟の準備を進めているという。

 この懲戒解雇について神社本庁は、週刊文春編集部に次のように回答した。
 

「職員宿舎の売却は、第三者による調査委員会で適法かつ不当ではなかったと報告されています。それ以外の点については内部のことでお答えすることはできません」とつれない返事をするのみで、真相を明らかにしようとする姿勢は微塵も感じられない。

 先のブログで問題にした神社本庁に直接管理されることになる宇佐神社と神社本庁を離脱することになる富岡八幡宮(東京都江東区)の場合は、現権宮司を宮司に昇格させないとの神社本庁決定に対する反発に原因があったが、内紛はついに金銭問題になったのである。

 従来から神社本庁は、神道政治連盟(神政連)を実動部隊として「日本会議」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などの安倍政権を支持する保守系の団体の活動を支えており、2年前から憲法改正の署名運動を始めたことは記憶に新しい。

 

 そしてこの神社本庁の内紛の激化を神社界が壊れたと形容する人が現れるなど、現実の日本政治への影響も徐々に深刻化しつつあり、おおいに注目されているのである。

 そもそも神社界のいう伝統とは一体何なのであろうか。今ここに伝統のために闘った宮司を紹介したい。

 

 現在、日本で建設中や計画中の原発は、大間原発(電源開発)青森県下北郡大間町と上関原発(中国電力)山口県熊毛郡上関町で二つであり、上関原発は特に全国的にも有名である。

 それは上関原発が1982年に建設計画が表面化して以来、約35年もの間、激しい反対運動が展開されてきたからであり、福島第一原発事故を受けて日本政府は方針を変更せざるをえず、今現在も建設計画が中断されているからである。

 上関町ではこれまでに他の原発誘致と同じく札束攻撃が威力を発揮し、中国電力が地元への工作費、建設準備費等に使った金は既に450億円に達したと噂されている。そして原発建設予定地の四代地区には四代正八幡宮という神社があり、その杜は建設予定地の2割を占めていることが問題となっていた。

 この四代正八幡宮は縄文時代からの鎮守の森を有する由緒ある神社で、八幡宮の眼下の入り江一帯は世界的に珍しい貝類が生息する自然の宝庫でもあった。

 

 つまり中国電力は寒村に原発を押し付け、さらに国は国策として縄文から人々の祈りの地であることを充分承知の上で原発を建設しようとしていたのである。

 1998年から神社の土地の買収計画は進められたが、四代正八幡宮の宮司・林晴彦氏は地域の名士であり、神社の土地の売却に反対姿勢を頑として譲らなかった。

 

 林宮司に対しては中国電力、広島県知事、自民党政治家(山谷えり子等)、マスコミ、弁護士、警察、公安、原子力村のあらゆる権力を繰り出し、林宮司に対してデマ、中傷、尾行、陰謀術数の限りを尽くし、また脅迫を繰り返しており、広島県神社庁に至っては神社本庁の意を汲んで四代正八幡宮の祭祀の妨害にまで乗り出してきたのである。

 これに対して林宮司は、一歩も引くことなく毅然として「法律上の最高権限を持つ神社本庁の代表役員が神社地の売却を承認することにでもなれば、それは自らが制定した法規を自分の手で破壊することであり、それは神社本庁自体の瓦解を意味するだろう。

 

 それは瀬戸内海地域に暮らす多くの人々を途端の苦しみに陥れることであり、人間の生死に関わる問題を一体誰が責任をとるというのだろうか。これが犯罪でないならば、世の中に犯罪というものはない」と神社本庁に反論した。

 

 これこそ真に伝統に生きるということだ。

 そもそも神社本庁憲章第十条には「境内地、社有地、施設、宝物、由緒に関はる物等は、確実に管理し、妄りに処分しないこと」という規定があり、神社の土地は売却できないことになっている。

 それは一木一草に神が宿っているとする古代からの神道の考え方から来るもので、神社の森は鎮守の森、神の棲む森とされ、各神社はそれを守ることが固く義務づけられてきた。

 

 ところが神社本庁は原子力村の一員に身を落とし国の原発政策の支持を表明したばかりか、何と中国電力に神社地を売却するよう四代正八幡宮に命じたのである。

 そればかりでなく追い詰められた神社本庁は、林宮司の「退職届」を受理したとして林宮司は一方的に解任されその代わりに原発容認派の宮司を据えて、新しい宮司が財産処分承認申請書を提出すると2004年8月20日、神社本庁は即座にこれを承認し、ついに神社本庁によって四代正八幡宮の土地は、中電に売却が決定した。

 

 2年後、林元宮司は山口県神社庁を相手どり、偽の「退職願」(文書の偽造)、違法手続があったとして裁判を起こしたが、裁判の最中の2007年3月、林元宮司は不審死したのである。

 その後、裁判は林元宮司の弟に引き継がれ、2009年の一審、翌年の二審で退職願が偽造であることは認められたが、山口県神社庁の偽造の関与、違法手続は否定され、誰が「退職願」の偽造文書を作ったのかは明らかにされることはなかった。

 

 まさに真相隠しではないか。

 ここで現役の宮司である社家56代目の三輪隆裕氏の貴重な証言を引用したい。
 

 三輪宮司は“日本会議は「皇室と国民の強い絆」が「伝統」だと主張しているが”との「週刊金曜日」の質問に対して、こう答えている(『日本会議と神社本庁』からの引用)。

「いや、それは『伝統』ではありません。江戸時代にはごく一部の知識階級を除き、『京都に天皇様がおられる』ということを庶民が知っていたか、はなはだ疑問です。本来神社とは地域の平和と繁栄を祈るためのもので、この日吉神社でいえば、江戸時代は氏神の地域と尾張国の繁栄を神様に祈願していました。

 

 明治になって、日本という統一国家ができたので、その象徴として『天皇』を据えたのです」(『同書』163頁)

 確かに江戸幕府を打ち倒して成立した明治政府は、それまで民間の信仰であった神社神道を天照大神を内宮に祀る伊勢神宮を頂点とする「国家神道」へと組み替えた。

 

 この神話によるヒエラルキーの下に国民を「天皇の赤子」として支配しようと考え、その結果は「世界無比の神国日本」による「八紘一宇」の侵略戦争の肯定・積極的な推進であった。
 

 三輪宮司の批判はさらに神社本庁にも及ぶ。三輪宮司は、国家神道が神道の歴史では極めて特殊であることを「今の神社本庁には理解できない」と断言する。

「戦後、占領軍の『神道指令』で国家神道は解体されました。

 

 その後、神社は生き残るために宗教法人・神社本庁として再出発しますが、当時の神道界のリーダーは、ほとんど明治時代に神主になった人だったため、それ以前の本来の神道ではなく、明治政府が作った神道が『伝統』だと思ってしまった。その感覚が、戦後70年経ってもまだ残っているのです」(『同書』166頁)

 ここで三輪宮司も封印していることなのだが、現在の神社界には、とりわけ伊勢神宮には在日朝鮮人の比率が社会的平均値より高いという事実がある。

 

 これは文明史家の新井信介氏の指摘で、彼らには「明治からの伝統」しか自分の生きる拠り所がないからだ。

 三輪宮司は、改憲について「日本の独自性とか、妙な伝統とかいったものを振りかざして、現代の人類社会が到達した価値を捨ててしまう可能性があるような憲法なら、変えない方がよい。

 

 日本会議の改憲案は世界の共通価値と離れ、時代錯誤の原理主義と権威主義に満ちている」と語る。

 神社本庁は目下、日本会議と連携して改憲運動を活発化させており、今年の年始にも傘下の神社の一部で改憲賛成の署名運動を展開したが、三輪宮司によれば「ほとんどの神社の宮司は、本庁から書類が来ているのでそのようにしているだけ」だとした。

 事実、週刊金曜日の記者が年始に都内神社を取材し、職員に聞き込みをした際には、「神社庁の方で決まったことで……」との答えが複数の神社で帰ってきたのである。

 最近の神社本庁は個別神社の人事に対して強権的な介入を繰り返すなど「傘下神社への締め付け」の事実と今回の金銭トラブルの発生はまさに神社本庁の身から出た錆である。

 これらの不祥事の他にも神社本庁の腐敗・堕落は宮司・権宮司・権禰宜・禰宜に対しての美人局等、神社敷地内外でのホテル経営、駐車場経営、結婚式場等の営業活動、実に目を覆うばかりの惨状であり、個々の具体例は事情通の高山清州ブログにはしっかりと書かれている。

 もはや神社本庁や別表神社が神聖なものだと形容するに憚られる状態である。

 今後、安倍首相が着手するとみられる憲法改悪にはこうした所業がきっかけとなり、多くの神社関係者が日本会議、神社本庁に反旗を翻す現実性は高いであろう。