季語は「花冷え」で晩春。
眞鍋呉夫は青年時に阿川弘之や島尾敏夫らと同人誌を出していたこともある、小説史で言えば第三の新人と呼ばれた小説家たちと同世代。
そこから、吉行淳之介、向島鳩の街、赤線地帯と連想してしまう。
性欲を満たすためでもあるが、それ以上に生きていることのやり場のない寂しさを紛らすために娼婦を買いにいく。
その隠微な心理が「花冷え」の感覚に集約されている。
同じ作者の「花よりもくれなゐうすき乳暈(ちがさ)かな」も似た趣。
紅薄い乳暈が女の薄幸を思わせ、そこに自身の孤独を重ねようとしているような、あるいは埋めてしまおうとしているような感じだ。