6月18日、バドゥ監督が解任されました。
当面、森下コーチが監督代行として指揮を執ることも合わせて発表されています。

ここでは、バドゥ体制に求められていたこととその結果について、自分なりに考えていることをまとめておこうと思います。



大木体制での反省を受けて


京都は昨季まで大木武監督が3年間チームを率い、ショートパスを主体として細かな動きを多く使って崩していくサッカーをしてきました。
しかし、2年連続昇格プレーオフで敗れ、大木監督は退任。

大木体制での反省点としては、
・崩す過程を大事にした一方、FWに求められる役割が多岐に渡り、ストライカーを活かしづらくなったこと
・膠着した試合で状況を読んだプレーができなかったこと
の2つが代表的かな、と考えています。
もちろん大木監督の戦術だけでなく、在籍していた選手の特徴とも関わってくるところです。
特に2番目は、若い選手にとってはしっかり身につけていってもらわないといけないことでもあります。

これを受けて、今季の体制づくりがスタートしたのではないかと思います。
大木体制で作ったものを大事にしながら、縦への速さだったり、臨機応変さを強く意識したりというところですね。



バドゥ監督と森下コーチに求められた役割


そして、バドゥ監督、森下コーチ、荒川コーチが就任しました。

バドゥ監督は「攻撃的に」「サプライズを」「自由」などのフレーズを頻繁に使い、サイドの幅を広く使い、ゴールに素早く向かうサッカーを掲げました。また、選手たちの自主性を重視し、選手間での対話による整理を求めました。
大木体制での反省点を解決するという意味で、一定の線に沿っていたのではないかと思います。

また、昨季からのショートパス主体での崩しを保つといったところで、森下コーチが招聘されたのではないでしょうか。
リスクマネジメントが甘く、磐田では降格の引き金となってしまいましたが、やっていたサッカーはボール保持を重視したものだったように記憶していますし。

つまり、バドゥ監督と森下コーチの良いとこ取りを狙ったのではないかと。
バドゥ監督は具体的な指示をあまり出さない、ということも報じられていましたが、大枠のコンセプトをバドゥ監督が打ち出し、それに添いながら、森下コーチのエッセンスも加え、チームを作っていくというものだったと解釈しています。
(なお、荒川コーチの役割については不勉強なためよく分かりません。森下コーチもですが、まだ若いですし、指導者として経験を積ませる狙いもあったかもしれませんが)

実際、3月に一度練習を見に行った時も、練習の直接的な指示は森下コーチがしており、バドゥ監督は外からそれを見ている様子でした。練習後に監督・コーチ陣が話し合うところもありましたね。
また、ブラジル人のバドゥ監督との橋渡し役も兼ねてか、正岡ジャイルさん(後にコーチ登録)が盛んにゲキを飛ばしていました。



双頭体制の綻び


しかし、結論から言うと、この組み合わせは合わなかったんでしょうね。

試合に関して、バドゥ監督から具体的な指示が出てくることが少ないとはかなり前から言われていました。あまりに自由・自主的といったところを打ち出しすぎた感もあります。
選手たちが戸惑い、特に試合序盤、手探りで入っている印象を受けることも多かったですね。

であれば、コーチ陣からの助言や修正があっても良かったのではとも思うのですが。
前述の通り、練習は森下コーチが見ていたわけですし。
また、試合中に選手からの申し出に沿ってポジションを変えたこともあったように、そういった点でバドゥ監督に柔軟性がなかったとは思えないですし。

それは監督としてどうなの?とも思えますが、これは後述するとして、実質上森下コーチにもかなりの権限はあったはずですから、やはり一定の責任はあるでしょう。6月に入ってからはさらに権限を強めた様子も報道されていましたし。

監督とコーチ間でコミュニケーションに問題を抱えていたのではないでしょうか。
言語が違うが故のものなのか、地位に由来する遠慮なのか、サッカー観の相違なのか。こういったところでこじれちゃったんだろうな、と。
(多分これを修復するために、ジャイルさんがコーチ登録されたのだろうと思います)

これは選手たちにも言えるのではないか。
どれだけサッカーに関して監督に意見をぶつけられたのか。監督とコーチのパワーバランスが変化し、やりづらさはあったかもしれませんが。
とはいえ、どんなサッカーをやるにしても共通する戦う準備ができていないように見えるシーンもあったので、それはプロとして反省すべきです。
また、あまりに受け身になっている選手が多いように思えるのも、今後に向けて心配しているところ。

個人的には、今回の体制が上手くハマってくれれば、特に若い選手にとっては殻を破る良いチャンスになるのではないかなと思っていたのですが・・・。サッカーに向き合う姿勢だったり、とことんプレーについて考えることだったり。
3連勝を契機に、ある程度やることも整理されてきて、安定して上手く回るかな、と期待していたのですが、そうはなりませんでした。。。



バドゥ監督の責任


バドゥ監督の責任については、やはりハッキリとリーダーシップを取らなかったことに尽きるでしょう。
連敗して苦しい時期にも特に手を打たなかったというのは厳しいものがあります。
コーチとのパワーバランスについても、発端は指導方針が選手・コーチと上手くマッチしなかったことにあるでしょうし。そのズレを察知し、修正や確認をするべきポジションなのですから、何とか手を打って欲しかったところ。

また、メンバー選考の柔軟性とバランス感覚の乏しさも混乱に拍車をかけたように思います。

方針の特性上、ある程度固定したメンバーで連携を取っていくのは分かりますが、組み合わせについてどこまで意識していたか。基本的には運動量をベースに評価していたように思いますが、選手間のポジションバランスにはさほど重きを置いていなかったように思えます。

攻撃的な選手を並べたものの、セカンドボールの競り合いに勝てずになかなかボールを保持できないことも多かったですし、ビルドアップの苦手な選手が組み立てなければならないシーンも多かった。
個々を伸ばしていくという意味では、苦手なプレーにもどんどんトライしていかねばならない環境は良いのですが・・・。
このあたりの話になると、今季の目標は何だったのかということになりますね。


ここ5試合で1勝4敗、しかもバランスを崩し、集中も途切れて大敗する試合が続いていたのですから監督解任はやむなしでしょう。
上記の通り、根本的な部分でバドゥ監督の責任も大きいですし。

ただし、コーチ陣の役割などを考えるとそれだけでは済まず、チーム全体として受け止めなければならない部分も多いはず。
これをどう次に活かしていくのか、考えていく必要があるでしょう。


そしてバドゥ監督。
非常に陽気な性格で、愛らしい、まさに「お爺ちゃん」という呼び名のしっくり来る監督さんでした。
一度サンガタウンでお話させていただきましたが、ユーモラスで、親しみやすい方だったのが印象に残っています。
シーズン序盤はモチベーターとして大きく期待したところもありましたし。リードされてもへこたれないチームになってきたな、とか。連敗中にそれが出なかったのが残念でなりません。
高齢でありながら日本に来て指揮を取るという決意の裏にはいろいろな悩みもあったでしょうし。
監督としてそれはどうか、と思うところもありますが、できれば、双頭体制でも何でもいいから、多くの勝利をバドゥさんと共にしたかった。
そう思わせてくれる指導者というのもなかなかいないですし、その分も含め、残念でなりません。


ひとまずお疲れ様でした、そして、京都に来てくれてありがとう、バドゥさん。