ニール・マーシャル「ドゥームズデイ(2008)」 | 木島亭年代記

木島亭年代記

東北在住。
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これはなかなかの珍作であった。ある意味思わぬ掘り出し物といった感じである。なにしろとにもかくにもグロい。ウィルス感染で死のうが、銃で撃たれようが、刃物で切り裂かれようが、車に踏みつぶされようが、どいつもこいつも死に様が汚い。とにかく全編にわたって血み泥描写のオンパレード。首は飛ぶ、腕も飛ぶ、人は食われる、ついでに動物も悲惨な目に遭う。やりたい放題とはこのことだ。好きな人には非常にたまらない映画だが、嫌いな人には嫌がらせ以外の何物でもない。ちなみに弓で射られて死に様が一番きれいだった(逆に言うと一番地味だった)。


とはいえ、手放しで絶賛するには話がめちゃくちゃである。物語はウィルス感染が広がったイギリスが舞台である。政府は感染地区を壁で覆い、そこの住人を見捨てることにする。最近のゾンビ映画でよくあるやつだ。しばらくほうっておかれたその地区だが、あるとき地区の外で感染者が発見され、急遽その見捨てられた土地が重要になる。というのも実は生存者がいたと確認されていて、もしかしたらワクチンが出来上がっているのかもしれないkらだ。政府は特殊部隊をその見捨てられた土地に送り込むことにし、そのリーダーがローナ・ミトラ演じるエデンだ。このエデンがなかなかイカす。引き締まった体とちょっとエロい唇。失われた片目はちょっとしたガジェットになっている。タフで、ク-ルなキャラクターも良い味を出している。それに彼女はその見捨てられた土地の出身であった。彼女は封鎖前に何とか逃げ出すことに成功したのだが、母親はその土地に残されてしまった。その後母親がどうなったかは分らないが誰かに食われてしまったに違いない(←根拠はない)。


さて誰もいないと思われていた土地に乗り込んだメンバーだったが、そこには原始人みたいな野蛮な連中がたくさん生息していた。襲いかかってくる連中。ライフルで応酬する部隊。このときのアクションシーンが完全にゲーム的でチョット乗れなかった。突き当たりの奥の部屋の両脇から次々とやつらが出てくるのをライフルで撃ち殺していくのだが、もう完全に射撃ゲーム。画面も揺れるし、微妙に暗いうえ、編集もうるさい感じ。要するに今風(←雑なまとめ方!)。さてとにかく不意打ちを食らった面々は、つかまってしまう(メンバー中二人は逃げ切る)。最初、きっと言葉も解さない野蛮な連中なんだろうなと思っていたら普通に喋りだしたので、拍子抜けした。「アイアムレジェンド」的なことではないんだね。まあそれでそいつらのボスがソルっていうモヒカン野郎なんだけど、こいつがまあハイテンション。「おれは悪いぜ」っていうオーラぷんぷんで、かなり古臭い悪役像に苦笑。とにかく絶叫しまくる。「北斗の拳」なら出てきて2コマ目で「ひでぶ~」と叫んで死ぬタイプだ。こいつの彼女は顔面に入れ墨を施した美人なんだろうけど、全然萌えない感じ。こいつらがこの生き残り軍団のリーダーである。こいつらは捕まえた特殊部隊の奴をロックショーみたいなノリで、公開バーベーキューにする。このショーがホントにダサくて大笑い。センスが古すぎる。それからつかまったエデンはもちろんバーベキューにされる前に脱出する。その時立ちはだかったソルの彼女の首をぶった切る。ついでにソルの妹連れで逃げる。ソルの妹には恋人っぽい男がいて、そいつの手助けで、エデンたちは目的の人物――ウィルスの研究をしていた博士のもとへ案内を受ける。ちなみにその博士はソルの妹父親・・・っていうかソルの親父である。演じるのは「時計仕掛けのオレンジ」のアレックス。こいつはこいつで十字軍時代の様な時代錯誤なコスプレコミューンのリーダーとして君臨している。まあやっぱあんなバカな息子を持つだけあって、こいつも王様気取りの痛々しい人物であり、グラディエーター風の戦闘ショーを催して喜んでいるのだ。無論それにエデンは参加させられ、鎧を着たおっさんと戦うことになる。フツーこういうシーンならその敵のおっさんは、敵に刀の一本でも差し出して、「騎士道とは・・・」とかいい、「自分がなぜ戦うのか?それは自分の強さの限界を知りたいからだ」とかなんとか言いだす暑苦しい“漢の中の漢”なんだろうが・・・なんとこいつは完全重装備で自分だけ武器を持ち、丸腰の女に何の躊躇もなく襲いかかるシャレにならないヘタレ野郎だった!そんなんで勝って嬉しいのか、貴様!と思った。まあ結局負けるんだけど。そえにしてもアレックスとソルは親子なんだけどふたりが対面するシーンはない。そこは親子間の葛藤をうまくつかって、駄シール・ハメット的(或いは『用心棒』的、『座頭市』的)な展開でうまく両者をぶつけさせて主人公が漁夫の利をえるっていうのが一番まっとうな話の流れだと思ったのだが、さすがゲーム感覚映画、二つの舞台は全く絡まない。主人公がクリアすべき、ゲームのステージみたいなものなのだ。


さて何とか逃げ出したエデンたちだったが、またもやソルたちが追いかけてきてカーチェイスになる。もう完全マッドマックス的な絵面。なにしろモヒカンのソルが車に飛び乗ってくる。そしてカーチェイスはなかなか見応えがあるのだが、肝心のボスキャラたるソルは無理やり車の窓から中に入ってきて、その狭い空間でエデンたちと殴り合うというもう“絵”として見づらい地味なバトルに終始していて、何やってんだかよく分らないのである。さすがルックスが雑魚キャラだけのことはある。


とにもかくにも逃げ切ったエデンたちであった。エデンは生き残った唯一のメンバーにソルの妹を託してその場に残ることにする。そして、ソルの首を持って、ソルの集落へやっていき、新しい王になるのだった(多分)。



観ていて気になったことをいくつか。


1)あんなに牛がいるなら人食わないで牛食えば(←否、きっと人間の方が美味いのだろう)


2)ってかウサギもいるんでしょ(←ウサギを無意味に殺してたな・・・別に設備の説明であんなゴア描写いらないと思うが、多分やりたかったんだろうね)


3)ガソリンとかどうしているんだろうね


4)いやー衛星写真の人影が映って大騒ぎしていたけど、ソルたちは普通に暴れまくっていただろうからもっとたくさん映っていてもおかしくはないと思うのだけれども


5)それにしてもあの山奥の連中はどこから武器を持ってきたのか。自作なのかな。鉄とかも掘ったのかね


6)ソルの妹のボーイフレンドは何故あんなに無駄にすぐ死んだのか・・・(何故ならエデンの部下と彼女を故意に落としたかったからに違いないが、そんな必要性が全く分からない・・・)



etc



まあそうは言っても全編やりたい放題のハイテンションさと、無駄に過激なゴア描写に小生満足満足。「トランスポーター3」とか「パニッシャー」とかマーク・ウォルバーグの映画とかより全然面白い。面白いのは確かといえる映画だ。