BANDIT #3 | すかいうぉーかー

すかいうぉーかー

CRAZY=SPELL−BOUND








ゆっくりと、登り始める






赤い路面


視界の隅で、センターラインのゴムポールが次々に飛び去って行く中を

速度にも回転数にも余裕を持たせながら、じっくりと編み上げて行く





ミラーの中
Sは、何を考えているだろうか


それでも、それなりの速度だ


初めての道できちんと後を着いてくる



 








あの頃







俺は、かなり怖かった



スピードでは無く



速く無い自分が、格好悪かったり 周りの迷惑になっていたりしないだろうかと

出来ない事
出来ない自分に愕然とし

焦ってアクセルを開けてはオーバーランをし


心に全く余裕のない状態で、迫り来るカーブの口腔に心臓を縮めながら






正しい選択も
正しい選択肢すらも、持ち合わせが無いままで







幾度もコケて
バイクも自分も壊しながら









バイクに近道なんて無い





今の俺を見て、Sがあーだこーだ考えても
実際は意味のない話だ





だが、続けるならば 意味がある



きっといつか、何枚かの歯車になって 噛み合う日が来る







「自分も、あんな風に綺麗に走れるようになれるでしょうか」












俺の事を言っているのだと気が付くのに、かなりの時間を要した






だが"そうなんだろうな" と






何年も走り続けて


でも、道は同じまま
そこにあり続けるから




分かるのだ

昔、あんなに怖かったカーブの連なりが
こんなにも沢山の選択肢に溢れ

更に高い次元が存在するのを
今の俺は知っている




あの頃の、あの人のように















そのまま、奥多摩湖の手前まで一気に降り
駐車場でUターン



「とりあえず、戻って
1往復って形で行くから」


S「戻るだけなんですよね? 大丈夫ですから、先に行って貰ってイイですすよ」





「いや、別にそんな事しないよ。速いヤツでもいれば別だけどな(笑)」










登り始める
帰りは、緩やかな中速コーナーを登って行く形になる

より、余裕のある感じで走れる筈だ





出始めた車を、ちょっとずつ抜き出す


ミラーにいるのを確認しながら









「ん?」






車2台

その間に居たDRZ400




一気に抜いて

コーナーを2つ3つ










ミラーの中に
DRZがいた








「ちょっと、遊ばせてもらうか」



奥多摩周遊みたいな道は、モタード車はマジで速い
小僧区間に入ってしまえば、SSよりも走りやすいのは明らかだ


それが分かっているから







空気が一気に流れ出す

一つ低いギア
排気音に緊張感が混ざり始める




コーナーは向こうの方が有利
遠慮なく直線で加速させて貰う






「・・・居るねぇ」


コーナー出口の加速態勢に入った空白で、ミラーをチラ見すれば
すぐ後ろに



基本的には直線で離して、突っ込みで詰められている筈だ

立ち上がりの開け始めと、出足も




Sからあまり離れても


だが、当然チギるつもりで




直線は勿論、段々突っ込みにキナ臭い香りが混じり始め
ラインは狭まり、バンクが深くなって行く


峠で他車と
こうも、イイ感じで絡んだのは何年ぶりだろうか





まだ、居る

つつかれてはいないが、ミラーから消えない






イイね


でも、今日は

















「はぁっ!!??」










ストレートの先
左側の駐車場から



けたたましいスキール音












"4輪?"





"インテグラ?"







慌てて飛び出して来た?






明らかに、俺の姿か音を確認して















「ブンッ!!」




白いボディが、有り得ない速度でコーナーに消える





赤い『TIPE-R』の文字が、網膜に焼き付く

























なんてタイミングで、出て来んだよ!!















お膳立てが、揃い過ぎていた



















俺は数年ぶりに
フルフェイスの中で物凄い笑みを浮かべながら







脳のヒューズを一気に飛ばした




(続





 











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