シズコさん  佐野洋子 | 感想メモ

感想メモ

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シズコさん/佐野 洋子

佐野洋子 新潮社 2008

 著者の自伝的小説。ノンフィクションなのか、フィクションなのか、書いてなかったけど、限りなくノンフィクションに近いのかなという印象。


 著者は母親と折り合いが悪い。というか、母親が心底嫌いで、自立してからはほとんど母親と生活を共にしなかった。が、嫁に家を追い出された母を引き取り、最後には老人ホームに入れてしまう。その老人ホームはものすごく高額で、老人に対する対応も悪くはないところなのだけれど、お金で母を捨てたということを負い目に思っている。


 最初は時代が行ったり来たりで読みにくく、どうしようかと思ったけれど、徐々に世界に染まっていくと、この母の存在がすごいものに思える。戦前・戦中・戦後をたくましく生き抜いた母。7人子をもうけたけれど、3人の男の子を亡くしてしまう。それでも、残りの子供を育てる。途中、夫が死亡。女手ひとつで子供たちを全員大学に入れる。


 著者は母に幼少時代から優しくされたことがなかった。そのことから、母を嫌いだと思うようになった。でも、思い出をたどると、たぶん、母は娘に対して厳しく接し、優しくはしてくれなかったけれど、著者を一番頼りにしてたんじゃないかなと思う。


 私も長女だから、なんとなく母との関係について、わかるような部分もある。母親は長女にはいろいろな物を求めてしまうものなのかも…。


 老人ホームにも滅多に行けず、母に触ることも嫌だった著者が、呆けてしまった母と和解をするシーンは涙が出そうになった。


 家族って難しい。家族だからこそ、自分の悪いところも普通に見せる。世間に見せているような自分を家族に出していれば、円満に行くのかもしれないが、大体の人はそうじゃないだろう。だからこそ生まれる確執や葛藤…。


 母と娘の関係について、そして、老いていく母親と自分のことを考えさせる1冊だった。