『夜想』  貫井徳郎 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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夜想 (文春文庫)/貫井 徳郎
¥750
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***この本は2010年1月に読了しました***
事故で妻と娘をなくし、絶望の中を惰性でただ生きる雪籐。だが、美少女・天美遙と出会ったことで、雪籐の止まっていた時計がまた動き始める。やがて、遙の持つ特殊な力は、傷ついた人々に安らぎを与え始めるが…。あの傑作『慟哭』のテーマ「新興宗教」に再び著者が挑む。魂の絶望と救いを描いた、渾身の巨篇。
(Bookデータベースより)



不運な交通事故で妻子をなくした雪籐。
事故の悲しみから抜け出せず、自己嫌悪にも陥り、生きる気力を失い日々を惰性で生きていた。
しかし雪籐はひょんなことから天美遥と出会う。遥は、誰かの物に触れると、その物に籠もった想いを読み取る特殊な能力を持っていた。
初対面で自分のために涙を流してくれた遥に、誰にも共有してもらえない悲しみを共有してもらえたと思った雪籐は、遥のためにできることを生きがいとし再び活力を取り戻すが・・・。




力と呼ばれるもの。それは例えば権力であったり、能力であったり、お金だったりするかもしれない。
そういう力を持つ人のところには、いやがおうにも自然と人が集まるのだろう。
たとえそれが純粋な志を持った人だったとしても、逆に邪な気持ちを持った人達だったとしても。


そして人が多く集まれば、組織化をしなければ収拾がつかない状況に陥ってしまう。
最初はボランティアの人達だけだった集合体が、段階を経て組織化し、傍から見れば「新興宗教」のような団体として設立されていく。そのあたりの描写は秀逸。
今回のように宗教団体というような組織でなくとも、普通の会社の設立でも十分起こり得るような内輪での摩擦、人間関係の縺れ、男女の恋愛関係等の描写がとてもうまかった。



ただ、心情が事細かに描かれている分、あぁこういうところがミスリードかなぁ、と勘繰ってしまい、しかもその通りだったのが、ちと残念。
あまり「ミステリーちっく」なプロットにしすぎない方が、逆に良かったんじゃないかと思う。




人間、誰しも少なからず弱い部分や暗い部分を持っていることだろう。
そして不安なときや、迷ったとき、孤独を感じたとき、愛する人を失ったとき、人生に絶望したとき、そんなときに何かに、そして誰かに縋りたくなることもあるだろう。
新興宗教と言う言葉だけで、嫌悪したくなる先入観を持ってしまうが、実情は違ったりもするものもあるのかな、なんて。


生きていくうえでの「支え」となるものは、やっぱり人それぞれ。


人を救うことで自分も救われる。
その相手が愛する人であるならば、きっとそれは、幸せなことなはずだ。



★★★



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