『少女七竈と七人の可愛そうな大人』  桜庭一樹 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)/桜庭 一樹
¥540
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***この本は2009年8月に読了しました***

「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
(Bookデータベースより)



わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。



永遠、なんてことは何事においてもなく、まして人の人生においてはあるはずもない。
だけど永遠なんて言葉を使わずとも、このままの生活がいつまでもずっと続いていくんだ、と何の根拠もなく信じていた青春時代。
将来への不安があっても、それはきっと遠い未来の話で、今の自分には無関係だと感じていた頃。
だけど、そういう儚い日々は、いつだって自分が思いもしないうちにいつの間にか幕がおろされている。
止まることのない時の流れ。
ずっと変わることのないと思い込んでいた世界の緩やかな崩壊。
そして、時の移ろいとともに変わるは、人の心。


自分の置かれた境遇を恨み、先天性なシガラミに翻弄される川村七竈と幼馴染の桂雪風。
少女と少年のその美しさは、そしてある理由からくるその存在感の大きさは、限られた狭く苦しい空間の中では生きていけないほど美しさと大きさを増していく。



「七竈と言う木は、雪国の木で、赤い実にずっしりと雪が降り積もって赤と白でとても美しい。
そのまま朽ちる運命だけど、とにかくただずっと美しい。」


吹けば消えてしまいそうな美少女と美少年の、ほんの一瞬の美しき日々を鮮やかに切り取り、旭川の真っ白な雪の光景と七回焼いてもまだ焼け残ると言う真っ赤な七竈の実が鮮やかなコントラストで目の前に浮かぶような、美しくも儚く脆い物語。



時の流れは、なにより大事なはずのものをすべて、容赦なく墓標にしてしまう。



呪縛に囚われ続けていた七竈が選んだ人生の出発とはいかなるものか。

彼女が宣言した変わることのない純情とは。




さようなら、永遠に失われし美しき少女少年よ。





★★★★



著者の作品はこれで、3作目でした。
最初に読了したのが、「赤朽葉家の伝説」、2作目は「私の男」。
「赤朽葉家の伝説」はかなり面白く読めて、「私の男」はまったくと言っていいほど自分には合いませんでした。
ちなみに、「赤朽葉家の伝説」を読み終わって、しばらくしてから始めて著者が女性の方だと知りました。
なぜか、男性と言う意識で「赤朽葉家の伝説」を読み終えちゃったんですよね。
「赤朽葉家の伝説」はいつか再読してからレビュー書きたいと思います。でも長いんだよなぁ・・・。
それにしても本書は冬に読めばよかった。。。


その他の桜庭一樹作品
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』  ◇『赤×ピンク』



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